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第108話:序列の牙 測れない者への違和感

応用課程・第二演習日。


前日の評価結果は、

すでに生徒たちの間に広がっていた。


評価不能。

体系未定義。

説明不能な安定化事例。


どれも、

「優秀」とは書かれていない。

だが――

「無視できない」とは、誰もが感じていた。


演習室の隅。


数名の生徒が、明らかにアランを視界に入れながら話している。


「評価不能って、要するに逃げだろ」

「理論を語れないなら、応用課程にいる意味がない」


別の声が重なる。


「光属性だぞ?

結局、基礎止まりの属性だ」

「たまたま、異変に居合わせただけだろ」


アランは聞こえていないふりをしていた。


正確には――

聞いても、意味を持たせていなかった。


(……来るな)


腰の光導槍が、わずかに静まっている。


導きではない。

警告でもない。


ただ、

“人の感情が集まり始めている”という感触。


そのとき、

一人の生徒が、はっきりと前へ出てきた。


金髪。

貴族派の中でも、中心にいる顔だ。


「アラン・ルクレディア」


呼び捨て。


教室の視線が、二人に集まる。


「昨日の演習、見ていた。

確かに、面白かったよ」


一拍置いて、続ける。


「だが――

応用課程は、成果を競う場所だ。

“変化を起こさない”魔法は、評価できない」


アランは、相手を見た。


「だから?」


その短い返答に、

周囲がざわつく。


金髪の生徒は、薄く笑った。


「次の実技試験。

対人想定演習だ」


「そこで、はっきりさせよう。

光が、ここに立つ資格を持つかどうかを」


挑戦。

だが、形式は整っている。


教師が介入する理由はない。


リリアが、少しだけ前に出かけて――止まる。


(……ここは、彼の問題)


アランは、すぐには答えなかった。


光導槍は、沈黙したまま。


やがて、静かに言う。


「分かった。

ただし――」


相手が眉を上げる。


「勝ち負けは、基準にならない」


「俺は、壊さない。

奪わない。

それでも――立っている」


金髪の生徒は、一瞬だけ言葉を失い、

すぐに鼻で笑った。


「強がりに聞こえるな。

だが、いい。

逃げないだけ、評価してやる」


そのまま、背を向けて去っていく。


周囲の生徒たちが、ざわざわと動き出す。


「対人演習だって?」

「光が相手とか、楽勝じゃないか」


「いや……」

「昨日の安定化、見ただろ」


評価は、割れていた。


廊下に出たところで、

リリアがアランに声をかける。


「……狙われたわね」


アランは、短く頷く。


「想定内だ」


「怖くないの?」


その問いに、アランは少し考えてから答えた。


「怖いよ。

でも――」


一歩、前を見る。


「ここで引いたら

俺は、また“説明できない側”に戻る」


リリアは、静かに息を吐いた。


「応用課程は、容赦しない。

あなたのやり方は、誤解されやすい」


「うん」


アランは、はっきり言った。


「だから、誤解されたまま進む」


光導槍が、かすかに震える。


導きではない。

拒絶でもない。


ただ、

“選択を見届ける”ような静けさ。


対人想定演習。


応用課程における、

最初の公開試験。


ここで問われるのは、

魔力量でも、破壊力でもない。


――存在の、説得力。


光は、

まだ理解されていない。


だが、

理解されないまま立つ覚悟だけは、

すでに揺らいでいなかった。


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