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第43話:灰の地脈 魔力乱流

灰色の岩肌を踏みしめながら、アランたちは第一区画へと進んでいた。

足元には淡く光る導管の跡が走り、魔力の脈動が脈のように流れている。

空は曇天のまま、風が絶えず地表を撫でていた。


「空気が……重い。」

リリア・アルヴァインが小さく呟く。


風の精霊に感応する彼女には、流れの歪みがはっきりと感じ取れるのだろう。

「圧が高いな。魔力流が地表まで上がってきてる。」


アランは制御腕環に手を添え、同期波を調整した。

腕環が金光を放ち、周囲の乱れがわずかに静まる。


背後から別班の学生の声が聞こえる。

「ここ、本当に観測区域なの? ダンジョンそのものじゃないか……」


岩壁のあちこちには、古代符の痕跡が残っていた。

灰哭のダンジョン時代に形成されたものが、今も地脈の脈動に共鳴している。


セレスティア教官の声が通信符から届く。

『第一区画、観測開始。魔力値の測定を行いなさい。記録符を作動させ、周囲の波形を読み取ります。』


アランは左胸の記録符に触れた。

淡い光が浮かび、周囲の魔力が透視図のように映し出される。

だが、その波形はどこか不安定だった。

上下の揺れが周期的に崩れ、正常値から外れている。


「おかしい……波が、二重になってる。」

「二重?」リリアが近寄る。


アランは符の映像を指差した。

「本来なら単一の脈動で一定だけど、これは——“逆流”が混じってる。」


その瞬間、風が強く吹き荒れた。

砂塵が舞い、導管の光が一気に赤く濁る。


リリアが素早く杖を構えた。

「魔脈が暴れてる! 地表に上がるわ!」


アランも反射的に魔力を集中させる。

腕環の符が熱を帯び、周囲の光を吸い込んでいく。

「「光圧制御――《ルミナ・シェル》!」


地表から噴き上がる灰色の光柱を、アランの光が包み込む。

だがその内部では、赤黒い脈が暴れていた。

リリアが風陣を展開する。

「《エア・バインド》!」


風の帯が巻きつき、暴走する魔力流を抑え込む。

二人の魔力が交差し、記録符が強く点滅した。

装置の中央に、複数の波形が重なり合う。


「……共鳴してる?」

「違う、干渉だ。風と光の位相がずれてる!」

アランが叫ぶ。


次の瞬間、閃光が走った。

風と光がぶつかり合い、地面が弾ける。

反射的にアランはリリアの肩を掴み、後方へ跳んだ。

爆風が吹き抜け、視界が白く染まる。


しばらくして、砂塵の向こうに静寂が戻った。

地表には巨大な魔法陣の痕跡が刻まれている。

中心からは、淡い灰色の光がかすかに上がっていた。


リリアが息を荒げながら言う。

「……いまの、制御できたの?」

「たぶん、ギリギリ。でも、あれは——自然発生じゃない。」


アランは記録符を見た。

波形の奥に、もう一つの“反応点”が浮かんでいた。

それはまるで、地の底から彼らを見上げているようだった。


セレスティアの声が再び届く。

『第一区画、異常値を確認。全班、警戒を維持して行動を続けなさい。

 ——灰哭の地は、まだ眠っていません。』


風が再び吹き抜け、灰色の空を裂いた。

そこには、確かに――光の筋が走っていた。


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