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ミナゴロシノアイカ 〜 生きるとは殺すこと 〜 【神世界転生譚:ミッドガルズ戦記】  作者: Resetter
本編

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1.30 - イーリとロヴン 【エウローン帝国外街 : シャルマ宅】

シャルマ回

 

 シャルマ、レイティン、イーリの3人によるゲッズ一家アジトの急襲は、それは見事にあっさりと片付いた。


 30人からなるゲッズ一家だったが、シャルマのハルバードによるミンチの量産、イーリの的確な剣撃による殲滅、レイティンのゲッズたこ殴りによって、その数が10を切ったところでゲッズは降参の意を示したのだ。


「はっはっ! 今日は儲かったなぁー! ヤツら中々貯め込んでやがったぜ!」


 ゲッズ一家アジトからの帰り道。シャルマは、ほくほく顔だった。


「いやぁ、どーせろくでもないことして貯め込んでたんじゃねぇすかー? あいつら。」


 頭の後ろで腕を組んでいたレイティンだったが……


 突如、バッとシャルマに向き直り


「あ、そうだ! 最近オーズの狩りで食うもん結構あるし、兄貴……こりゃガキどもに服……なんて買えるんじゃねぇっすか?!」


 そう言って目をキラキラさせていた。


「お! そりゃいいなー。明日ミトラにでも頼むかぁー。」


 レイティンのその提案は、シャルマに刺さったようだった。


「鉄鋼団は、いつもこんな感じなのだな……」


 そんなやり取りを聞いていたイーリは、しみじみとそう呟いた。


「ああ? そうだな。まぁ働ける組が精一杯稼いで……っても、ガキどもも出来る仕事がありゃやるぜ? だからこんな臨時収入がありゃよ、ご褒美ってやつが必要だろ? あ、そうだな。イーリにも剣でも買ってやるか! さすがの働きっぷりだったぜ! はっはっ!」


「ほ……本当にか……! 主自ら剣を……騎士冥利に尽きる……。」


 シャルマの言葉に、今度はイーリが目をキラキラさせた。


「いちいち大げさだなぁ……こりゃマズったかぁ……?」


 渋顔を作るシャルマ。


「かははは! いいじゃないっすか! あ、お母上にも紹介したらどうっすか? どーせアジトへの帰り道だし!」


「な……バカ……おま……!」


 だが、突如のレイティンの言葉に焦り顔になる。


「お母上だと? シャルマを英雄の器に育て上げたお方……是非お会いしたい!」


 そのレイティンの言葉は、イーリをもっと刺激してしまったようだ。

 イーリは手を胸の前で組んでしまっていた。


「えぇ……」


 そして、余計なこと言いやがってと言いたげな顔でレイティンを睨むシャルマだった。


 ――――

 ――


「ただいま戻りましたー」


「おかえりなさい。今日も遅かったわね。あら? お客様かしら。」


「はっ! 私、イーリ・クリーミアと申します!」


「あらあら、ずいぶんと凛としたお嬢様だこと。狭苦しいところですが、どうぞお入りになって。」


「ありがとうございます! 失礼いたします!」


 もはや軍で上官に従うような姿を見せていたイーリに、シャルマはポカンと口を開けていた。



「ささ、そちらにお掛けになって。」


「はっ! 失礼いたします!」


「……いや、イーリ、さすがに硬いわ……」


 イーリのカチカチ加減に、ついに口を挟んだシャルマ。


「あら、シャルマ。礼を尽くそうとなさってくださっているのよ? そのご厚意を無碍にするものではありません。」


「うっ……は、はい。」


「さ、イーリさんでしたわね。つまらないものしかございませんが、よろしければお召しになって。」


「はっ! ありがたく頂戴いたします!」


 やはり、イーリはカチカチだったが、ロヴンはニコニコとその様子を見ている。


「……イーリさんは、軍属……騎士さんなのかしら?」


「は……さすがのご慧眼にございます。元ではありますが……騎士でございました。」


「そう……。」


 少し遠い目をするロヴン。


「ああ、紹介が遅れましたわね。私はロヴン、と申します。」


「ロヴン様……」


 イーリは、ロヴンのただならぬ雰囲気に息を呑みつつも、その目は輝いていた。


 そしてイーリは語り出す。


「私は、死にかけていたところを、鉄鋼団に拾われまして……そして、目を覚ましたのですが……

 その、生きる目的を見失ってしまっていたのです。

 それを思い出させ……新しく与えてくれたのが、シャルマで……

 私は、シャルマのために生きると誓いました。

 そのシャルマの言葉に、ロヴン様からの教えというものがございまして……

 どうしてもお会いしたく、このような夜分に突然押しかけてしまいまして、申し訳ございません。」


 次第に熱を帯び、そして語り終えた頃には深々と頭を下げるイーリだった。


「鉄鋼団……。シャルマが何かそのようなことをしているのは、なんとなく知っております。ちゃんとひとさまのお役に立てているのですね……。」


「ロヴン様……! シャルマは間違いなく英雄の器でございます! ご謙遜なさらないでください! シャルマの理念は……かの英雄王レオナイド様に通ずるものがございます!」


「あらあら……そんな、この子が……? あの英雄王と?」


「はい!」


「そう……。皮肉なものね……才能無しとしてダグ家を追放されて……その先でそんな風に騎士のお嬢様から言っていただけるなんて……。」


「……ダグ家?! あ、あの、ヘルグリンドの……ダグ家でしょうか……?」


「あら、そうよ? この子ったら。まだお話していなかったのね。」


「……いや、タイミングが合わなかっただけですよ……」


 シャルマは2人が話し出してからというもの、終始不貞腐れたような顔をしている。


「あ、あの、ロヴン様……実はもう1つお許し頂きたいことがございまして……」


「お許し……? 何かしら……?」


 一瞬ぎくりとしたシャルマであるが、もう諦めたのか、無言でそっぽを向いてしまった。


「はい。私は、シャルマの子を産みたいと思っております。そのお許しを頂けないかと……」


 またしても深々と頭を下げるイーリ。


「……! なんということでしょう……! こんな立派なお嬢様が……あぁ……。 ……シャルマ。」


 一瞬驚きから、両手で口元を覆ったロヴンだったが、キリッとしてシャルマに向く。


「は、はい。」


「今日からイーリさんはうちで暮らします。」


「はぁ?!」


 突然のロヴンの言葉に、驚きを隠せないシャルマ。


「なんですか、その返事は。」


 だが、ロヴンの圧は、シャルマを遥かに凌駕していた。


 シャルマは呆然と沈黙した。


「さ、イーリさん。狭苦しいですが、スラムよりは幾分かは良いかと思いますわ。これから、末永くシャルマをよろしくお願いいたしますね。」


「ロ……ロヴン様……!」


「あらあら、泣かないで。」


 イーリは、器用な性格ではない。ただただ実直だ。

 誇り高きバストス王国の騎士だからだ。


 そしてその意思は、ロヴンに通じたようだった。


 こうして、シャルマとイーリは一緒に暮らすこととなった。


 シャルマはその(のち)、『あの時は完全に放心したぜ……』と、皆に語ったという。



お読みいただけまして、ありがとうございました!

今回のお話はいかがでしたか?


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また、連載のモチベーション維持向上に直結いたしますので、すぐ下にあります☆☆☆☆☆や、リアクションもお願いいたします!


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