第二章 庇委籠 ③
朝。日が昇ってきた。午前7時ごろ、彼女は目を覚ました。横には、お母さんとお父さんはいない。横にいるのは、昨日初めて会った男の人。なんで、この人は無事なんだ。お母さんとお父さんが無事じゃなくて。これは、八つ当たりだから、言ったら駄目だ。目の前の男の人はこちらを見て目が合うと立ち上がった。
「おはようございます」
「おはようございます」
「昨日、言った通りに私は荷物を取りに対策本部に行くので少しの間待っていてください。」
私は、頷くと彼が出て行くところを見ていた。少し、外に出よう。冷たい風が彼女を包む。朝、男の人にもらった防寒具を着てお母さんとお父さんのところに行こう。さみしくないように。昨日、お母さんとお父さんがいた所にブルーシートがある。めくると寝袋が入っていた。寝袋の中には、お母さんとお父さんがいた。なぜか、涙が出てきた。死んだんだ。昨日もいなくなって、またいなくなって。どうして、どうして。私のせいだ。私の……。私がいなくなれば。そうだ。私も……。
対策本部に着いた。昨日の、打ち合わせの通りに彼女の能力を調べるための検査セットや簡易風呂のセット、食べ物等を軽トラに詰め込むと早々に戻る準備をした。まだ、戻る前にしておかないことがある。ここまで連れてくれた女性に頼みごとをした。
「すみません、お願いがあるのですがいいですか」
「何でしょう。時間がないので早めにお願いします」
「できる限り早く祝音さんの居住可能な施設を作ってください」
「はい、わかりました。というより、祝音さんのご両親が亡くなった報告を受けてからもうすでに基礎は作りはじめています」
私は、驚いた。報告では、簡単な内容しかしていないのにそこまで進めているのか。それは、ありがたい。
「すみません、まだ頼みがあります」
「何でしょうか」
「ご両親の墓を祝音さんが自由に通える場所に作ってください。あと、葬儀などもできうる限り彼女が参加できるようなものにしてください」
「了解です。お墓の場所に関しては検討してみないと分かりませんが、葬儀に関しても必ず参加できるようにします。お任せください」
私は、本当に驚愕している。ここまで断言するのは、この女性が優秀であるがゆえなのかそれとも何かしらあるのか。この女性に任せれば大丈夫だろう。
「すみません、ご両親のご遺体をどのようにすればいいのか分かれば教えてください。最優先事項です。お願いします」
私は、深々と腰を折りながら頼み込んだ。彼女は頷くと早くも行動に移した。私も止まっているわけにはいかない。私は最終確認を済ませると足早に対策本部を出て、彼女のいる元へと車を走らせた。テントのある場所の近くまで来た。