第51話:共鳴実験 光と風の式図
翌朝、帝国魔導学院・研究棟第3実験室。
アランリリアは、中央に設置された巨大な魔導陣の前に立っていた。
魔導盤には、昨日解析した《共鳴符文》の図式が描かれている。
光の環が三層に重なり、風の流線がその間を通っていた。
「これが“光と風の式図”か……。」
アランが呟くと、隣のリリアが眉を上げる。
「見るだけなら綺麗だけど、制御は地獄よ。風が速すぎると光が乱れるし、
遅すぎると圧が抜けて共鳴が止まる。」
「つまり、タイミングがすべてってことだね。」
アランは小さく頷き、魔力制御環を腕に装着した。
室内の観測席ではセレスティア教官と研究員たちが準備を整えている。
「記録開始。アラン・ルクレディア、光導位相を開放。
リリア・アルヴァイン、風圧同調を開始。」
「了解!」
二人の声が重なり、魔導陣が光を放つ。
アランの掌から柔らかな金光が流れ出し、
リリアの周囲では風が静かに渦を巻き始めた。
最初は穏やかな響きだった。
だが、魔力の流れが交差した瞬間――
陣の中心が淡く震え、光と風が混ざり合う。
「共鳴値、上昇中!」
研究員の報告が飛ぶ。
「アラン、波長を固定して!」
「了解!」
光が細い線となり、風の流れに沿って広がっていく。
まるで光が風をなぞるように、空間全体が共鳴した。
だが次の瞬間、制御盤の針が跳ね上がる。
「共鳴値、限界値を突破!」
リリアが声を張る。
「圧が上がりすぎてる、分散するわ!――《テンペスト・フィールド》!」
風の膜が展開し、暴走しかけた光を包み込む。
アランも両手を広げて光を安定させた。
「――《ホーリーバースト》!」
光が風の渦と一体化し、柔らかな閃光が広がる。
一瞬の爆風のあと、部屋は静けさを取り戻した。
スティアがゆっくりと立ち上がる。
「……成功ね。波形が理論値に近い。
これが――光と風の“共鳴安定式”。」
リリアが息を整えながら笑う。
「やった……今度こそ完全に制御できた。」
アランは腕の装具を外しながら頷いた。
「まだ完璧じゃないけど……掴めた気がする。
光は導き、風は支える――その順番さえ間違えなければ、安定する。」
セレスティアが満足げに微笑む。
「よく覚えておきなさい。
“共鳴”は競うものじゃない、響かせるものよ。」
研究室の窓から差し込む朝の光が、二人の影を静かに照らしていた。




