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第32話:光の証明 条件付き合格

帝都魔導士団本部・査定ドーム。

模擬戦が終わり、受験者たちは整列していた。

白い光が差し込む中、試験官が静かに口を開く。


「――これより、帝国魔導士団査定の最終結果を発表する」


ざわめきが走る。

魔力量、理術筆記、そして模擬戦。

三項目の総合評価が刻まれた水晶板が、空中に浮かび上がった。


リリア・アルヴァイン――評価A。

そして、アラン・ルクレディア――評価A(条件付き)。


場内が静まり返る。


マリエッタが小さく笑い、記録板に視線を落とす。

「……まさか、暴走しかけてから制御まで立て直すなんて。“光”の魔法体系、やはり未知数ね」


ダリオが頷く。

「安定率九十五パーセント。暴走値からの再制御成功は理論外。ただし持続率に難あり――条件付きで妥当だな」


レオニールは腕を組み、静かに呟いた。

「……“光導師”の片鱗。放っておけばいずれ帝都を揺るがすぞ」


試験後、控室。

包帯を巻いた腕を軽く動かしながら、アランは椅子に腰を下ろす。

天井から吊るされた魔導灯の光が、彼の頬を照らす。


扉が静かに開く。

リリア・アルヴァインが立っていた。

その瞳には、冷たさと――ほんの僅かな興味が宿っている。


「……あなた、本気で“光”を使いこなせると思っているの?」


アランは微かに笑い、目を細めた。

「思ってる。誰に笑われてもな」


「ふん……。あの制御、理屈じゃ説明できない。でも、負けたのは事実。――次は、勝つわ」


彼女は踵を返し、ドアを閉めて去っていく。

その足音が遠ざかるまで、アランは静かに天井を見上げていた。


(……勝った実感なんて、ほとんどない。でも、“光”が俺を導いた。あの一瞬だけは、確かに……)


日が傾き、帝都の塔群が茜色に染まる。

滞在邸に戻ると、玄関でセルジオが待っていた。


「お帰りなさいませ、アラン様。お疲れのところ恐縮ですが、帝国魔導士団から伝達が届いております」


彼が差し出したのは、金の封蝋で閉じられた文書。

封に刻まれた紋章は――帝都魔導士団本部。


アランは封を切り、目を走らせた。

そこには一文が記されていた。


『帝国魔導学院・見習い候補生としての入学を許可する。ただし“光魔法体系”に関しては研究監査下におくものとする。』


アランは静かに息を吐く。

「条件付き、か……まぁ、想定の範囲内だな」


セルジオは穏やかに微笑んだ。

「条件とは、可能性の裏返しでもあります。帝都は貴方の力を――そしてその“光”を、恐れているのでしょう」


窓の外、塔群の上空に浮かぶ大環アークサークルが、夜の帳の中で淡く輝く。

それはまるで、アランの未来を照らす“道標”のようだった。


(帝都の光は、俺の光とどう違う? その答えを――見つけてみせる)


少年の瞳に、再び黄金の輝きが宿る。


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