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第61話:目覚めの声 地脈核の深層

帝都地下・魔脈核調整室マギコア・ノード


中心にそびえる巨大魔脈炉は、青白い光の柱を天井へと押し上げ、

その輪郭がかすかに黒い揺らぎを帯びていた。


リリアが震える手で計測魔具を操作する。


「脈動値が……上昇し続けてる!

 これ、制御陣だけじゃ止められないわ!」


「でも、暴走の波形じゃないんだ。」

アランは炉に一歩近づき、光の震えに耳を澄ませる。


(灰哭副層の“欠片”と同じ……

 あの時と同じ“律の気配”。)


アランの目に、魔脈炉の奥――

見えないはずの“深層”が透けて見えた。


リリアが息を呑む。


「アラン……何見てるの?」


「地下深く……もっと下。

 帝都の魔脈そのものの奥で、光が脈動してる。」


そのときだった。


カン……と金属を打つような澄んだ響きが、地の底から伝わる。


魔脈炉の光が、一瞬だけ金色に染まった。


「なっ……!?」

リリアが後ずさる。


アランは逆に、前へ踏み出した。


胸の奥が熱い。

心臓の鼓動が魔脈炉のリズムと重なる。


(違う……これは“暴走”じゃない。

 呼ばれてる……!)


壁面の符文が震え、青白い光がアランの足元に集まる。


次の瞬間、魔脈炉内部から――


――《汝、光ノ子。応答セヨ。》


澄みきった、しかしどこか枯れた声が響き渡った。


リリアは目を見開く。


「アラン!? 今の……聞こえた?」


「……ああ。

 声じゃない、直接、頭に響いた。」


アランの周囲に、光の粒が舞う。


――《封ゼラレシ理、揺ラグ。

   帝都ノ流レ、歪ミニ満チル。》


リリアは恐る恐る近づく。


「アラン……“理”って、灰哭副層のあれ?」


「多分……同じ存在だ。」


光粒はアランの肩、腕、胸へと静かに吸い込まれていく。


――《欠片ハ目覚メ、流レヲ求ム。

   汝ノ光ニ、応答スル。》


アランは拳を握った。


「……どうすればいい?」

 


――《問ウハ汝。選ブハ汝。

   導カズ、縛ラズ、唯――“整エ”ヨ。》


(整える……?)


アランは炉の脈動に手をかざす。


その瞬間、視界が一気に白く染まった。


――白い空間。


自分の足元も、天井も、壁もない。

ただ、光だけが漂う世界。


アランは息を呑んだ。


(ここ……まさか、魔脈核の深層意識……?)


遠くで、誰かの影が揺れた。


細い線のような輪郭。

人のようで、しかし形を定めない。


――《汝、来タカ。光ノ子。》


「……君は誰だ? “理”なのか?」


影はゆっくりと揺れ、答える。


――《我ハ律。

   理ヲ流ス者。

   魔脈、地脈、生命、光……全テハ流レ。》


アランは喉を鳴らす。


「じゃあ、帝都の揺れも……灰哭副層の暴走も……」


――《欠片ノ覚醒。

   長キ停滞ヨリ解放サレツツアル。》


「停滞……?」


――《封印ハ古ク、流レハ縛ラレ過ギタ。

   停滞ハ歪ミ、歪ミハ破滅ヲ呼ブ。》


アランの胸に、鋭い予感が走る。


「帝都の魔脈が……崩壊する?」


――《否。

   汝ガ整エバ、流レハ戻ル。

   整エズバ、静寂ニ沈ム。》


「静寂……って、まさか――」


――《生キル者ノ息吹ナキ、灰ノ都。》


灰哭副層の光景が脳裏に蘇る。


アランは歯を食いしばった。


「……同じ悲劇を、繰り返させない。」


影がかすかに揺れた。


――《汝ノ光ハ、道標。

   流レヲ縛ラズ、流レヲ壊サズ。

   “調和”ノ灯。》


「調和魔法……?」


――《名ハ如何様ニモ。

   汝ガ紡グ、第三ノ光。》


光がアランの胸へ集まり、温かな熱を伴って脈動し始める。


眩い閃光。


次の瞬間――帝都地下へ戻っていた。


リリアがアランの肩を掴んでいた。


「アラン! 大丈夫!?

 魔脈が一瞬……金色に染まったのよ!」


アランは深く息をつき、手をゆっくり伸ばす。


「リリア……

 俺、新しい魔法を“貰った”気がする。」


「えっ……!」


胸の中心に灯った新しい光。


名はまだ定まらない。

だがわかる――


これは“破壊”でも“封印”でもない。


流れを整える第三の光。


アランは静かに呟いた。


「――“調律光ハーモニア・ルーメン”。

 そんな感じの……新しい光だ。」


魔脈炉は、今は静かに青白く輝いている。


だが、リリアは息を呑んだまま呟いた。


「アラン……あなた、本当に何者なの?」


アランは微笑む。


「俺は……ただの光魔法の落ちこぼれ、だよ。」


そう言いながらも――

胸に宿った金色の光は、確かに語っていた。


 “汝は選ぶ者。

  流れを整え、道を開く者。”


帝都の地下で目覚めた“律”の気配は、

まだその全貌を現していない。


だが、確かな一歩が刻まれた。


アランは光導士への道を――

いや、それ以上の何かへ向けて歩き始めていた。


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