表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強だと思った光魔法ですが習得が難しいです! ~魔法至上の国でダンジョンに挑む公爵家の落ちこぼれ~  作者: 空木 輝斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

195/195

第195話:報告書 No.Δ-17

帝都ルメニア中央区。


白銀の塔群アストラ・スパイアの地下深層。


通常の導管網とは切り離された、極めて限られた者しか立ち入ることを許されない区画に、その部屋は存在していた。


壁面一帯に刻まれた魔法陣が淡く発光し、空間全体に静かな振動を与えている。

外界から隔絶されたこの場所では、魔力の流れすら管理下に置かれていた。


その中央。


一つの記録結晶が起動する。


淡い光が集まり、映像が構築される。


山脈。


崩壊しかけた地形。


そして。


戦闘。


「……対象の挙動、確認」


低い声が響く。


発言者の姿は影に包まれているが、その声だけで場の空気が引き締まる。


記録映像の中で、アランが上位個体と対峙している。


その動きが、通常の魔導士のものではないことは、誰の目にも明らかだった。


「干渉精度、異常値」


別の声が続く。


「流れの読解速度、再現不可能域に到達」


淡々とした分析。


感情は一切含まれていない。


ただ、事実だけが積み上げられていく。


映像が切り替わる。


アランが“触れすぎた”瞬間。


光が変質し、魔脈と一致しかける場面。


空気が、わずかに重くなる。


「……適合率、どこまで上がった」


最初の声が問う。


わずかな間。


そして、回答。


「推定値、七八パーセントを超過」


その数字に、別の影が動いた。


「……高すぎるな」


初めて、感情に近い揺らぎが混じる。


七八パーセント。


それは、実験体としての成功ラインを大きく上回る数値だった。


「制御不能領域に近い」


「同時に、完成形に最も近い個体でもある」


評価が重なる。


肯定と警戒が、同時に存在していた。


映像が止まる。


アランが、リリアによって引き戻された瞬間で固定される。


「……介入要因について」


別の声が言う。


「風属性個体」


「識別名、リリア・アルヴァイン」


空間が、わずかにざわつく。


「アルヴァイン……」


その名には、明確な意味があった。


「魔脈調律系統」


「記録上、途絶したはずの系譜」


静かな声の中に、わずかな興味が混じる。


「干渉を“止めた”のではない」


「“戻した”」


分析が続く。


「流れに対する理解が、通常の属性魔法とは異なる」


「対象Aと、相補関係にある可能性」


沈黙。


短いが、重い時間。


やがて、最初の声が口を開く。


「……二体とも、か」


その一言で、空気が変わる。


評価が確定した。


対象は一人ではない。


二人。


「回収方針を修正する」


淡々と告げる。


「対象A――光属性個体」


「対象B――風属性個体」


「優先回収対象として指定」


短く、明確に。


「生存確保を前提」


「損傷許容範囲、拡張」


その意味は、十分すぎるほど伝わる。


多少の損壊は、問題にならない。


確保が最優先。


「上位個体の損失については」


別の声が問う。


わずかな間の後、返答が落ちる。


「問題ない」


即答だった。


「回収は目的ではない」


「検証が主目的」


その言葉に、すべてが集約されていた。


今回の戦闘すら。


“観測”の一部に過ぎない。


「次段階へ移行する」


低く、確定的な声。


「魔脈制御実験、第二フェーズを開始」


その瞬間。


壁面の魔法陣が一斉に強く発光する。


帝都全体へと繋がる導管の奥で、わずかな“揺らぎ”が生まれた。


まだ誰も気づかない。


だが確実に次の段階が、始まっている。


記録結晶の光が消える。


部屋は再び静寂に包まれる。


ただ一つ。


最後に残された言葉だけが、重く沈んでいた。


「……あれは、器になる」


それが、評価だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ