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6 襲撃者

「……っ?! な、なんだなんだ!? あんたたち誰だよ!」


 そう有野は問いかけるのに対し、スーツ姿の男は一言、


「ここにあるはずの機械を調べさせてもらう」


 有野の馬鹿みたいな反応。桜井の目を見開いた反応。あの夢と全く同じだ。

 そして俺自身も口を大きく開けて驚く他なかった。

 そうしていたってスーツ姿の奴らは待ってはくれず、目で合図しあって捜索を始めた。


「ち、ちょっと待てよ! あんたらなんんだよ!」

「動くな!」

「ヒイッ!」


 ただ男が怒鳴っただけなのにものすごい威圧感があった。

 手元に銃があればきっと今頃有野は撃たれているところだろう。

 と、そんな事を焦りながらも考えていると、桜井が耳打ちしてきた。


「おい杉田……。あれを付けて逃げろ」

「は? 馬鹿言うなよ」

「今あれを調べれるのはまずい。そう思わないか」


 確かに。もしかしたら何らかの法律に引っ掛かっている可能性もあるし、それに俺はニュースのことを思い出していた。

 あれも関係してるかもしれない。


「それに奴らはどうやら近くにある機械が飛行装置だと分かっていないようだし。とにかく、私が外に誘導する。だからお前は急いで飛べ」

「……分かった」


 今は口論する時ではないと俺も理解していたので、もう何も言わなかった。


「おい、私が案内するから着いてこい」


 こんな図々しい態度でこの人たちは従うのか?


「……」

「……」


 思った通り、スーツ姿の奴らは顔を見合わせとても怪しがっていた。

 流石にこんな提案に二つ返事で了承する間抜けはいないか。

 そう思った時だった。


「あの、私が残ってこの人を監視しておきますので」


 突然そう声を上げた人がいた。

 声もそうだが、見ればその人は女性だった。

 あれ? この人どこかで……。いや、そんなことよりなぜ俺だけなんだ? 普通に考えて全員連れて行けばいいじゃないか。

 全く意味がわからなかったが、その女性の提案に他の人たちは顔を見合わせたものの、特に問題はないと判断したのだろうか。すぐに返事が来た。


「分かった。ここはお前に任せる」

「はい」


 そう言うとスーツ姿の人たちは桜井と有野に着いて行き庭に向かっていった。

 俺と、そのスーツ姿の女性だけが部屋で二人になると、突然、その女性は「あの」と話しかけてきた。


「早くした方が良いんじゃないですか?」

「……あ、ああ」


 い、一体この人は何なんだ? 敵──なんだよな……。奴らの中の一人なんだからそのはずだ……。けど、今は何故か妨害とか襲うとかするのとは逆に逃げるよう勧めている……。一体何なんだよ!

 頭はめちゃくちゃこんがらがっている。が、今はとにかくあいつらが作ってくれた時間を無駄にしないようにすることが最優先だ。

 今は早く飛ぶことに集中しよう。


 いつもよりも急いで飛び上がる準備を済ませ、表の玄関から道路に出て飛行装置のスイッチを入れた。

 大きな音が鳴り響く中、俺はスーツ姿な女性に話しかける。


「あ、あの、一応俺にやられたってことにしておいた方が良いと思うので、倒れておいてください!」

「はい。わかりました!」


 音がうるさいもののどうやら声は聞こえたようだ。

 それにしてもなぜこの人は協力してくれたのか、それは疑問のままだった。

 スーツ姿の女性はその場で膝をつき、何か強い打撃を食らったかのように倒れた。

 この人結構演技派だな……。

 

 さて、数センチほど飛び上がったところで、流石に他の人たちにこの爆音が聞こえないわけがなく、二人のスーツ姿の奴らが急いで表に出てきた。が、もう遅い。

 俺はさらに加速して上昇していった。


「クソッ! やられたっ!」

「おい長原(ながはら)、大丈夫かっ」


 一人の男は俺に叫んでいるが、もう片方の男はあの女性に話しかけていた。

 その後ろから例のテーザー銃を構えた桜井と、謎に余裕そうなドヤ顔を見せる有野がゆっくりと近寄ってきた。

 それに気づいた二人の男は舌打ちをして、今にも殴りかかりそうな殺気立った目つきで二人を見る。


「ヒッ! ど、どうするよ桜井っ」

「ふぅ。仕方ない。どうやら分からせるしかないようだな」


 そう言うと、桜井は何故か有野に向けてテーザー銃を撃ち放った。


「ぐぎゃぁぁ! あ、あんた仲間じゃないんすか……!」

「これをお前たちも食らいたいなら来るが良い」


 そう言い放つと、男たちはお互い目配せで会話をし、ほんの数秒ほどで方針が決まったのか、倒れ込んだ長原と共に退散していった。


「行ったか」

「あの、僕の犠牲って必要だったんすかね……」

「ん? まあ脅すにはちょうど良いものだったんだ。そんな事よりあいつはどこに行ったんだ?」

「そんな事よりって何だよ! 僕はあの時ものすごく痛い目にあったんだぞ?!」

「うるさいやつだなぁ。もう何度も食らったんだから慣れただろう」


 桜井は顔を見れば、本当に鬱陶しく思っているんだということがよく分かった。

 そこまで開き直られてしまえば有野も諦めるしかなかった。


「ううっ。そうだな。あいつどこ行ったんだろうな……」


 そう軽く泣きながら返事をした。


 その頃、杉田は自宅に向かっていた。

 どこか森の中にでも逃げようと思ったのだが、考えてみれば森の中は木々が生い茂っているので危ないのではないかと考え、考えた末に自宅に行くことにしたのだ。


「しかし……まさか、ここら辺が田舎であることに感謝する時が来るとはな……」


 そう。ここら近辺が田舎であるが故に田園地帯がある程度存在し、他にあるのが住宅地くらいだったので目撃者を作らずに済んだのだ。


「もし都会だったら携帯を向けられまくってるんだろうな……」


 そんな事を呟きながら自宅の庭に着陸した。

 幸い母は仕事に出てしまっているので家には一人だった。

 俺はこれからどうしようかと考えながらひとまず飛行装置を外し、家に上がったところで腕時計を一瞥する。

 その時計は昼過ぎを指していた。

 それを見た瞬間、冷や汗が出てきた。


「や、やっべぇ……! あと十分で授業じゃねぇかっ!」


 すぐに自室に駆け込み鞄を持ち、再び廊下に出る。


「くそっ。このままじゃ間に合わねぇ! どうする!」


 限界まで脳を回転させ、行き着いた答えが一つだけあった。

 それは、俺がさっきまで使っていた──飛行装置だ。

 あれなら──きっと間に合う!

 そう思い立つと、すぐに庭に出て鞄をお腹側に背負い込み、背中には飛行装置を背負い込み、腕にも飛行装置を取り付けすぐに起動させた。

 側から見れば一体どんな罰ゲームだよと言いたくなるような見た目をしているが、今の彼はただ遅刻しないようにすることに必死だった。


 再び轟音を響かせながら地上を離れた。

 今度はそれほど高度を上げる必要性はない。が、代わりに最大出力で目的地に移動した。

 時速100キロ前後で移動しているとはいえ、流石に今回は目撃者が出てしまうかもしれないな……。


 飛ばす事約六分。余裕で大学に間に合った。

 が、ここで一つ問題が発生してしまった。


「やべ。これどこに置いとけば良いんだ?」


 駐輪場──は流石にダメだよな。駐車場も却下だ。となると……あそこしかないか。


 もう一度飛び上がり、その場所まで超低空飛行で目的の部屋の前まで来た。

 慎重に窓枠から室内に入り込んだところでやっと一安心できた。


「ふうっ。ここなら安全だな」


 そう。ここは大学内で唯一ゴツゴツしててメカメカしいものがあっても不審がられない場所。

 社会生活向上会とかいう意味不明なサークルの部屋だった。

 飛行装置を一式そこに置くと、すぐに授業がある場所に向かった。

 それから講義を受け、夕方ごろになりやっと終わり、サークルの部屋に戻ってくると、そこには桜井と、それに有野も待機していた。


「え、なんで有野がここに?」

「僕もここに通ってんだよ。と言うかそんなのはどうでも良いよ! それよりもどうしてここにこれがあるのさ!」


 そう叫びながら、ピッと飛行装置に指を指す。

 まあ流石に勝手にこんなところに持ってきたのはまずかったな……。


「すまんな。ここなら安全だと思ったんだ」

「う、まあ確かに大学内だったら下手に動けないしね……」

「それに遅刻しそうだったから」

「納得しかけた僕がバカだったよ!」

「そんな事より今はもっと話し合うことがあるだろう」


 そう言って俺たちに桜井はなんたらレールガンを向けてきた。

 どうやらここでの力関係はとてもはっきり分かるようだ。


「え、それ本物?」

「ああ。なんなら試し撃ちしてやっても良いんだぞ? お前の頭で」

「へっ。本物のわけないだろ? なあ杉田」


 こいつ……先は長くないな。


「な、なんでそんな哀れなものを見る目で見るんだよっ」

「じゃあな有野。お前のことは忘れない」

「ああ。寝たら忘れるけどな」


 と、ここで何故か桜井も参加してきた。


「僕の存在感そんなに薄いんですか!?」

「今ここでどんぐり見つけたら忘れる自信がある」

「確かにな。冬の時期だけど見つければすぐに忘れるかもな」

「二人とも僕をいじめるの好きですね!」


 桜井との謎のコンビネーションにより、少しだけ仲が良くなった。

 と、そんなことはどうでも良くて、桜井はひとつため息を吐き「そんなことはどうでも良いんだ」と言って場を落ち着かせた。


「何故奴らは機械の存在を知っていた」


 その質問には俺は心当たりが──というか、あれ以外に心当たりはなかった。


「その事なんだが、多分ニュースが原因だと思うぞ」

「は? ニュース?」

「………」


 有野はまるで信じていないようだが、桜井は黙って聞いていた。


「この前SNSに俺が飛んでいるところを見たやつが動画を投稿したらしい。それがニュースに取り上げられて、それを奴らがみた可能性がある」

「………って、それあんたのせいじゃないか!」


 くそっ。何千メートルも飛んだ俺が悪いってのは前認めちまったからぐうの音も出ねぇ。

 こ、ここは上手く有野にも責任を植え付けるしかねぇ!


「い、いや、そもそもお前がこんな装置を作ってしまったのが根本的な原因だろ」

「ゔっ。そ、そう言われればそう言えなくもない……のか?」

「ああ」

「じ、じゃあ僕たち二人の責任ってことじゃないか!」

「そう言うことだ!」


 よし! うまく責任を有野にも植え付けることに成功した!


「こ、こうなったら……」

「ああ」

「全力で奴らを倒すしかない!」

「全力で奴らを倒すしかない!」


 へっ。こんなに息が合うとは思わなかったぜ。


「僕たち良いコンビ……組めるかもな……」

「はっ。それは無いな」

「………」


 そんな意味不明なものを見せられ続けた桜井は、流石に我慢ができなくなったらしく、「なあ、いつまでコントをやっているつもりだ」と、一蹴すると、にべもなく慣れた手つきでレールガンを俺たちに向け──バン!!!! と大きな音を上げ、撃った。


「………かはっ」

「……ま、マジで撃ちやがった……」


 俺は幸いにも一度撃たれているのでまだ慣れていたが、一度も撃ったところを見たことがない有野は、軽く失神状態になっていた。

 まあ顔の真横を音速の弾が横切ったんだからな。そうもなる。


「ほ、本当に死ぬかと思った……」


 さっきまで元気いっぱいだった人が発する声とは思えないほど掠れた声を有野は出していた。

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