第48話:報告と評価 光が照らす証明
第二区画・転移門前。
静かな残光の中、アランとリリアはゆっくりと歩を進めた。
崩壊しかけた石床は安定し、地脈の震えも止んでいる。
天井から淡い光が差し込み、二人の影をやさしく照らしていた。
「……全部、終わったね。」
リリアが微笑む。
「うん。思ったより……長い一日だったな。」
アランが苦笑する。
腕輪の表面には焦げ跡が残り、胸の記録符も半分ほど色を失っていた。
それでも、その表情には達成感が宿っている。
転移門の中央が光り、地上へ帰還する。
アランは最後に一度だけ振り返った。
封じられた地脈核のあった空間は、今は静かに眠っている。
二人が姿を現すと、すぐに研究員たちが駆け寄ってきた。
「おかえりなさい! 二人とも無事ですか!」
「封印陣、完全に安定しました!」
その中心で、セレスティア教官がゆっくりと歩み寄る。
白衣の裾を揺らしながら、表情をやわらげて言った。
「ご苦労さま。副層の封印、完了を確認したわ。」
アランが頭を下げる。
「教官……封印の最後、反応が暴れていました。もう問題はありませんか?」
「ええ。あなたたちが流し込んだ光が、核の回路を完全に閉じた。
帝都の魔力波も安定している。――よくやったわね。」
リリアが息を吐いて笑う。
「教官に“よくやった”って言われたの、初めてかも。」
「当然よ。地脈核を封印できるなんて、ほんの一握りよ。」
アランは少し照れくさそうに頭をかいた。
「……それでも、まだ見習い候補ですけどね。」
「ふふ、そうね。でも今日で確信したわ。あなたの光は“制御の理”そのもの。
量ではなく、理解で支える光――それがあなたの強みよ。」
一瞬、アランは言葉を失った。
セレスティアの瞳はまっすぐで、嘘がない。
その評価が、胸の奥まで響いた。
「ありがとうございます。これからも、磨き続けます。」
「期待しているわ。……リリアもね。」
「もちろんです! 次は、私が先に突破してみせます!」
リリアが胸を張ると、セレスティアが苦笑した。
「その意気はいいけれど、もう少し周囲も見なさいね。」
研究員たちが笑い、場の空気がやわらぐ。
封印の緊張から解かれた二人は、ようやく安堵の表情を見せた。
塔の外に出ると、夕陽が帝都の空を染めていた。
遠くに白銀の塔群が輝き、街に魔導灯が点り始める。
リリアが空を見上げる。
「綺麗……まるで、灰哭の光が移ったみたい。」
アランも同じ空を見た。
「うん。でも今度は“穏やかな光”だ。」
風が二人の間を抜ける。
長い戦いを終えた空気が、ようやく静かに落ち着いた。
その背後で、セレスティアが研究記録を閉じる。
小さく呟いた。
「――やっぱり、あの子の光はただの“属性”じゃない。
導く光、か。」
そして、研究塔の灯がゆっくりと夜に溶けていった。




