2.4 - 聖皇騎士団 【チカーム教国 : 聖良2日目】
前回の聖良:チカーム教皇に!私はなる!
第十代教皇の座に就いた聖良。
神託を受けた者が教皇となるのは、初代ソーウ以来の事だった。
これには、自身を指名させるつもりだったローグラッハは、その目論見を潰され相当腹に据えかねるものがあったのだが……。
主要な神官達が居並び、騎士達が取り囲む場での、聖女による宣誓に、異を唱える事は叶わなかった。
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つつがなく教皇就任を認めさせ、会議を強引に終わらせた聖良は、教皇専用居室を用意させると、部屋に戻っていた。
わざわざ用意させた豪奢な寝椅子に寛ぐ聖良。
その左右傍らには、護衛騎士が侍っている。
「セラ様。教皇……いえ、聖皇即位、誠におめでたい事に存じます。」
聖良のイケメン護衛騎士の右側である。その名をゴルドといった。
「そうでしょー? 教皇になる! って言っちゃったけどさー。聖女で教皇だから、聖皇って、流行らそーかなーって、閃いちゃったからさー!」
聖良は満面の笑みである。
「我々へのご提案もお見事でございました。」
聖良の護衛騎士、左側のシルバである。
「あはー。あのオヂ、なーんか危なそーじゃん? ローグラッハだっけー。」
左右の護衛騎士はおそらく聖良の好みなのだろう。
少しでも褒められると、聖良はホスト狂いのように上機嫌だった。
「誠に御慧眼です。我々騎士団全てを、今後は聖皇様直属として頂けるという名誉……。全団員一丸となり忠節を尽くす事でしょう。」
ゴルドの大仰な身振りも、イケメンだからか聖良には刺さるようで、ニタニタとしながら見ている。
「あ、そうだ。」
「どうされました?」
何かを思い付いたらしい聖良に、シルバはいち早く反応した。
「布教のプラン変更、思い付いちゃったからー、部隊長達と神官長達呼んでよ。」
「は。早急に。」
シルバはそう言い残し、退室。
駆け足らしい足音を響かせた。
「その変更とは、どのような?」
「ふふっ……」
ゴルドの質問に、ニチャっと仄暗い笑顔を浮かべる聖良だった。
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聖良の居室へと通された面々は、少し前までその思惑をぶつけ合っていた顔ぶれである、ローグラッハ、メッシ、アナスタシア。そして、騎士団の部隊長達であった。
「お呼びという事ですが、なにか。」
口火を切ったのはアナスタシアだった。
元聖女候補だったアナスタシアは、聖女候補セラには一目置いていた。
更に言えば、好感すらも抱いていた部分すらあった。
だが、儀式以降の急激な態度の変わり様に、内心では不信感を覚えている。
ふふっと含み笑いをする聖良。
「今後の方針を考えたので〜……発表しま〜す!」
「方針ですと!!?」
ローグラッハが忌々しげに、半ば叫んだ。
そんな事は神官長達の会議で決めるのだ、と言いたいのだろう。
対して、メッシは瞑目している。
「まずは〜、えーっと、ベルデ? 報告して」
「はっ!」
聖良の声に、一人の騎士が前に出る。
「ヘルグリンド方面軍は、長年をかけておりますが、現状の兵力ではダグ家に及ばず、これ以上の侵攻は難しいと思われます!」
「はい。次、えーっとエレミヤ旧領……は? 誰?」
聖良は、書類のようなものに目を落としながら続ける。
「はっ! ロッソにございます! エレミヤ旧領は、ジャンロ殿との協力により、抵抗勢力は陰りを見せております!」
「はい。次、バストス王国。」
「はっ! ブルでございます! バストス王国もまた、抵抗激しく、攻めきれておりません!」
「……はい、次。ミリョーヒ王国。」
「ネロ……でございます。ミリョーヒは国境が隣接しておりませんので、斥候を放ち、工作しております……。」
「はい。エウローン帝国は?」
「私、ビアンコでございます。ネロ殿のように、工作員を放っております。」
「はい。他、帝国って傘下の国あったよね? それは?」
聖良のその問いに、前に出たのはゴルドだった。
「恐れながら私がお答えいたします。ユーダリル、ナーストロンドに関しましては、他国を挟んでおる事、兵数の問題などから、軍事的な行動は取れておりません。」
「はい。……で、なんなのこれ。全く成果上がってなくない?」
「面目次第も御座いません。」
深々と頭を垂れるゴルド。
「で? 神官長様方? 今まで何してたの?」
瞑目したままのメッシ、真顔で聖良を見詰めるアナスタシア、苦虫を噛み潰したようなローグラッハ。
「ね? 方針変えなきゃでしょ? わかった?」
聖良は、渾身のドヤ顔を決めた。
「ぐっ……」
悔しそうなローグラッハは、"ぐ"の音まで漏らしてしまったが、"う"は耐えた。
「戦力的には、バストス王国に集中ね。他は工作員くらい残せばいいから。その代わり、神官を派遣ね〜」
「……はっ? 神官ですと?!」
糸目のローグラッハが、その目をこれでもかと見開いた。
つぶらな瞳である。
「そうそう。人事異動。配置転換。分かるかなぁ?
アナスタシアさ〜ん。聖女候補って、15歳過ぎるとどうなるんだっけ? そのオヂに教えてやってくださいよぉ〜」
話を振られたアナスタシア。どうやら何かを察した様だ。
「……我々の様な元聖女候補はたくさんおりますが、候補達は皆15歳を迎えると、教巡に向かいます。
……我々の派閥では、一人一人に護衛としてローザ殿の部隊から女兵を借り受けておりましたが、基本的には独力でとなっていました。」
「うん。……で?」
「任期が決まっている訳ではありませんし、通常は支援もありません。帰って来られる者は僅かです。」
「うんうん。だよねー。ひどいよねー。」
聖良は、わざとらしく頷く。
「ね? ほら。これまたあんまり意味無いじゃん。と? ゆーワケで〜? メッシさん達はミリョーヒで布教。ローグラッハさんはエレミヤね〜! ちゃんと自分のトコ全員でね〜?」
何やら考え込んでいたメッシだったが、
「……ふむ。そういう事ならば、止むを得ませんな。やってみましょう。」
と、カッと目を見開いた。
(わぉ。メッシさんギンギンだー。)
などと暢気な聖良だったが、金切気味の怒声が飛んできた。
「せっ……せっ……拙官にまで! 行けと申されるかっ?!」
「うっさ……耳痛いんだけど?」
「な……な……な……なぁぁあ」
最早言葉にもならないくらいに激昂しているローグラッハである。
顔色がニホンザルに近いものとなっている。
ヤカンをかけたら沸くのかも知れない。
「ちょ、もーウザイからアレ、出して。ゴルドー」
「はっ」
命じられたゴルドは、ローグラッハを羽交い締めにして引き摺る。
「こ……この……! ごっ護衛騎士風情がぁ……! 拙官はッ神官長なるぞッ! 無礼なー! 離せっ! 離さんかっ! くぅーっ! おのれ……セラぁあァァ!! ここまで育てた恩をぉお! 仇で返すの…――」
バタンと扉が閉まる。
重厚な扉は防音性能も高い様で、何となく声は聞こえども、内容は分からない。
「はぁ〜? 恩? 知るかっての。」
やれやれといった様子で肩を竦める聖良。
「あ、そうだ。アナスタシアさんは、事務と経理ね。よろしく〜」
「は……はぁ……。承知……いたしました。」
呆気にとられるアナスタシアは、少し気の抜けた返事をする。
「あ、そうそう。新しい騎士団の旗作んないとねー。聖皇騎士団。かっこいいのがいいなー。うんうん。」
聖良は満足そうに何度も頷いていた。




