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ミナゴロシノアイカ 〜 生きるとは殺すこと 〜 【神世界転生譚:ミッドガルズ戦記】  作者: Resetter
本編

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1.49 - ゲッズ一家 【エウローン帝国 : シャルマ・鉄鋼団/ゼント3ヶ月】



 ゲッズ一家のアジトの扉を叩き、強引に開けさせたシャルマは……


 「おら、ゲッズはいるかって訊いてんだよ。さっさと答えろ。急いでんだからよ」


 すっかり腰の引けたゴロツキに、再度迫った。大声ではないが、深みのあるドスの効いた声色だ。



 「お、おかしらは奥だ……」


 「そうか。じゃあ案内してもらおうか」


 シャルマはニコリともせず、冷淡な瞳を向けていた。


 

 「……わ、わかった」


 少し後ずさりしながら、ゴロツキは奥へと半身を向ける。

 

 「おう。早くしろよ。それとも……ていねいなご挨拶がいるかぁ?」



 震えながら半身で建物奥へと案内をするゴロツキに、シャルマがせっつく。


 「い……いや、案内すっからよ、勘弁してくれ……」


 イーリは静かにその後に続く。目線は何処を見るともなく、ただ前方に向けている。だが、左手は剣の鞘に添えられていた。


 「んげっ?!アイツら……」

 「チッ……何しにきやがった」

 「クソッ……デケェツラしやがって……」


 ゲッズ一家のアジトは、それなりの広さを誇っていた。


 建物は地下室を備えた二階建てで、ボスであるゲッズは二階の最奥の大部屋にいることが多いようだ。


 

 一階の大部屋を通り抜けるシャルマたちに、その場のゴロツキたちは、ボソボソと忌々しげにこぼしている。

 

 だが、そんなゴロツキたちも、先日の一件ですっかり懲りているようだ。遠巻きに眺めるのみだった。


 


 「……シャルマ。黙らせるか?」


 「あー? 別にいいわ、あんなやつらよぉ。んなことより、やることあっからな」


 「……そうか。そうだな。あのような下衆どもを相手にするまでもないか。スラムの英雄殿」


 「おいおい、イーリまでソレ言うのかよ……」


 大部屋を抜け、薄暗い廊下を進み、階段を上りながら、シャルマとイーリはそんなことを話していた。


 

 それを背後に聞きながら、ゴロツキは青い顔を歪めた。しかしながら、歩みを止める蛮勇は持ち合わせていないようだった。


 


 「ここだ……」


 「ん」


 素直に案内したゴロツキを押しのけるようにして、シャルマは部屋のドアをバタンと開け放った。



 「ああ?! だれだぁ?! いきな――」


 いきなり扉を開け放たれたことに怒りを露わにしようとしたゲッズだったが。


 

 「よう、ゲッズ」

 

 「げっ?! シャ……シャルマ?! な、何しにきやがった……?! か、金ならもうねぇぞ?!」


 シャルマを視界に捉えた瞬間、驚愕の表情へと変わる。


 

 「あぁん? 今日は、話しがあんだよ」


 シャルマは、表情を変えることなく冷淡に吐き捨てた。


 

 その様子に、ゲッズは大きく喉を鳴らして、固唾を飲んだ。粘り気のありそうな汗も額に浮いている。


 「は、話だと……?! いまさら何だってんだ……」

 


 「ウチのモンが攫われた。ゲッズ。てめぇら、関わってねえか?」


 「攫われた……? 鉄鋼団の……ってこたぁ、ガキんちょか?」


 ゲッズは、一瞬眉を寄せる。そして、シャルマに訊き返した。


 


 「おい。俺が訊いてんだ。隠してんのか?」


 だが、シャルマはその問いに納得しなかったようだ。

 


 「いや、待て……! 動くな……!」


 一歩進もうとしたシャルマを、ゲッズは必死な声色で制止した。ハルバードの一振りで三人のゴロツキを肉塊に変えたシャルマの速さと間合いは、記憶に新しいのだ。


 「話す、知ってることはよ! ……そ、そのソファーにでも座ってくれ!」




 ゲッズの様子を無表情のままじっと見ていたシャルマだったが。

 

 「……わーった。イーリ」


 「ああ」


 小さく息を吐いて、イーリと共にソファーに腰を下ろした。


 

 それを見届け、ゲッズも対面のソファーに恐る恐る座る。


 「……んで、ガキが攫われたんだったか? 何人だ?」


 そして、シャルマを覗き込むようにして口を開いた。


 

 「……一人だ」


 「男か? 女か?」


 「女だ」


 

 「……そう……か」


 シャルマの返答に、ゲッズは考え込むような仕草をした。


 

 「この帝都で、人攫いをしてるやつらは、二件だ。そんで――」


 「そうか。どこだ? 案内しろ」


 シャルマは話半分で、即座に立ち上がろうとする。ゲッズは慌ててそれを止めた。

 

 「ま、待て! 話は最後まで聞け!」

 


 「あん? 俺は急いでんだ。モイに……アイツの身に何かあったら……ミナゴロシにすんぞ……? 裏の連中全部だ……!」


 ゆらりと立ち上がろうとしたシャルマの顔には、血管が浮いていた。

 


 「噂の話がある! まずはそれを聞け!」


 ゲッズは、シャルマの怒りを感じ、怯えた。大量の脂汗が床に染みを作る。


 だが、伝えるべきことは伝えなければ、帝都裏社会に血の雨が降り、大きな亀裂となり、最悪崩壊する。そんな未来が脳裏に浮かんだのだ。必死の形相であった。

 


 「……シャルマ。聞いておくべきではないか?」


 「わーったよ」


 シャルマは、イーリの声に応えて、再びドカッとソファーに腰を下ろした。



 「……んで? なんだって?」


 「ああ……人攫いを生業にしてるやつらはイサラ一家と、ショータン一家だ。噂くらいは知ってんだろ?」


 少し息を吐きだしながら、ゲッズはシャルマを覗き込んだ。


 

 「イサラはスラムだな。ショータンは外街か。イサラの連中がウチに手ェ出せるとは思えねぇな……」


 「だろうな。イサラは人攫いっつっても、本業でもねぇ。規模も知れてやがる。たいしたことも出来てねぇからな」


 「ショータンがやったってことか」


 シャルマの目付きが鋭くなる。

 


 「いや、やつらの規模はデケェ。帝都一の規模だ。下請(したうけ)もいるしな。確定じゃあねぇが、怪しいってやつだ」


 「けっ……デカかろーがなんだろーが、ウチに手ェ出したってんなら、徹底的にやってやるぜ」


 

 「まぁ……お前さんならそうなんだろうよ……」


 ゲッズは、自身の受けた被害を鮮明に思い出し、身震いした。



 「アジトはどこだ? 何ヶ所かあるらしいが……」


 「奴らは用心深ぇ……。ウチも敵対はしねぇがな、ズブズブの取引があるわけでもねぇ。アジトは何ヶ所かは把握してるがよ、本拠はわからねぇ……」


 「ふん……まぁ、片っ端からやるかぁ!!」


 そう言って、シャルマは勢いよく立ち上がった。



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