表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強だと思った光魔法ですが習得が難しいです! ~魔法至上の国でダンジョンに挑む公爵家の落ちこぼれ~  作者: 空木 輝斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

192/193

第192話:上位個体

吹き飛ばされた黒衣が崩れ落ちるのと同時に、残りの四人が一斉に間合いを詰めた。


動きに迷いはない。仲間が倒されたことに対する動揺も見えず、ただ任務を遂行するための最短距離を選んでいる。


その無機質さが、逆に異様だった。


リリアはすぐに風を展開する。


広げるのではなく、圧縮する。


相手の進行線に沿って薄く流し込み、わずかに軌道をずらす。


「……来るよ」


低く告げる。


その直後、不可視の刃が複数重なって走った。


風がそれを受け、逸らす。


完全には防げない。それでも、致命線だけは外す。


アランが踏み込む。


今度は迷いがない。


光を纏い、最短で一人に接近する。


黒衣が反応するより早く、その懐へ入る。


――打つ。


鈍い衝撃。


流れごと崩す。


一人目が膝を折る。


間髪入れず、二人目。


背後からの斬撃を、わずかな体の傾きで避け、そのまま腕を掴む。


「……そこ」


低く呟き、光を流し込む。


内部の流れを乱す。


黒衣の動きが止まり、そのまま崩れ落ちた。


「……早い」


リリアが息を呑む。


さっきよりも明らかに速い。


そして正確だった。


迷いがない。


それが逆に、不安を呼ぶ。


(……近い)


さっきの状態に。


深く入りすぎた、あの感覚に。


ガルドが横で舌を鳴らす。


「おいおい、やりすぎだ」


軽く言う。


その目は、笑っていない。


残り二人の黒衣が距離を取る。


判断が早い。


正面からでは分が悪いと見たのか、動きを変えた。


左右へ分かれる。


同時に。


空気が、変わった。


「……来る」


リリアが即座に察知する。


次の瞬間、地面が裂けた。


足元から突き上げる衝撃。


岩盤が持ち上がり、崩れ、視界を遮る。


「チッ……!」


ガルドが後退する。


単純な斬撃ではない。


範囲操作。


魔脈を使った干渉だ。


「こいつら……使ってきやがる」


低く吐き捨てる。


帝国の実験体。


その意味が、はっきりしてくる。


リリアはすぐに風で視界を払う。


砂塵が流れる。


だが、その奥に違和感があった。


「……増えてる?」


思わず呟く。


黒衣の気配が、一つ多い。


いや、違う。


「……来たか」


ガルドが小さく言う。


その視線の先。


崩れた岩の上に、一人が立っていた。


他の黒衣と同じ装束。


しかし、雰囲気が違う。


立っているだけで、周囲の空気がわずかに沈む。


圧がある。


「上位個体、到着」


淡々とした声。


だが、その一言で場の緊張が一段階上がる。


リリアが無意識に息を詰める。


(……強い)


直感だった。


今までのとは、別物。


アランもそれを見ていた。


その目が、わずかに細くなる。


「……あれが本命か」


静かに呟く。


上位個体が一歩、踏み出す。


それだけで、魔脈がわずかに揺れた。


周囲の流れに干渉している。


無意識で。


「対象確認」


その視線が、アランに向く。


「適合率、上昇」


「……回収優先度、最大へ変更」


リリアの背筋が凍る。


(適合率……?)


言葉の意味は分からない。


それでも、嫌な予感だけははっきりとある。


ガルドが前に出る。


今度は、完全に前に。


「……あーあ」


肩を回す。


「面倒なやつ出てきたな」


軽口のようでいて、その立ち位置は明確だった。


「ここから先は、ちょっと危ねえぞ」


リリアにだけ聞こえる声。


その意味を理解する。


(……本気)


アランは動かない。


上位個体を見たまま。


そして、ゆっくりと光を立ち上げる。


先ほどよりも深く。


静かに。


「……来るなら」


小さく言う。


「止める」


その声は落ち着いている。


落ち着きすぎている。


リリアは、その横顔を見た。


そして、確信する。


(……やっぱり)


さっきとは違う。


一歩、踏み込んでいる。


力だけではない。


在り方が、変わり始めている。


上位個体が、わずかに構えた。


次の瞬間。


地面が消えた。


正確には、踏み込んだ衝撃で、岩盤ごと砕けた。


「っ――!」


視界から消える。


速い。


今までとは比べものにならない。


アランが反応する。


動く。


だが。


「遅い」


声が、横から聞こえた。


上位個体が、すでに隣にいる。


その腕が振られる。


直撃。


――ガンッ!!


アランの体が弾かれる。


数メートル先の岩に叩きつけられる。


「アラン!!」


リリアが叫び、風を飛ばす。


上位個体へ。


しかし。


「無効」


短い言葉。


風が、届く前に散らされる。


流れを読まれている。


ガルドが即座に割り込む。


拳を振るう。


――ドォン!!


衝突。


空気が震える。


上位個体が初めて一歩、下がる。


「……へえ」


ガルドが笑う。


「やるじゃねえか」


軽く言いながらも、その目は鋭い。


アランがゆっくりと立ち上がる。


呼吸は荒い。


それでも、目はまだ死んでいない。


むしろ、さっきよりも静かに燃えていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ