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第57話:再封印 灰哭の静寂

帝都・魔導学院 査定報告室。

白い魔晶灯が静かに灯り、円卓の上で三枚の報告符が淡く光っていた。


アラン・ルクレディアとリリア・アルヴァインは、その中央に立っている。

正面には三人の査定官――レオニール、マリエッタ、ダリオ。

副層任務の公式報告会が、いま始まろうとしていた。


マリエッタが先に口を開く。

「灰哭副層での封印任務、報告を。」


アランが軽く頭を下げる。

「はい。地脈核暴走を、共鳴魔法ルミナ・リゾナンスで安定化させました。

 その後、研究局の再封印作業によって、核は完全に沈静化しています。」


「新規魔法の発動経路については?」とダリオ。

「《ルーメン》系統を基盤に、風属性との同調を行いました。

 リリア・アルヴァインの《テンペスト・フィールド》と重ねたことで、波動干渉を吸収しています。」


「なるほど……“力の制圧”ではなく、“律の調和”か。」

レオニールが腕を組み、興味深げに呟く。


リリアが付け加える。

「暴走を止めたのはアランの判断です。

 もしあの瞬間に光をぶつけていたら、地脈そのものが崩れていました。」


マリエッタが小さく笑った。

「ふぅん。落ちこぼれ公爵家の末子が、よくここまで来たものね。」


アランは少し苦笑する。

「まだ見習いです。でも、もう迷いはありません。」


その言葉に、三人の査定官が顔を見合わせる。

レオニールが書類に印章を押しながら言った。

「――副層任務、完了を確認。

 特例評価として“光導士候補生”の資格を認定する。」


「えっ……!」

リリアが思わず声を上げる。

「それって、学院生で唯一……!」


「そうだ。帝国の記録上、光導士候補としては史上最年少――

 そして、学院ではお前一人だ。」


レオニールの視線がアランを射抜いた。

「光を“理解”で扱う資質、久しく見なかった。誇りに思うといい。」


会議が終わり、廊下に出た二人。

夕陽が窓から差し込み、床に長い影を落とす。


リリアがため息をつきながら笑った。

「ほんと、あんたって人は……気づけば新しい肩書きもらってるんだから。」

「いや、まだ候補生だよ。」

「でも、“光導士”って言葉、似合ってるわ。」


アランは少し照れながら視線をそらした。

「そうかな……。でも、この称号に恥じない力を手に入れたい。」


その背後で、廊下の角からひとりの男が様子をうかがっていた。

黒衣の魔導官。

帝国研究局直属――情報課。


「……やはり、あの少年の光は“自然律”と干渉していたか。」

小さく呟くと、符文盤に報告を送る。


『件名:灰哭副層任務報告/対象:アラン・ルクレディア

 観測結果――“律の欠片”反応、再確認。次段階の接触準備を開始。』


学院の外では、夜の風が吹き抜けていた。

灰哭の地は封じられ、静寂を取り戻したはずだった。

だが、その“光”を記録した者たちは、まだ動きを止めていない。


そして、アラン自身も知らぬうちに――

新たな運命の扉へと、静かに踏み出していた。


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