第68話:禁じられた記録
帝国研究塔・会議室。
厚い扉が閉じられると同時に、空気が重く沈んだ。
長い楕円卓の中央に、欠片の魔晶映像が投影されている。
黒い霧。六つの眼。崩れゆく街。
マリエッタが眉をひそめた。
「……これ、本当に“記録”だと言うの?」
セレスティアが頷く。
「ええ。欠片内部に刻まれた“封印前の世界”。
黒殻ダンジョンが生まれた瞬間の記憶よ。」
ダリオが冷静に付け加える。
「つまり――ダンジョンは自然発生ではなく、
“外部干渉”による生成物。」
リリアが拳を握った。
「外部……じゃあ、誰がそんなことを……?」
沈黙が落ちる。
帝国研究塔・会議室。
厚い扉が閉じられると同時に、空気が重く沈んだ。
長い楕円卓の中央に、欠片の魔晶映像が投影されている。
黒い霧。六つの眼。崩れゆく街。
マリエッタが眉をひそめた。
「……これ、本当に“記録”だと言うの?」
セレスティアが頷く。
「ええ。欠片内部に刻まれた“封印前の世界”。
黒殻ダンジョンが生まれた瞬間の記憶よ。」
ダリオが冷静に付け加える。
「つまり――ダンジョンは自然発生ではなく、
“外部干渉”による生成物。」
リリアが拳を握った。
「外部……じゃあ、誰がそんなことを……?」
沈黙が落ちる。
セレスティアは映像を止め、深く息をついた。
ダリオが資料を机に置く。
「帝国内で、同様の魔脈異常が計六か所確認されている。
黒殻ダンジョンはその“ひとつ”に過ぎない。」
アランが小さく息を吸った。
「まだ五つ残ってる。」
マリエッタが腕を組み、低い声で言う。
「放置すれば、連鎖する可能性が高い。
帝国はこれを“局地災害”として隠蔽しているけれど――」
セレスティアが彼女の言葉を遮った。
「今は推測で動くべきじゃない。
“疑う相手”を決めつける段階でもないわ。」
アランはこくりと頷く。
「だから……次の異変点に向かうんですね。」
セレスティアが資料を指差す。
「次の現場――
帝都北方《白霜峡》。
魔脈の流れが“逆転”し、局所的な冷却壊層が発生している。」
リリアが目を細める。
「黒殻ダンジョンとは性質が違う……?」
「ええ。だからこそ重要よ。」
セレスティアはアランを見つめた。
「アラン・ルクレディア。
あなたには“現地観測班”として参加してもらう。」
「……分かりました。」
「情報を集める――それが今できる、最善よ。」
マリエッタが小さく笑う。
「“証拠”は現場に落ちているものよ。」
アランは拳を握った。
(六つの異変……黒殻ダンジョンだけじゃ終わらない。)
リリアが横で微笑んだ。
「行こう。二つ目の現場へ。」
会議室の扉が開く。
冷たい風が差し込み、魔晶映像の光だけが静かに揺れていた。
――帝国に漂う影は深まる。
だが、真実に触れる旅はまだ始まったばかり。




