表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/56

幸せな、やり直し結婚式

完結です。

お付き合いいただき、ありがとうございました!

 眩しい朝の光で目を開けた。見慣れたカーテンに、見慣れた天井。そして私の隣には、見慣れたアンドレ様の寝顔。


 (今日も相変わらず美しいです……)


 思わず見惚れていると、ぎゅっと抱きしめられる。そして唇を塞がれ、ベッドに押し付けられた。


「だ、駄目です!もう朝です!! 」


 慌ててアンドレ様を押し除けてベッドから抜け出そうとするが、ぎゅうぎゅうに抱きしめられて動かすことが出来ない。


「駄目だ。……君が可愛いから悪い」


 (ちょ、ちょっと待って!!

 こんな甘い時間、聞いてないのですが!! )


 



 あれから約三ヶ月が経った。私はこうして、アンドレ様と最高に幸せな日々を送っている。

 アンドレ様に押し倒され、あちこちに口付けされるなかで必死に言った。


「何をおっしゃるのですか?

 今日はこれから式だというのに」


 それでようやくアンドレ様が唇を離す。


「式、辞めようか」


「辞めません!もとはといえば、アンドレ様が結婚式をやり直すなんて言われるからでしょう!? 」


 私の言葉にしゅんとして上体を起こすアンドレ様。その剥き出しの体にくらくらして、思わず視線を逸らした。


 そう。今日はこんな時間まで眠っていたが、実は結婚式のやり直しなのだ。私が嫁いできた時に散々な結婚式を開いたため、それを後悔しているアンドレ様が提案してくださったのだ。私はやり直しだなんて望んでいなかったが、アンドレ様がやり直さないと気が済まないらしい。


 こうして寝室から出ると、笑顔のマリーとヴェラに捕まって、あれよあれよという間に支度をされた。


 髪を編みながら、マリーがぼやく。


「まさか、将軍の溺愛がここまで爆発するとは思ってもいませんでした」


「私も思ってもいませんでした」


 私も釣られてそう答えていた。


 今やアンドレ様の溺愛は、酷いものになっていた。冷酷将軍の名残りもなく、館に帰ってきては私を愛でるのに忙しい。食事の時は隣にべったり座るし、何なら食べさせてまでくれる。館の中を歩く時も、背後霊のようについてくる。そんなアンドレ様を、館の人々が生暖かい目で見て笑っているのを私は知っている。館の人たちもいつの間にか、アンドレ様を子供のように扱うようになってしまった。


 だが、アンドレ様も不安なのだろう。私がいつか死んでしまうのではないかと。その気持ちも理解出来るため、甘んじてその溺愛を受け入れていた。


 アンドレ様も家ではその様子だが、一歩外へ出るといつもの冷酷……いや、冷静な将軍に戻っている。仕事は今まで以上にこなすようになったし、人柄も丸くなったと評価は上々だ。





 支度を終えると、外には豪華な馬車が停まっている。アンドレ様の姿はもうなく、執事長が私の手を取って馬車に乗せてくれる。


「行ってらっしゃいませ」


 執事長は笑顔で頭を下げる。


「将軍がリア様を待っていると駄々を捏ねていましたが、煩いので先に会場へ送っています。

 リア様のご家族ご友人も、もう到着されているようですよ」


「ありがとうございます!」


 私は笑顔で頭を下げ、馬車に乗った。そして豪華な馬車はゆっくりと街中を走り、大聖堂へと向かった。




 青い空の下、聳え立つ大聖堂。初めてここへ来た日は、不安と絶望でいっぱいだった。この大聖堂はあの時と何ら変わりないが、私を取り巻く環境は大きく変わっている。アンドレ様をはじめとする大好きな人々に囲まれて、私は今人生で一番幸せだ。


「リア、本当におめでとう」


 出迎えてくれたお父様は、式が始まっていないのにもう目にハンカチを当てている。そんなお父様、うちにはお金なんてないのに、豪華な一張羅を着ている。驚いてそのスーツを見るが……


「リアのおかげだよ。

 お母さんの植物をシャンドリー王国が信じられない値で買い取ってくれるから、うちは一気に潤った。

 おまけに、リアが時々開く演奏会で入るお金は、アンドレ様が全額うちに入れてくださっている」


「シャンドリー王国は、物価が高いですからね」


 私はなにも、アンドレ様とお金のために結婚したわけではない。……いや、はじめはそうだった。だが、今は愛し愛され、アンドレ様以外の人は考えられないほどだ。


「さあ、結婚式の始まりだよ」


 お父様の声に頷き、私はその腕に手をかける。開かれたバージンロードの横には、たくさんのお客様が座っている。左側はアンドレ様の友人や関係者。威厳のある騎士たちがほとんどだ。そしてなんと、国王陛下やマリアンネ殿下、ルイーズ殿下だっていらっしゃる。対して右側は……アンドレ様のお客様に勝るとも劣らない数の、私の大切な人たち。市場で会うおばさんや、幼馴染の友達、私を慕ってくれていた少年とその家族。そして、最前列には立派なドレスを着たお母様と、これまた立派なスーツ姿のお兄様。皆を見て、涙が溢れるのを必死で我慢した。


 (呼べる人が少ないと言ったのに、アンドレ様がこんなにも集めてくださったのですね。

 そして、皆、はるばる遠方から来てくださったのですね)


 そして前方には、純白のタキシードを着たアンドレ様。頬を染めて嬉しそうに私を見ている。


「綺麗だ、リア」


 (何を言われるの?

 アンドレ様のほうが数万倍綺麗です)


「俺と結婚してくれて、ありがとう」


「いえ、それは私の台詞です」


「いやいや、俺の台詞だ」


「いえいえいえ……」


 こほんと司祭が咳をする。それで、会場にどっと笑いが湧き起こる。何だか将軍の結婚式に相応しくない、緩い雰囲気の結婚式になってしまったが……それはそれで私らしくていいと思った。


 私はこうして、今世最大級の幸せを手に入れた。このままずっと愛する人と、幸せに暮らしていきたい。




いつも読んでくださって、ありがとうございます。


長いお話ですが、無事完結することが出来ました。

二人が幸せになれて良かったです。

読むのも大変だと思いますが、読んでくださって本当に嬉しいです。

ありがとうございました!


気に入っていただけたら、ブックマークと評価をしていただけると嬉しいです!

とても励みになっています!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ