第156話:第三層後半 分かたれる光
回廊は崩れた。
水晶が砕け、床は黒と白に分断される。
その中央に、少年が立っている。
「君は、まだ分かっていない」
闇がゆっくりと収束する。
少年の背後に、巨大な影が立ち上がる。
選定の象徴を歪ませた、王冠のような闇。
統率個体を超えている。
これは、層そのもの。
「選ばれなかった側の重さを」
闇が走る。
地面が割れ、黒い刃が無数に伸びる。
アランは踏み込む。
《ホーリードライブ》。
光が身体を包む。
速度を上げる。
だが闇は速い。
刃が左肩を裂く。
血が滲む。
《リカバー》で即座に循環安定。
しかし少年は止まらない。
「君は、選ばれた光だ」
黒い紋様が回廊全体を覆う。
水晶の残骸が浮かび、闇へと吸収される。
「ここでは、僕が正しい」
闇が一気に圧縮される。
空間が歪む。
圧殺型。
このままでは押し潰される。
アランは槍を強く握る。
(壊すんじゃない)
(切り分ける)
闇は巨大すぎる。
ならば、分ける。
整理する。
その瞬間、光が槍の内部で脈打った。
今までの光とは違う。
線。
一本の、極細の光。
「……そうか」
アランは静かに呟く。
「混ざってるから、重いんだ」
闇は歪みを“集約”している。
ならば――
分断する。
槍を構える。
深く息を吸う。
「《ホーリー・ディバイド》」
光が、一本の縦線になる。
爆発ではない。
広域浄化でもない。
ただの、断線。
空間を縫うように、細く、鋭く走る。
闇へ届く。
少年の瞳が、わずかに見開かれる。
光線は、闇の塊を真っ二つにする。
破壊ではない。
分離。
絡み合っていた歪みが、強制的に切り離される。
統率構造が崩れる。
回廊が震える。
闇が初めて、乱れた。
少年の肩が裂ける。
血が、出る。
今度は闇で補填できない。
「……っ」
初めて、苦痛の表情。
「君……!」
アランは踏み込む。
《ルミナエッジ》。
近接で斬る。
闇の外殻が削れる。
少年が後退する。
回廊の構造が揺らぐ。
「分けるのか」
少年が低く言う。
「僕を、分けるのか」
「違う」
アランは答える。
「混ざりすぎたものを、切り分けるだけだ」
闇がさらに揺らぐ。
第三層の核が露出する。
水晶の中心に、黒い結晶。
少年はそれに触れる。
「ここまでか」
闇が一気に収束する。
崩壊ではない。
撤退。
空間が割れる。
「君は、帝国とは違う」
少年の声が、薄れる。
「でも――」
血が滴る。
「僕の体系を壊すなら、敵だ」
闇が消える。
第三層の構造が崩れ、静止する。
沈黙。
アランは膝をつく。
肩から血が流れる。
だが。
確かに届いた。
初めて。
「……次は、もっと深いな」
第三層は半決着。
少年は負傷。
撤退。
だが敵意は確定。
光は、闇を“分けた”。




