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最強だと思った光魔法ですが習得が難しいです! ~魔法至上の国でダンジョンに挑む公爵家の落ちこぼれ~  作者: 空木 輝斗


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第184話:再会、そして崩壊

山の空気は、重かった。


学院の外とは明らかに違う。


風は吹いているのに、どこか淀んでいる。


(……近い)


リリアは足を止めず、山道を駆け上がる。


呼吸は乱れていない。


むしろ――軽い。


流れに乗っている。


魔脈のざわめきが、進むべき方向を教えてくる。


(ここ……)


明らかに、歪みが強い。


地面の奥で、流れがぶつかり合っている。


引き寄せられている。


一箇所に。


「……いた」


視線の先。


岩場の開けた場所。


そこに、人影があった。


背中。


静かに立っている。


風が、その周囲だけ不自然に揺れている。


(……アラン)


胸が、強く鳴る。


リリアは一歩、踏み出した。


「……アラン!」


声が、山に響く。


その瞬間。


人影が、ゆっくりと振り向いた。


「……リリア」


その声は、確かに本人だった。


だが。


どこか――遠い。


リリアは息を呑む。


「何してるの……こんなところで」


言葉にしながら、違和感が膨らむ。


アランの周囲。


空気が歪んでいる。


光が、揺れている。


体の内側から。


「……少し、訓練だ」


淡々とした返答。


感情の起伏が、薄い。


「訓練って……」


リリアは一歩、近づく。


その瞬間。


――ざわり


足元の流れが、大きく揺れた。


「……っ!?」


さっきまでとは比べ物にならない。


強い。


不安定。


(これ……)


リリアの顔色が変わる。


「アラン、今すぐやめて」


思わず声が強くなる。


「流れ、崩れてる」


アランは、わずかに首を傾げた。


「……分かるのか」


その一言に、リリアの心臓が跳ねる。


「分かるよ!」


「だから言ってるの!」


さらに一歩、踏み出す。


距離が縮まる。


その瞬間。


――ドンッ


地面が、揺れた。


「なっ……!?」


岩場が軋む。


足元が沈む。


魔脈が――暴れた。


「……違う」


アランの声が、低く響く。


「これ……俺じゃない」


その直後。


――バキッ


亀裂。


地面に、大きなひびが走る。


リリアが息を呑む。


「うそ……!」


ひびは、止まらない。


一気に広がる。


まるで地面の下から、何かが押し上げてくるように。


「下がれ!!」


アランが叫ぶ。


その声は、さっきよりもはっきりしていた。


リリアは反射的に後退する。


――轟音。


地面が、崩れた。


岩が砕け、斜面が崩れ落ちる。


土砂が一気に流れ出す。


山が――動いた。


「くっ……!」


アランが踏み込む。


足元に光が走る。


内側から生まれた光。


それを、地面へと叩きつける。


「……止まれ!!」


だが、止まらない。


魔脈の流れが、完全に乱れている。


一方向ではない。


複数の流れが、ぶつかっている。


(これ……制御できない……!)


リリアの背中に冷たい汗が流れる。


規模が違う。


さっき整えたものとは、まるで別物だ。


「アラン!!」


叫ぶ。


そのとき。


アランが、地面に手をついた。


光が、広がる。


押さえ込むように。


流れに重ねる。


「……くそ」


歯を食いしばる。


――ドンッ


さらに大きな揺れ。


光が、弾かれる。


「っ……!」


アランの体がよろめく。


(無理だ……!)


リリアは、理解する。


一人では無理。


この規模は。


(じゃあ……)


迷いはなかった。


リリアは風を集める。


強くしない。


広げない。


細く。


深く。


「……合わせる」


呟く。


アランの光。


魔脈の流れ。


その両方に、意識を重ねる。


そして、踏み込む。


「アラン、動かないで!!」


叫ぶ。


アランが一瞬だけ目を見開く。


「……リリア?」


リリアは地面に手をかざす。


風が、流れに溶ける。


「……ここ、ズレてる」


乱れの中心。


そこに、風を重ねる。


押さない。


導く。


――ざわり


そして。


流れが、変わる。


完全ではない。


一瞬だけ、かみ合った。


「今!!」


アランが反応する。


光を重ねる。


リリアの風に。


魔脈に。


三つが、重なる。


一瞬の均衡。


そして。


――ピタリ


流れが、止まった。


静寂。


崩れかけていた斜面が、かろうじて止まる。


土砂が、動きを止める。


「……はぁ……っ」


リリアが膝をつく。


呼吸が荒い。


アランも、その場に立ったまま動かない。


数秒。


完全な静けさ。


やがて。


「……助かった」


アランが、小さく呟いた。


リリアは顔を上げる。


その目には、はっきりと怒りがあった。


「助かった、じゃないわよ」


静かな声。


だが、強い。


「死ぬところだった」


アランは、何も言わない。


その沈黙に、リリアは一歩近づく。


「……何してるの?」


「こんな危ないこと」


その言葉にアランは、ゆっくりと答えた。


「……触れてる」


短い一言。


だが、その意味は重い。


リリアの胸が、強く鳴る。


(やっぱり)


この人は、もう――


普通の魔法の領域にいない。


風が、再び吹いた。


だがその風は。


さっきまでとは違っていた。


どこか、噛み合っている。


「……一人でやらないで」


リリアが、静かに言う。


「無理だから」


その言葉に。


アランは、ほんのわずかに笑った。



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