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最強だと思った光魔法ですが習得が難しいです! ~魔法至上の国でダンジョンに挑む公爵家の落ちこぼれ~  作者: 空木 輝斗


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第193話:重ねる三人

砕けた岩の破片が、まだ空中に残っていた。


その中を、上位個体が静かに歩く。


踏み込むたびに足場が崩れるにもかかわらず、重心は一切乱れない。

周囲の魔脈に自然と干渉し、地面の“崩れ”すら制御しているようだった。


「……あれ、人間かよ」


ガルドが低く吐き捨てる。


軽口に聞こえるが、声には明確な警戒が混じっていた。


アランは岩壁にもたれたまま呼吸を整え、視線だけを上位個体に向ける。


一撃の重さは、さっきの黒衣とは別格だった。


単純な力ではない。


流れそのものを乗せた打撃。


(……同じだ)


自分と。


ほんの少し前に感じた、“深く触れた状態”と。


「……ガルド」


小さく呼ぶ。


「時間、くれ」


短い言葉だった。


ガルドは一瞬だけ横目でアランを見て、口角を上げる。


「最初からそのつもりだ」


次の瞬間、地面を蹴る。


一気に間合いを詰め、正面から殴りかかる。


上位個体も動く。


無駄のない最短軌道。


拳と拳がぶつかる。


――ドォン!!


衝撃が広がり、周囲の岩が弾ける。


力は互角。


いや、わずかに上位個体が押している。


それでもガルドは退かない。


むしろ踏み込む。


「いいねえ……!」


笑いながら連打する。


重い一撃を、あえて正面からぶつけ続ける。


流れの制御ではなく、純粋な圧力で押さえ込む。


上位個体の動きが、わずかに鈍る。


その一瞬を、リリアは見逃さなかった。


風を絞る。


細く。


鋭く。


広げず、線で通す。


「……そこ」


呟きと同時に、流す。


ガルドの拳と上位個体の腕がぶつかる、その接点へ。


ほんのわずかなズレを作る。


流れの重なりを、外す。


その瞬間。


「っ――!」


上位個体の体勢が、崩れた。


完全ではない。


それでも、十分だった。


ガルドの拳が、深く入る。


――ドンッ!!


鈍い衝撃。


上位個体が初めて、大きく後退する。


地面を削りながら、数メートル滑る。


静止。


空気が張り詰める。


「……効くじゃねえか」


ガルドが肩を鳴らす。


リリアは息を整えながら、すぐに次の流れを読む。


(……通じる)


完全ではない。


それでも。


三人で重ねれば、崩せる。


アランがゆっくりと立ち上がる。


呼吸はまだ荒い。


それでも、目ははっきりと開いていた。


「……見えた」


小さく呟く。


上位個体の流れ。


さっきよりも、はっきりと。


「どこを崩せばいいか」


リリアが一瞬だけ振り向く。


その言葉に、安堵と不安が同時に浮かぶ。


(……見えすぎてる)


それでも、今は使うしかない。


上位個体が再び構える。


今度は慎重だ。


先ほどのような直線ではない。


角度を変える。


流れをずらす。


対策してきている。


「……来る」


リリアが低く告げる。


次の瞬間。


消えた。


視界から。


同時に、三方向から気配が来る。


「分散……!」


リリアが風を展開する。


すべては防げない。


その中で、最も濃い一線を選ぶ。


「左!」


声と同時に流れを寄せる。


ガルドが反応し、拳を振るう。


だが。


「違う」


アランが一歩前に出る。


迷いがない。


「本体は――そこじゃない」


そのまま、踏み込む。


何もない空間へ。


そして、拳を放つ。


――ドンッ!!


空間が歪む。


そこに、上位個体が現れる。


隠していた位置を、正確に撃ち抜かれた。


初めて、明確な隙が生まれる。


リリアが即座に重ねる。


風で流れを固定する。


逃がさない。


ガルドが踏み込む。


「決めるぞ!」


拳を振り上げる。


その瞬間。


アランの中で、何かが変わった。


流れが、見えすぎる。


深く。


細かく。


全てが。


(……もっといける)


その考えが、自然に浮かぶ。


止める理由が、分からなくなる。


「……アラン?」


リリアが違和感に気づく。


光が、変わっている。


静かすぎる。


冷たすぎる。


アランが、一歩踏み出す。


そして。


さらに深く、流れへ触れる。


「……やめろ」


ガルドが低く言う。


遅い。


すでに、一線を越えかけている。


アランの光が、上位個体と同じ構造を取り始める。


完全な同調。


それは、力としては、正しい。


だが。


「戻れねえぞ、それ」


ガルドの声が重くなる。


アランは答えない。


ただ、前を見る。


上位個体。


その中心。


そこに、完全な一撃を叩き込めば――


終わる。


「……終わらせる」


小さく呟く。


その声には、迷いがなかった。


そして。


人間らしさも、わずかに欠けていた。


風が、揺れる。


リリアは一歩、踏み出す。


止めるために。


それでも。


間に合うかは、分からなかった。


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