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第113話:闇は名を持たず

アランは、魔力ポーションによって呼び覚まされた記憶の流れの中で、

さらに古い光景を思い出していた。


10歳。

選定の儀式。


(あの時は……本当に、めちゃくちゃだったな……)


だが、それと同時に、

胸の奥に引っかかる“違和感”があった。


――自分の後に、水晶へ手を伸ばした、あの少年。




最後の一人が水晶に手を置く。


「属性は闇。魔力量は……半分以下」


再びざわめきが走る。少年は震えながらも必死に叫ぶ。


「ま、魔力はありませんが、闇は大変貴重な属性です! 必ずお役に――」


その言葉を遮るように、ガルシアの怒号が響き渡った。


「珍しいだけで価値があるか! 下がれ、このクズが!」


「そ、そんな……! た、助けてくれぇぇぇーーッ!」


屈強な従者たちに両脇を抱えられ、連れ去られる少年。




記憶が、そこで途切れる。


アランは、無意識に拳を握っていた。


「……なあ、セルジオ」


執事は、静かに応じる。


「選定の儀式のときに、

失格になった闇属性のやつがいただろ」

あいつ、その後どうなった?」


セルジオは、すぐには答えなかった。

その沈黙が、逆に答えを含んでいるように思えた。


「……公式には、行方不明です」


「公式には?」


「保護記録も、再選定の記録も残っておりません。

ただ、当時……いくつかの部署が動いた形跡はあります」


アランの眉が、わずかに動く。


「部署?」


「研究部門です。

それ以上は、私の立場では確認できません」


沈黙が落ちる。


アランの脳裏に、山脈の異変が浮かぶ。

律が歪み、溜まり、噴き出した現象。


(光は……律に触れられる

じゃあ……闇は?)


「……そもそも、闇ってなんなんだ?」


セルジオは、言葉を選ぶように口を開いた。


「闇属性は、帝国では長らく“扱えない属性”とされてきました」


「危険だから?」


「いいえ。

正確には……“説明できない”からです」


アランは、視線を上げる。


「何に効くのか、

どこへ向かうのか、

結果が再現されず、

闇は、作用がはっきりしないのです」


セルジオは、そこで一度言葉を切った。


「帝国は、“結果を管理できない力”を嫌います」


「だから、闇は禁忌になった」


アランは、静かに考える。


(管理できない。

説明できない。

でも……存在はしている)


「……律との関係は?」


思わず出た言葉だった。


セルジオは、わずかに目を伏せる。


「分かりません」


はっきりとした否定でも、肯定でもない。


「少なくとも公式理論では、

闇と律を結びつける記述はありません」



山核主。

名を持たぬまま歪んだ存在。


(もし……、

もし、誰かが……)


アランは、光導槍に触れた。


導かれない。

だが、拒まれもしない。


「……光が律に触れられるなら」


それは、まだ仮説にすぎない。


「闇は、触れられなかったものに……

近づいていたのかもしれないな」


セルジオは、何も言わなかった。

だが、その沈黙は、否定ではなかった。


謎は、まだ輪郭を持たない。


だが――

誰かが、律の歪みを集めていた可能性”だけが、

静かに浮かび上がっていた。



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