表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/113

第69話:白霜峡 凍てつくダンジョンの兆し

帝都北方・《白霜峡はくそうきょう》。


山脈を裂くように伸びた巨大な峡谷は、薄い霧ではなく――白い氷煙に満ちていた。


一歩踏み出すだけで、靴底が凍りつく。


「……寒っ……!さっきまで夏だったよね、これ。」


リリアが肩を震わせる。


アランは息を吐き、白い霧となって散るのを見つめた。


「魔脈の温度が……完全に“停止”してる。」


隣で同行隊長の研究官が頷く。


「ここは元々ただの峡谷だった。しかし三日前――

 突然、地脈が凍結し始めた。」


峡谷の中央には巨大な裂け目が走り、内部から淡い青白い光が脈打っている。


その光を見た瞬間、アランは確信した。


(黒殻ダンジョンとは……“違う”。)


黒殻は“暴走と崩壊”の波動だった。


だがここは――


「……静止。動きが止められてる。」


リリアが眉をひそめる。


「まるで……時間が凍ってるみたい。」


隊長が資料を開いた。


「この峡谷の中心――地脈の裂け目。

 そこで“ダンジョン化の前兆”が観測されている。」


アランは息を呑んだ。


「前兆……ってことは、まだ完全には……?」


「そうだ。黒殻ダンジョンとは違い、ここは生成段階にある。

 だからこそ観測する価値がある。」


リリアが小声で呟く。


「もしダンジョンになったら……?」


隊長は静かに答えた。


「帝都北側の街区が丸ごと凍結する可能性がある。」


空気が一瞬で凍りついた。


峡谷の奥――。


青白い霧が揺らぎ、何かが“歩く”音が響いた。


ザ……ザ……ザ……


「……聞こえた?」


リリアが杖を構える。


アランは腰の組立式槍を握り、光を纏わせた。


「《ルミナエッジ》――」


刃先が淡く光る。


その瞬間――


霧の向こうから、四本足の影が現れた。


黒殻ダンジョンで見た“黒殻獣”とは違う。


体表は氷の殻に覆われ、動きはぎこちない。


だが――その目だけは、赤く濁っていた。


リリアが息を呑む。


「……なに、あれ……氷の、獣?」


隊長が顔色を失う。


「違う……あれは本来、この峡谷に生息していた魔獣《氷牙狼ひょうがろう》だ。

 だが……凍結波に侵されて“変質”している……!」


氷の狼は、ゆっくりと口を開いた。


カラ……カラ……と砕ける音とともに、


冷気の刃が放たれる――!


「来るッ!!」


アランは槍を構え、光を集中させた。


「《ルーメン》」


閃光が氷刃を弾く。


リリアが続けて詠唱する。


「《テンペスト・フィールド》!」


風の渦が冷気を押し返す。


だが狼は止まらない。


ギギギ……と氷を軋ませながら――


背後の裂け目に近づいていく。


隊長が叫んだ。


「まずい!あれが裂け目に落ちれば――

 地脈が“核化”する!!」


アランは決断した。


「止める!」


槍を握り直し、地を蹴る。


凍った大地が割れ、白い氷煙が舞い上がる。


(ここで止めなきゃ……ダンジョンが“生まれる”!)


氷牙狼が振り返る。


赤い眼が、アランを射抜いた。


リリアの叫びが響く。


「アラン――!!」


そして――


凍てつく峡谷で、最初の交戦が始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ