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第45話:灰哭体との初交戦

灰哭副層・第二区画。

低い地鳴りが続き、空気がどんよりと揺れていた。

天井の符文が不規則に点滅し、壁の亀裂から灰色の霧が漏れ出している。


「魔力値、急上昇!」

研究局員の声が響く。

「符文が反応しません、共鳴波が干渉しています!」


セレスティア教官の通信が入った。

『全員、警戒を。第二区画の魔脈が不安定です。戦闘になっても慌てないように!』


その瞬間、霧がうねりを上げて爆ぜた。

黒い影が形を取り、霧の奥から“何か”が現れる。


アランは光晶灯を構えた。

「っ……出たな。」


姿は人のようで、輪郭は常に揺れている。

骨のような線と、布の切れ端のような影が重なり合い、胸の中心がぼんやり光っていた。


リリアが息を呑む。

「……あれは……?」


アランは一歩踏み出し、慎重に言葉を選んだ。

「ダンジョンに残った魔力が、地脈を吸って形になった……。

 “実体を得た灰哭はいこく”……いや、“灰哭体はいこくたい”と呼ぶべきか。」


影はゆっくりと顔を上げる。

目も口もないはずなのに、冷たい視線のような圧が走る。

霧の中で、ざらついた声が混ざり合った。


『カエセ……ヒカリ……ヲ……』


「っ、声が……直接頭に!」

リリアが頭を押さえた。


アランはすぐに《リカバー》を展開する。

淡い光の膜が広がり、精神への干渉を押し返した。


「大丈夫か!」

「……うん、何とか。」


影が動いた。

腕のような影が伸び、地面の符文を砕く。

黒い衝撃波が走り、石床がはじけ飛ぶ。


「来るぞ――!」

アランが踏み込み、掌から光を放つ。


「《ルミナ・エッジ》!」


光の刃が連続して走り、影の腕を切り裂く。

だが、斬られた部分はすぐに霧となって再生した。


「再生した!?」

リリアが驚く。


「じゃあ――吹き飛ばす!」

杖を構え、詠唱する。


「《テンペスト・ランス》!」


突風が走り、灰哭体の身体を切り裂いた。

風と光が交差し、霧が弾ける。

だが、また新しい影が霧の奥から現れた。


『……ヒカリ……マタ……アラワレタ……』


「しつこいな……!」

アランが歯を食いしばる。

「今度こそ封じる!」


灰哭体が咆哮した。

霧の波が渦を巻き、視界が完全に白く染まる。


「視界がっ……!」

「感じろ、魔力の流れを!」

アランは目を閉じ、光の波を感じ取る。

その動きに合わせるように、リリアの風が動いた。


「アラン、合わせる!」

「――行くぞ!」


二人の詠唱が重なる。

「《ホーリーランス》!」

「《テンペスト・フィールド》!」


フィールド内で風が渦を巻き、中心に真空のような道ができる。

その道に沿って、光の槍が一直線に走る。

風が炎を吹き上げるように、光がさらに加速して突き抜ける。

影の輪郭が裂け、苦しむような声を上げて消えた。


静寂。


リリアが息を整え、杖を下ろす。

「……やった、の?」

アランは警戒を解かず、周囲を見渡す。


「一体はな。」


その言葉の直後――霧の奥で、新たな影が動いた。

複数の“灰哭体”がゆっくりと立ち上がる。


「……まだ終わってない。」


アランの腕輪が再び光を放ち、地脈が脈動する。

灰色の地下空間で、第二の戦いが始まろうとしていた。


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