第101話:初閃 光の脈動
白銀の静寂が、音もなく揺らいだ。
名を得た槍──《光導槍》は、アランの手の内で微かに震え続ける。
揺れではない。
“脈動”だ。
鼓動と同じリズムで、光が淡く点滅する。
(……繋がっている)
握り直した瞬間、指先まで律が染み込むようだった。
これは力ではない。
所有でも支配でもない。
共鳴。
前へ、一歩。
白銀の床がたわみ、道が生まれる。
先へ進め──
そう言っているのではなかった。
“どこへ進むのかを、決めろ”
そう問いかけられていた。
アランは足を止めず、ただ静かに呟く。
「俺は……“選ぶ”」
それが、答えだった。
外界。
裂け目の前で、リリアは拳を握りしめていた。
「見えているのに……届かない」
レオンハルトが静かに答える。
「届かせるのは、アラン自身だ」
ダリオも視線を逸らさず言う。
「核主は、まだ終わりを宣言していない。
つまり、これは──途中だ」
リリアの睫毛が震える。
「……信じるしか、ないのね」
内界。
白銀の空洞が変化し始めた。
色が滲み、影が現れ、音が生まれる。
それは──“主”の変化。
山核主の巨躯が、ゆっくりと上を向いた。
その眼光は、今度こそ“アランを見る”ための視線だった。
――お前の選びは、本物か。
声ではなく、空間そのものが響く。
アランは槍を構える。
攻撃ではない。
宣誓のように、胸元の高さに。
「俺は──壊すためじゃなく」
息。
言葉。
意図。
それが一直線に、槍へ流れ込む。
「“在ることを肯定する光”を選ぶ」
瞬間。
光導槍が、初めて自ら動いた。
握る手を振る前に──
光が、走った。
鋭い閃光が一直線に伸び、白銀の壁に触れた瞬間、
世界が──“ひらく”。
円形状に裂けるその光景は、まるで門がひとりでに開いたようだった。
(……道を、示した?)
導く光ではない。
強制する光でもない。
ただ──
“選んだ方向へ、通路を生む光”。
アランは唇を噛む。
(これが……俺たちの力)
(借り物ではない、俺と槍と、この地が結んだ光)
山核主の眼が細められる。
そこには、もう問いはなかった。
代わりに生まれたもの。
――期待。
アランは、開いた“門”を見据え、静かに歩き出した。
「行こう。《光導槍》」
白銀の闇の奥へ。
その先で待つのは──
山核主の“真実”か。
それとも。
“この地が抱く恐怖の根”か。
初めての共鳴は、静かな光だけを残した。
だが、その光は確かに、次の戦いの始まりを告げていた。




