分かってない
その日もまた恒例の柳川との作戦会議、もとい雑談タイムを過ごしていた。
何故か作戦会議をしない柳川の言葉を遮って俺は言葉を吐いた。
「なぁ、柳川」
「ん?何?どうかしたの?」
俺の声に柳川が反応する。
「お前は品川がお前のことを好きだって言ってきたらどうする?」
あの時の品川の反応。あれはきっとそう言う意味だったはずだ。今まで隣に居た幼馴染が急に居なくなってその大切さに気づいた、とかそんな感じだろう。
「んー…」
柳川は少しだけ考えるような素振りをしてから口を開いた。
「今更何言ってんだって言っちゃうかな」
…まぁそりゃそうだよな。あんな振り方されておいて付き合えるほどこいつはお人好しじゃない。それは関わる時間が多くなってきて気づいたことだ。
「そうか」
俺はそう短く返した。
「なんでいきなりそんなこと聞いてきたの?」
柳川が俺の目を見ながら不思議そうな顔をした。
「いや、気にしないでくれ。ただ聞いただけだ」
「ふーん?」
柳川はまだ不思議そうな顔をしていたが深く考えることをやめたらしい。あぁ、あとこれも言っておかないとな。
「早くしないと俺も付き合いきれなくなるぞ」
「ダメだってー、最後まで付き合って貰うからね」
「そんなわけにもいかないだろ?俺とずっと一緒に行動してたら勘違いされるのはお前なんだぞ?柳川には彼氏がいる、なんて認知されたらお前と付き合ってくれる男子は居なくなるかもしれないんだからな」
そうなっては困る。いや別に俺は困らないのだが柳川がそれでは嫌だろう。
「別にそれでもいいよー」
「あのなぁ…」
「その時は佐巻君が私を彼女にしてくれるんでしょ?」
だからなんでこいつは俺にそんなことを…
「…お前もしかして俺に気でもあるのか?」
少し冗談めかしてそう言う。すると柳川は慌てて否定した。
「べ、別にそんなんじゃないし!じょ、冗談に決まってるでしょ!」
「分かってるよ。いいから早く見つけてくれ」
「…」
なぜだか分からないが柳川が俺の事を睨んでいた。
「なんだ?」
「…なんでもない」
じゃあなんで睨んでるんだよ…こいつはよく分からないな。
「なんで佐巻君はそうなのかなー」
「どういう意味だ?」
今度は俺が柳川を睨みながらそう言った。
「そんな睨まないでよー。いやね?…なんでもない」
「意味わからん」
言いたいことがあるならハッキリ言えばいいのに。まぁどうでもいいか。
結局俺には関係ないことなのだから。
だから俺はこれ以上柳川に聞かない。柳川だって聞かれたくないだろうしな。
「全く、佐巻君は…分かってない」
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