表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/113

第59話:白銀の都市 帝都ルメニア

帝都ルメニア・中央区――

「白銀の都」と呼ばれるその中心地に、アランとリリアは並んで立っていた。


目の前には、高くそびえる塔群アストラ・スパイア

塔から伸びる魔力導管が空中を走り、青白い光が脈のように流れている。


「うわ……これが帝都の中心……」

アランは思わず声を漏らした。


リリアが得意げに肩をすくめる。


「そうよ。帝国の魔力は全部ここを通ってるの。

 うちの家も、この塔の維持管理に関わってるわ。」


「へえ……やっぱりすごいな、風系貴族って。」


「なによその感想。まあ否定はしないけど。」


街を歩くたび、頭上では魔導街灯がきらめき、空中には浮遊馬車マギリフトが滑るように行き交う。

帝国の魔導技術が凝縮された光景だった。


二人は評定庁の案内で、観測塔の外縁へ向かった。


魔力導管の基部で、技術官たちが忙しそうに魔力値の調整をしている。


「帝都の魔力、ずいぶん揺れてるわね。」

リリアが計測精霊盤を覗き込む。


「灰哭の反応……まだ続いてるのかな?」


「ありえるわ。地脈は全部つながってるもの。

 どこか一つが乱れたら、他の場所も揺らぐ。」


アランは足元へ視線を落とす。

帝都の石畳の下にも、確かに“脈”が流れていた。


「……だから俺たちが呼ばれたんだ。」


「そういうこと。」


リリアの横顔は、どこか頼もしかった。


観測塔の受付を過ぎると、セレスティア教官が待っていた。


「二人とも、よく来ました。

 ――これから帝国魔導士団による正式な“光導士候補生認定式”を行います。」


アランは思わず背筋を正した。


「認定式……なんて、俺……」


「緊張するなら、もっと堂々としなさい。」

リリアが肘で軽くつつく。


セレスティアは微笑む。


「アラン。あなたの光が認められたのは偶然ではありません。

 自信を持って受けなさい。」


「……はい。」


式典の前室で、アランは白銀の衣装に袖を通した。

胸元には新しく刻まれた紋章――

《光導士候補生》の証が輝いている。


リリアが隣で手を腰に当てて言う。


「似合ってるじゃない。ちょっと偉そうになったわ。」


「偉そうって……。」


「褒めてるのよ。」


その言葉に、アランは少し照れながら笑った。


「リリアの方は? 風雷課程の代表官服、すごく似合ってる。」


「ふ、ふんっ……まあ、ありがとう。」


わずかに頬を赤らめたリリアを見て、アランもほっと息をついた。


式典会場へ向かう途中、突然、建物全体が微かに揺れた。


「……魔力振動?」

リリアが眉をひそめる。


「こんな場所で?」


セレスティアの目が細く鋭くなる。


「嫌な揺れね。帝都の魔脈が……“応えている”。

 灰哭副層の反応と似ているわ。」


アランの胸が高鳴った。


(また……地脈が“呼んでいる”のか。)


セレスティアが二人の方を向く。


「式典のあと、正式に説明します。

 ――あなたたちには、新しい任務が与えられるわ。」


「任務……?」


「ええ。帝国全土の魔脈を安定させるための“観測隊”。

 あなたたちはその中核よ。」


アランとリリアは顔を見合わせた。


(――もう、灰哭の戦いで終わりじゃないんだ。)


胸の奥で、光がゆっくりと熱を帯びていく。


そのとき会場の奥で鐘が鳴り、係員が呼ぶ声が響いた。


「――光導士候補生、入場願います!」


アランは深呼吸し、歩みを進めた。


帝都の光が、白銀の床に反射し、

彼の影を長く伸ばす。


新たな物語が、今まさに開こうとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ