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第二章 庇委籠 ②

名前は、聞けた。ここで、相談を開始する必要はないな。とにかく、生活できるような環境を作るところからだ。なにせ、私もここに滞在しなければならない。

「寒くないですか?6時間ぐらい外にいると聞いているので」

「大丈夫です。私より……」

「今日は何を食べたいですか?」

「なんでもいいです。私が……。」

「では、あとで持ってきた非常食を見てみましょうか。最近の非常食は種類も多いので好きなものも見つかると思いますよ。」

彼女は頷いた。彼女が手伝ってくれたおかげで早めにテントを立てることができた。その間、祝音さんについても軽く知ることができた。彼女は、小学4年生で父と母の三人で暮らしていたらしい。そんなに話すこともできなかったが、特に問題はにない。とりあえず、約束した通り、非常食に何があるかを探してみよう。持ってきたリュックから非常食の入った袋を取り出し、テントの中で広げた。

「この中で何か食べたいものはありますか?」

非常食のラインナップは、ハンバーグ、レトルトカレー、白飯、乾パン、ソーセージ、汁物があるみたいだな。非常食は、もっと質素なものかと思ったけど、意外に種類がありますね。

「これがいい」

彼女が指を指してくれたのは、ハンバーグだった。正直、聞いといて選ばなかったら困ったことになったかもしれない。食べられないくらいの衰弱具合が彼女にあったかもしれないのもあるが、どちらかというとなんでもいいと言われたときに何を選ぶのが正しいのか分からないのが本当に困る。母の献立を聞かれたときの何でもいいは困るというのは、このことだったのかもしれない。缶のタイプだが、そうどうすればいい?とりあえず、無線で聞くか。対策本部に取り合わせると状況報告をせがまれた。そういえば、連絡まだしていなかった。祝音さんのことが無事なことを報告とするとともに、出来るだけ早くここから違う場所に移せるようにしてくれというお願いをした。一通り報告を終わると本来の目的である缶のハンバーグの作り方を聞いた。その他にも、キャンプをする際の注意を教えてもらった。リュックに入っていたシングルバーナーを使って、水の中に缶を入れて温めて食べてくださいとのことだ。早速、持ってきた水を鍋に入れ、缶を入れると火にかけた。少し、楽しみである。こういうことをするのは、生まれて初めてだ。キャンプみたいだ。楽しむのも良いが、この子についてももう少し知らないといけないな。

「少し、温まるまでの時間があるのでお話でもしましょうか」

彼女は、うんと頷き了承してくれた。さて、何を話しましょうか。まずは、ここに来た時の疑問から聴いていきましょうか。

「話すことが嫌なことは、黙ってもらっていいのですよ。祝音さんが話してもいいなと思ってからでいいのです。そうですね。まず初めに聴きたいこととして、どうしてこんなところにいたのですか?」

「お母さんとお父さんがここまで運んで来たの」

私が推測していることが合っていたら祝音さんのご両親はこの子を助けたヒーローだ。初めに報告を受けた時の電話の内容的に突発的にこの子の能力は発現した。だったら、親御さんは……。その時の状況を聞きたいが親御さんの話が深くなってくるから、これ以上話を進めるのは、やめといた方がいいと思う。

「そうですね。……」

正直、何を聞けばいいか分からない。能力が原因で親が亡くなる事例はあるにはある。私も担当はしたことがあるが、ここまで亡くなったことなどつらくないように見えるこの子の対応が思いつかない。後は、単純に質問が思いつかない。と悩んでいると鍋の水が沸騰してきて熱湯があふれた。これを機会に話を中断し、ご飯を食べる準備をした。正直、タイミング的に助かった。あのままだと、何も思いつかないまま気まずいであろう空間ができる。とりあえず、ご飯を食べて、明日の話をして早く寝るようにしよう。この子も疲れていると思うから。ご飯の準備が終わった。今日のメニューは、ハンバーグにごはんとコーンポタージュだ。少し不謹慎かもしれないが、キャンプの雰囲気もあっておいしそうだ。そんなことを考えているが、黙々と晩御飯を食べた。ご飯の片づけを済ませると明日のことについて話をすすめた。

「祝音さん、明日のことを話します。明日の朝に私は、一旦対策本部の方に戻り、荷物を持ってきます。戻ってきて、昼頃にあなたの能力について調べようと思います。祝音さんは、特にやることはないでのゆっくり休んでいてください」

「はい、わかりました」

少し不安そうな感じがしたが頷いてくれた。

「明日、何かいるものがあれば私が取ってくるので遊ぶためのものでもいいのでいってください。遠慮はいいりませんよ。」

「いらないです。でも、……。お母さんとお父さんを……」

彼女の目から涙が出てきた。

「お母さんとお父さんをお墓に入れてください」

と泣きそうなのを抑えながら彼女は言った。初めて、泣いた。私が来てから。これは、彼女の願いだ。絶対に叶える。

「大丈夫です。私が、祝音さんがお母さんとお父さんが安心して旅立つ所を見送れるような方法を考えます」

これは、約束だ。これを果たさなければ、これから祝音さんの話をすることができない。できなくなる。彼女は、今日、今まで我慢してきた涙が出ている。彼女は、疲れて寝てしまった。仕方がない。今日一日、彼女はここでずっと我慢してきた。彼女を寝袋に入れると外に出た。彼女の親御さんたちの保護をしなければならない。とりあえず、寝袋に入れてブルーシートで覆って保護した。約束を守るためには、出来る限り完全な状態が望ましい。考える限りの保護を終えるとテントに戻り、私は本部に明日の打ち合わせを行った。終わったのは、深夜を過ぎたころだった。明日、朝に荷物を取りに行くと言ったが、彼女が目を覚ましてから行くか。起きた時に誰もいないのは、不安かもしれない。私は、寝袋に入り、朝まで寝ているふりをした。

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