第74話:氷哭竜 白霜峡決戦
蒼白に光る深層管から噴き上がる冷気が、白霜峡全体をしんと沈めた。
氷哭竜は、眠りから覚めたばかりとは思えないほど滑らかに翼を広げ、赤い眼を光らせる。
地面を踏みしめた瞬間、峡谷全体が“鳴った”。
ゴォォォォォン――!!
アランは思わず歯を食いしばった。
(……黒殻ダンジョンの時より……ずっと重い圧だ……。
でも――負けない)
リリアが震える声で叫ぶ。
「アラン、前に出過ぎないで! あれ、帝都級結界でも止まらないわよ!」
「わかってる。けど――今は引けない」
魔装槍が、アランの手の中で淡い金光を放ち続ける。
さっき氷刃核を砕いた時と同じ“共鳴の振動”が感じられる。
リリアが気づく。
「……その槍……まだ何か封じてるわね……?」
アランは短く頷いた。
「うん。だけど今は――使える力を全部出す」
氷哭竜が咆哮すると同時に、
鋭い氷柱が空間そのものから“生成”された。
ザシャァッ!!
「リリア――《風壁》!!」
「任せて、《テンペスト・フィールド》!」
強い風が巻き起こり、氷柱の進路を逸らす。
しかし氷哭竜は構わず次の一手を繰り出す。
竜の喉奥が淡く光り――
「っ……まずい、ブレス……!」
リリアが叫ぶ。
「アラン!! 下がって――!」
だがアランは逆に前へ踏み込んだ。
「引いたら……間違いなく街ごと凍らされるッ!」
槍を前に出し、光を集中させる。
「《ルーメン》!!」
眩い光が一点に収束し、
槍先が“星のように”輝く。
氷哭竜が冷気の奔流を吐き出した。
蒼白の破壊波がアランへ迫る。
その瞬間――。
「――《ホーリードライブ》!!」
光がアランを包んだ。
冷気と光が激しくぶつかり合い、
峡谷の中央で巨大な白金の渦が生まれる。
(押し返せ……押し返せ……!!)
しかし氷哭竜の力は凄まじかった。
ブレスはアランの光を削り取り、
氷が腕を凍らせようとせり上がってくる。
リリアが叫ぶ。
「アラン!! もう無理よ、戻って――!!」
アランは――頭を振った。
「違うっ……これ……押し返すんじゃない……!」
(光は――ぶつけるんじゃなくて、“響かせる”。)
アランは姿勢を低くし、槍を深く構える。
「――《ルミナ・リゾナンス》!!」
その瞬間、
光と風が同時に震え、峡谷全体が金色に揺らいだ。
リリアが目を見開く。
「リゾナンス……共鳴でブレスを……!」
冷気の流れが乱れ、竜のブレスが一瞬だけ途切れた。
その一瞬――。
アランは体を投げ出すように踏み込んだ。
(今だ――!!)
槍の光が槍身を伝い、
一瞬で白金の閃光へと形を変える。
アランは叫んだ。
「《ホーリーランス》――!!」
放たれた光槍は、
氷哭竜の胴体をかすめながら、
反応しきれない冷気鱗を焼き切った。
竜が轟音のように咆哮する。
グォォオオオオオオオアアアッッッ!!
リリアが後退しながら叫ぶ。
「効いてる!!
アランの光は、氷哭竜に相性がいい!!」
アランは槍を握り直し、息を荒げながらも微笑んだ。
「……当たり前だ。
俺の光は――“凍りついた世界”を照らすためにある!」
氷哭竜が翼を広げ、
白霜峡全体へ“次の攻撃”を準備し始める。
その動きは――
ダンジョン生成の“最終段階”と酷似していた。
リリアが蒼白になる。
「アラン……やばい……!!
あれ、この峡谷全体を“凍結結界”に変える気よ!!」
アランは槍を構え、足を前に出す。
視線は巨大な氷哭竜の眼を見据え――。
「じゃあ……止めるしかないな。」
白霜峡決戦――第2ラウンドが始まる。




