おむそむれっつ! ~最強最悪の限定魔法をエルフ族の校長から授けられたことにより、支配する対象のほとんど全員が穿いている部分を強制的に交換させ、動きまで封じることが出来る~
やっばい魔法が発動される!
君は男子高校生だ。
ある日、公立魔法高校に登校した君は、すぐに校内放送で校長室に呼び出された。
校長先生はエルフ族で、ふわっとした長い金髪の幼女姿をしているが、実際は何百年も生きている。国内において魔力の頂点に立ち、生徒達からの人望も大変厚い校長から、君は限定魔法を授けられた。
どんな魔法かと、君は聞いてきたね。
「君。それは使った時のお楽しみだよ」
とだけ、校長は特大の胸部を揺らして話した。この声がその校長と同じような声なのは、まあ気のせいだとしておこう。
君は校長室を後にし、クラスで朝のホームルームを受けた。
終了後、隣の席の女生徒が君に興味深そうな顔を向けてくる。
「ねぇ、校長先生に呼び出されてたけど、何かあったの?」
君が校長から限定魔法を授けられたと明かすと、クラスのみんなの注目を浴びることになった。
「どんな魔法なのかすっごく気になる! ちょっと使って見せてよ! お願いっ!」
かわいい女生徒に頼まれると、君は断れない性格なのだろうね。
君の教室の席は、中央辺り。机は前後左右に規則正しく並んでおり、男女比は半々ぐらいだ。
一番前の教壇の後ろでは、若い女性教師が立っている。彼女は強制こそしないが、君に魔法を使ってほしそうな視線を向けていた。
当の君でさえ、特別な限定魔法がどんな効果をもたらすのか、聞いていないので、発動してみたい気持ちがある。
少なくとも、説明しないと危険な類の魔法ではないと推測し、君は決意を固める。
席を立った君は息を呑み、みんなの期待に応えるため、呪文を唱えようと試みた。――その呪文は、ひらがなでたったの七文字だ。
「おむそむれっつ!」
魔力を込めて声を出すことにより、魔法は発動する。
君はすごい魔法を披露して、みんなから尊敬の眼差しを集める。そんな快感をいくらかは得られると信じていた。
だが実際は違った。
まず、生徒達が急に立ち上がった。それも、女子生徒だけだった。
中には机の上に立った女子も何人かいた。勢い良く跳躍したように見えたが、実際は魔力の作用で跳躍させられたのである。
若い女性教師も跳躍し、教壇の上に載った。
跳躍した者達の体から、魔力の光が湯気のようにもれている。自身の魔力の高い先生や女子だけが、跳躍したのだよ。
そして、クラスの女子全員が、紺色スカートを一気にたくし上げた。しかも、全員が女児向けのような白い無地の下着を着用している。この下着は限定魔法の効果により、一瞬で交換させられたものだ。
彼女達のスカートの持ち上げ具合は凄まじく、思わず喜びの声を上げる男子もいた。
女性陣の中で最もかわいそうだったのは、若い女性教師だろうね。スーツ姿の彼女は短いタイトスカートだったのだが、女子の制服のような広がりのあるプリーツスカートではなかったため、着用していたタイトスカート自体が消滅している。
限定魔法では、スカートのたくし上げで下着を素晴らしく晒すことが出来ない場合、不要な物は瞬間移動してしまうのだ。
よって、担任は肩幅まで開いた長い両足を晒し、スカートがないのにもかかわらず、両手がスカートを正面でたくし上げる手つきをしている。こんな格好でオムツのような白い下着を丸見えにさせる様は、痴女そのものだった。
君には、先生の表情にも注目してもらいたい。君と向かい合っている先生は、下着を自分から見せつけるような、挑発的な表情をしているだろう? 学校で君が知る限りの彼女は、そんな顔をするような教師ではないよね。
君に声を掛けてきた女子も、積極的ではなさそうに見える女子も、同様だ。全員が同じ下着を着用していて、挑発するような顔でたくし上げをしている。統一された姿なのが、実に不自然だ。
やがて、君は他の変化にも気づいた。いや、気づいてしまったと言うべきか。
君の席の足元では、大量の下着が積み上げられている。タイトスカートも、一枚だけある。
下着の数は、先生を含んだ女子の総数と一致する。カラフルで、大人なものもあれば、彼女達が今穿いているのと変わらないような白いものもあった――ではなくて。
マズい。即座に君はそう思ったことだろう。
全員の下着をオムツのような下着と交換し、たくし上げを強要させて動きを封じるという恐ろしい限定魔法、『おむそむれっつ』を使ってしまったのだから。
この異様な光景が始まってから、三十秒以上は経っただろうか。限定魔法の効力は切れて、女生徒達は束縛から解放される。だが、君の足元の下着の山はそのままで、彼女達の元には戻らない。
やはり、先生が一番悲惨だった。高所の教壇の上で、下半身が下着一枚の状態で意識を取り戻す。
恐ろしい格好に、女子達が戦慄する。
「「「「「いやああああああああああああぁっ!」」」」」
彼女達の叫び声の後は、まさに地獄絵図だった。
君に魔法を使うよう頼んだ女子は乱暴な本性を現し、君に殴る蹴るなどの暴行を加える。
恥ずかしがる女子は、スカートを死にそうなぐらいに押さえ続ける。
君の机を退かし、下着の山に群がって自分の下着を探す女子達もいる。
男子勢はどうだろうか。幸せそうな顔の男子もいるし、暴力を振るわれる君を心配するも助けられない男子もいる。教壇から降りて、顔を覆いながら泣いている先生を慰める男子もいた。
驚いて隣の教室から様子を見に来た生徒もいたりして、とにかく大惨事だった。
君は都合良く現れたエルフ校長の回復魔法によって、どうにか病院行きにはならずに済んだ。また、君が故意でやったことではないと認められ、謹慎処分を受けることもなかった。
一部の女子には恨まれたものの、一部の男子には思い出に残る学園生活をありがとうと、小声で感謝もされた。
そして君は、二度とこの魔法を使ったりしないと誓った。
□
さて、二度と限定魔法を使ったりしないと誓った君ではあったが、君は限定魔法を上手く操れるよう、校長から訓練することを課せられた。
さらには、君が実戦で使わなければならない、不測の事態が起きてしまう。
君の限定魔法を脅威に感じた魔族組織の刺客が、君を抹殺しに来たのである。
上位魔族は制服を着た女子生徒に姿を偽って君に近づき、君を亡き者にしようとした。
しかし、君は敵の雷魔法を間一髪で避けることが出来た。
不意打ちに失敗した魔族は、校舎前で正体を現す。
「よくかわしたなぁ! さすがは限定魔法の継承者と言ったところか! だが、あの校長が出張する日を狙って潜入したのだからな! 貴様さえ始末してしまえば、この高校の生徒どもを全滅させるなど、私には造作もないことだ!」
濃い茶髪の敵は、見た目こそ美少女ではあるのだが、性格は悪そうに見える。
女性美を強調した露出度の高い衣装は、いわゆるビキニアーマーと呼ばれる出で立ちだ。ビキニのような布面積の小さい青の着衣の上に、硬そうな金属を肩や胸部、腰や局部に装着している。
この敵は、ご丁寧に君を先に始末すると話していた。君は周囲を巻き込まないよう、人の少ないグラウンドに走って逃げる。
「待てぇッ!」
背後から敵が追って来る。普通に走って追いかけてくる。機動力は高くないようだ。
君は部活中の生徒達に、避難するよう叫んだ。
限定魔法を、あの敵一人に食らわせるしかない。訓練を重ねた君には、それを達成する力が備わっている。
君は敵のほうに振り向いて立ち止まる。
対象を敵のみに絞るため、両手を前にした。
全魔力を敵へと集中させて、全力で叫ぶ。
「おむそむれっつ!」
オート・ムスメ・ソクバク・ムソウ・レッツゴー!
オート娘束縛無双レッツゴーを略した、最強最悪の限定魔法、おむそむれっつ。魔力を浪費させながら拘束もしてしまう、対象が女子または未婚の若い女性限定の魔法だ。
限定魔法は発動すると、自動的に効果を与える。つまり、敵はもの凄い勢いで噴射するかのごとく上空にぶっ飛んだ。
「きゃあああああああっ!」
敵の叫び声が、けっこうかわいかったな。
目視出来ないぐらいに飛び上がった敵は、性格が悪そうだったが、限定魔法の対象となる娘に含まれるようで助かったよ。もしそうでなければ、君は本当に、敵に始末されていたかもしれない。危なかった。
やや経って、敵は高速回転しながら地上へとすごい速度で戻って来る。
後方に下がっていた君の前で、落下する敵が地面にぶつかった。大きな音とともに、グラウンドで砂煙が舞い上がる。
砂煙がおさまって視界が開いた時には、大きなクレーターが出来上がっていた。
凹んだ部分の中央に、ビキニアーマーの魔族が立っている。濃い色の茶髪は後ろで三つ編みに編んでいたため、髪の乱れは少なそうだ。
敵はスカートをたくし上げをするような手つきをしていたが、彼女は元からスカートを穿いていなかった。不要物は瞬間移動し、下半身は白いオムツのような下着だけになっている。
「うぅ……」
この魔族は、挑発的な顔になるのを拒もうとしていた。敵でありながら、限定魔法で完全に支配されないのは立派だ。
君は足元にあった青い下半身ビキニと腰アーマー、小さな局部アーマーを避けて、慎重にクレーターの中へと入る。
敵のすぐ前まで行って足を止める。まだ限定魔法の効果は続いていた。
「見ないでぇ……見ないでよぉ~っ!」
実に悔しげな顔だ。あと、思っていた以上にかわいい声で、君はつい惹かれてしまいそうになる。
それが原因で、敵の束縛効果が途絶えた時、君は反応に遅れてしまう。
敵の動きは早い。また雷魔法で攻撃されるかと警戒したが……、杞憂だった。
「こんなの……いやぁ……っ!」
敵は白い下着が極力見えないよう、その場で腰を下ろして体を丸める。
その様子を君が見下ろしていたら、彼女は君のほうに顔を向けて来た。恥ずかしくてたまらないといった顔だ。ビキニアーマーを着ておいて恥ずかしがることもないのに……と、君は思ったに違いない。
彼女を不憫に思った君は、涙目だった彼女に脱いだブレザーをかけてあげた。
「ありがとう……ございます」
性格の悪そうだった敵が、弱々しい声で君に感謝する。今の彼女はすごく純情で、守ってあげたくなるぐらいに愛おしく思えただろうね。
彼女は上着を身に着けたものの、立ち上がってしまえば下半身は隠し切れない。君は彼女におとなしく待っていてくれと伝え、教室へと自分のジャージを取りに向かった。
急ぐ君は途中、不安になる。敵は戦意を喪失したフリをしていただけで、自分がいなくなった後にまた騒ぎを起こしているかもしれない、と。
だが、君は揺れる気持ちを抑える。涙目を向けていた彼女の恥じらいが本物だと信じることにした。
ジャージの上下を持ってグラウンドに戻った君は、敵が座ったまま律儀に待っていたことに驚いてしまう。
「だって……おとなしく待つよう言っていたから……」
そう答えた彼女に、君はジャージを渡した。
「あっ……ありがとうございます……」
彼女に君は背を向けて、目に入れないようにして待った。
「……終わりました」
君のジャージに着替え終えた敵の見た目は、体育の授業を受ける女生徒とほとんど変わらない。肌を晒したくないのか、ジャージ正面のファスナーは一番上まで閉めている。
「お返しします」
彼女から上着を受け取って、君は再びそれを着る。
顔を上げた際に見た彼女は、ジャージの前で両手を重ね、縮こまっていた。ジャージ姿は、決していかがわしい格好ではない。だが、胸部とお尻の主張がはっきりと分かる彼女のスタイルの良さに、君は不覚にも興奮してしまった。
そのことをごまかすように、君は彼女に、制服姿に化けられるのだからジャージは必要なかったんじゃないかと聞いてみた。
「あの魔法を食らって、魔力がもう空なんです……」
対象の魔力を大幅に失わせるのは、限定魔法の恐ろしい効力の一つだ。また、彼女の様子が一変しているのは、敵の洗脳が限定魔法で解かれたためだった。
こんなに有能な限定魔法でも、実は弱点がいくつかある。
一つ。高校の敷地内でしか効果がないこと。
一つ。オムツのような専用の下着の替えが校内にないと発動出来ないこと。ただし、専用下着は倉庫で多くの予備が保管されているため、高校内であれば、こちらの弱点は気にしないで問題ないだろう。
その後、君は担任から事情聴取を受けたり、グラウンドのクレーターが教師達によって修復されるところを見たりしていた。
君は終始、敵だった彼女をかばい、紳士的に接したので、彼女からの信頼を勝ち取ることにも成功した。
やはり、君に限定魔法を授けて良かったと思う。
□
君が高校の窮地を救い、敵の組織に洗脳されていた魔族さえも救ってから、一週間が経過する。その間、敵だった魔族の少女と同居することになったが、彼女の振る舞いから、君は彼女が本当に信用に足りる人物だと確信した。
君は今、校長室にいる。
「さっそくだが本題に入ろう。その子は洗脳されていたからと言っても、数々の犯罪に手を染めている。だから、警察に突き出さないといけないんだ」
エルフの校長が告げると、彼女が先に反応した。
「分かっています。むしろ一週間もの間、ご主人様と過ごさせて頂けたことに感謝しています。……ご主人様。ありがとうございました。短い間でしたが、ご主人様との毎日は、魔族の私にとって、とても新鮮で、幸運なものでした。牢屋の中でも忘れません」
制服を着た元敵の彼女は、三つ編みの美少女にしか見えなかった。
君は彼女との時間を共有したことで、彼女に情が沸いてしまっている。だからこそ、君は校長にどうにかならないのかと訴えかけた。
「そうだな……。私は警察組織に、何十人分もの貸しがある。それに、君には限定魔法を授けたことで迷惑をかけてしまった負い目もある。君がこの子を今後もずっと見張ると約束してくれるのなら、私が警察に話をつけてあげるよ」
校長の言葉に君達二人は喜び、校長に謝意を伝えた。
君が彼女のほうを向いて、良かったねと言うと、
「ありがとうございます! ご主人様!」
笑顔で彼女は君の両手を取ったが、すぐに顔を赤くして手を引っ込めた。
「すみません、出過ぎた真似を……っ」
洗脳が解けた彼女は、すっかり恥ずかしがり屋さんになってしまった。彼女の格好も、長いスカートに黒いタイツ、黒い手袋を装備して、極力肌を露出しないように務めている。今の彼女にビキニアーマーを見せたら、気絶してしまうかもしれないね。
彼女を激変させるきっかけとなった、最強の限定魔法おむそむれっつ。
君はこの魔法を校長にかけたらどうなるのか、興味が湧いた。
「私を屈服させられると思ったのかな? そうはならないよ」
君は少し調子に乗って、長生きエルフだから対象の娘には含まれないですよね、なんて言ってきた。……ちょっと失礼だな。
「そんなことはないさ。私はこの幼い容姿によって、あの限定魔法でも娘に判定されてしまう。だけどね、私は絶対に限定魔法を防げるんだよ。その理由を、君は聞きたい?」
私は君に、聞かないでもいい権利を与えた。
しかしながら、君は聞きたいと答えた。
ならば、教えるしかないな。
「何故なら、――私は一瞬で男になれるからだ。はい、今なったぞ」
見た目はロリ巨乳の美少女のままだった。
「姿は全く変わらないけどね、下にはついているのだよ」
何がついているのかは、さすがに君も聞かないことにしたようだ。
(終わり)
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
このような変態的な短編は他にも色々あります。それらもどうぞお読み下さい。