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最強だと思った光魔法ですが習得が難しいです! ~魔法至上の国でダンジョンに挑む公爵家の落ちこぼれ~  作者: 空木 輝斗


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第181話:干渉訓練 魔脈に触れる

朝の山は、静かだった。


霧が薄く立ち込め、空気が湿っている。


アランはガルドの後ろを歩いていた。


足場は悪い。


岩肌が露出し、木の根が絡み合っている。


「……どこまで行くんだ」


「もうすぐだ」


ガルドは振り返らない。


そのまま進み続ける。


やがて。


開けた場所に出た。


そこには――何もない。


岩と土。


ただそれだけの場所。


だが。


「ここだ」


ガルドが足を止めた。


アランは周囲を見渡す。


「……普通の山だろ」


「そう見えるだけだ」


ガルドは地面を軽く踏む。


コツン、と乾いた音。


「感じろ」


「え?」


「光を出すな」


「見るな」


「触れろ」


短い言葉。


だが、意味は重い。


アランは眉をひそめながら、目を閉じる。


呼吸を整える。


昨日と同じように。


意識を内側へ。


胸の奥。


小さな光。


それを――崩さないように保つ。


(……よし)


安定している。


昨日よりも、少しだけ自然に保てる。


その状態のまま。


意識を外へ広げる。


ゆっくりと慎重に。


――何もない。


ただの空気。


ただの土。


(……違う)


何かある。


だが、分からない。


「止まるな」


ガルドの声。


「感じようとするな」


「合わせろ」


アランはわずかに息を止める。


(合わせる……?)


考えるな。


感じるな。


――同じになる。


その言葉が、ふと浮かぶ。


アランは、自分の中の光を“広げない”。


逆に“薄める”。


存在を、ぼかす。


境界を、曖昧にする。


その瞬間。


――ざわり。


何かが、触れた。


いや。


自分が、触れたのではない。


“重なった”。


(……これ、は)


流れ。


地面の奥を、ゆっくりと流れる何か。


目には見えない。


だが、確かに“動いている”。


水ではない。


風でもない。


魔力。


だが。


今まで感じていた魔力とは違う。


もっと――広い。


もっと――深い。


「それが魔脈だ」


ガルドの声が、すぐ近くで響く。


アランは目を開ける。


「……これが」


「帝国の土台だ」


ガルドはしゃがみ込み、地面に手を置く。


「街も、ダンジョンも、魔物も」


「全部、これに引っ張られる」


アランは息を呑む。


確かに感じる。


流れ。


方向。


強弱。


そして――


わずかな“乱れ”。


「……ここ、少し変じゃないか」


ガルドが、ニヤリと笑う。


「気づいたか」


「だからここに来た」


アランは再び目を閉じる。


魔脈に意識を合わせる。


さっきより、はっきりと分かる。


流れが歪んでいる。


一部だけ、引っかかるように滞っている。


「……これを、どうする」


「整えてみろ」


ガルドはあっさり言った。


「は?」


「干渉だ」


「お前の光で、“流れ”を触れ」


アランの喉が、わずかに動く。


(触れる……)


昨日の光。


まだ小さい。


弱い。


だが。


“ある”。


アランはゆっくりと、その光を外へ向ける。


押し出さない。


ぶつけない。


ただ――


重ねる。


魔脈の流れに、そっと。


触れる。


その瞬間。


――ドンッ。


衝撃。


地面が震えた。


「なっ――!?」


魔脈が、暴れた。


さっきまでの穏やかな流れが、一気に荒れる。


押し返される。


いや。


飲み込まれる。


(強すぎる――!)


アランの意識が引きずられる。


光が、崩れそうになる。


「離れるな!!」


ガルドの怒鳴り声。


「押すな!!」


「整えろ!!」


アランは歯を食いしばる。


(押してない……!)


(ただ触れただけだ!)


だが、違う。


触れただけでも――影響する。


魔脈は、敏感だ。


(……なら)


アランは、光をさらに“弱める”。


薄く。


細く。


流れに逆らわない。


“合わせる”。


その瞬間。


暴れていた魔脈が、わずかに落ち着いた。


「……っ」


まだ荒れている。


だが。


さっきよりも、穏やかだ。


アランは、さらに慎重に。


乱れている部分に、光を重ねる。


押さない。


引かない。


ただ――


“揃える”。


流れと、同じ方向に。


同じ速さに。


同じリズムに。


数秒。


やがて。


魔脈は、静かになった。


完全ではない。


だが。


さっきより、明らかに整っている。


アランは、その場に膝をついた。


「はあ……っ」


全身から汗が噴き出る。


呼吸が荒い。


「……今のが」


ガルドが、ゆっくりと歩み寄る。


「干渉だ」


「……こんなの……戦闘でやるのかよ」


「やるな」


即答だった。


アランが顔を上げる。


「死ぬぞ」


ガルドは淡々と言う。


「今のお前じゃな」


そして、少しだけ笑った。


「だが、できたな」


アランは、地面を見る。


さっきまで感じていた“乱れ”は、弱まっている。


完全ではない。


だが。


確かに変わった。


(俺が……変えた)


その実感が、ゆっくりと胸に落ちる。


「……これが」


「世界に触るってことか」


ガルドは頷く。


「やっと入口だ」


「ここから先は――もっと面白くなる」


その言葉に。


アランは、静かに拳を握った。


光は、小さい。


確かに――


世界に届いた。


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