裏の顔
「はぁ」
俺は大きなため息をついていた。その理由はもちろん柳川とのことだ。なんで俺があいつに付き合わないといけないんだ…確かに柳川がいい人を見つけるまで付き合ってやるとは言った。だが誰がこんなにも一緒に行動を共にするなんて行ったんだ。俺1人の時間が全く無くなった。
そのせいで俺と柳川が付き合っているという噂が後を絶たない。自分でいい相手を探す邪魔してどうするんだよ…
俺は内心そうツッコミながらトイレに向かった。
1人用を足していると品川が入ってきた。
「…」
あんなことを言ったせいで品川とは気まずい。だがまぁ特に話すことなんてないんだからお互い黙っていても大丈夫だろ。そんなふうに思っていたのだが不意に品川が話しかけてきた。
「佐巻君、君、梓と付き合ってのかい?」
…なんでお前がそんなこと気にしてんだよ。そう思ったが口には出さない。
「いや?付き合ってないぞ」
「…そう。でも何かやってるよね」
まぁ確かに柳川に無理やり付き合わされてるな。
「悪いことは言わない。梓はやめておいた方がいいよ」
なんだコイツ。
「…どういう意味だ?」
俺がそう聞くと品川は口を開いた。
「梓は自分で何も出来ないんだ。人に頼ってばっかり。小さい時もいつも俺の後ろをついて回っていたよ。あいつはそんな女なんだ。だからそんなやつと付き合うと君が苦労するよ」
ほんとになんなんだコイツ。お前自分で柳川に関わるなって言ってただろ。なのになんで俺にそんなこと言ってくるんだ。
「ご忠告どうも。じゃあな。俺はもう教室に帰る」
気分が悪い。なんで人の悪口なんて聞かされなきゃいけないんだ。お前主人公なんだから人の悪口言ったりするなよ。品行方正でみんなの憧れでいろよ。それが主人公の役割だろ?
「俺の話はちゃんと聞いた方がいいと思うなー」
…まだ言うか。これじゃまるで
「なんだか俺に柳川を取られて嫉妬してるみたいだな」
俺は品川にそう言った。すると品川の目つきが変わった。
「は?お前何言ってんだ?そんなわけないだろ?」
「おいおい、どうしたんだよ。いつもと口調が違うじゃないか」
やっぱりお前はそういうやつだよな。
「…チッ。別に俺は梓が君と仲良くしていて嫉妬したわけじゃない。それは断言出来る。ただ君が梓のことを何も知らないで付き合っていたのなら後悔するだろうなと思って忠告してあげてるんだ」
「はいはい、ありがとよ」
俺はそれだけ言い残してトイレから出た。
「ああなんだよあいつ!クソうぜぇ!!死ね!死ね!」
トイレの中からはそんな声と何かを蹴りつけるような音が聞こえてきた。
せめてやるなら俺が完全に居なくなってからやってくれよ。気分悪いだろ。
はぁ、まぁ柳川にはもしかしたら品川がお前に気があるかもしれない、とでも伝えておくか。これであいつがどうしようと俺には関係の無いことだ。
主人公の裏の顔なんて知りたくなかったよ。
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