第49話:査定報告会 光が導く証
翌日、帝国魔導学院・講堂。
封印任務を終えた学生たちが整列し、壇上ではセレスティア教官と数名の査定官が並んでいた。
天井に浮かぶ魔導灯が淡く輝き、報告会の始まりを告げる。
「――これより、“灰哭副層封印任務”の査定報告を行います。」
セレスティアの声が静かに響く。
講堂の空気がぴんと張りつめ、全員が前を向いた。
最初に映し出されたのは、地脈封印陣の映像記録。
光と風が交錯し、暴走する魔力を抑え込む瞬間が再生される。
ざわめきが走った。
「これ……本当に学生の制御レベルか?」
「封印陣の安定波形が理想値に近い……!」
査定官の一人が驚きの声を漏らす。
セレスティアが淡々と説明を続けた。
「封印の主制御を担当したのは光導基礎課程のアラン・ルクレディア。
補助および風圧分散を行ったのは風雷課程のリリア・アルヴァイン。
両名とも、地脈核の共鳴波を“崩さずに整列”させることに成功しました。」
すると、中央の査定官が問いかける。
「つまり――強引な押さえ込みではなく、“共鳴制御”による安定化と?」
「はい。」セレスティアは頷く。
「彼の光は干渉ではなく“調律”です。
魔力を押し返すのではなく、揺らぎを受け入れて整える。
これこそ、光属性の本質的制御法だと私は考えます。」
講堂が静まり返る。
壇上に立たされたアランは、背筋を伸ばしたまま静かに聞いていた。
(調律……俺がやったことが、そんなふうに言われるなんて。)
セレスティアが視線を向ける。
「アラン・ルクレディア。今回の任務における君の制御精度――95.7%。
これは学院記録の上位に相当します。」
どよめきが広がる。
リリアが隣で軽く肘を突いた。
「やるじゃない。……ほんとに見習い候補なの?」
「いや、まだ“候補の中の候補”だよ。」
アランは苦笑したが、その目の奥には確かな自信があった。
査定官の一人がリリアにも目を向ける。
「風雷課程のリリア・アルヴァイン。君の《テンペスト・フィールド》も見事だった。
地圧変動を最小限に抑えた判断は高く評価できる。」
リリアは姿勢を正し、堂々と答えた。
「ありがとうございます。ですが、次は暴走を起こす前に抑え込んでみせます。」
「頼もしいわね。」セレスティアが微笑む。
「あなたたち二人の協調制御が、灰哭副層の安定を保った。
――学院としても正式に表彰対象とします。」
拍手が広がった。
アランは戸惑いながらも頭を下げる。
報告会が終わり、学生たちが退出していく中。
セレスティアが静かにアランを呼び止めた。
「アラン。」
「はい。」
「あなたの光は、まだ“途中”よ。だが――確実に何かを掴み始めている。
今後、学院の特別課題《高位符文構築》に参加してもらうわ。」
アランの目がわずかに見開かれる。
「高位符文……ですか?」
「ええ。地脈封印を維持するための研究班よ。
次の段階で、光と風の共鳴理論を実験する予定。
あなたたちにしか、あの波形は再現できない。」
リリアも振り返る。
「つまり、また一緒に?」
「ええ。――光と風の組み合わせは、まだ終わっていないわ。」
アランは一瞬だけ息を吸い込み、微笑んだ。
「はい。必ず、次も成功させます。」
夕暮れの光が講堂の窓から差し込み、白い床を照らした。




