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作戦会議

その日から柳川がよく俺に絡んでくるようになった。


「佐巻君、一緒にご飯食べよ」


「佐巻君、一緒に帰ろ」


「佐巻君、カフェ行こ」

「おいちょっと待て」


俺はたまらず柳川を止めた。


「ん?何?」


柳川は不思議そうな顔をして俺の事を見ていた。


「何?じゃないだろ。何もそこまで俺と行動を共にする必要は無いだろ」

「ダメだよ!ちゃんと作戦会議しなきゃ」

「そんなに頻繁にするようなもんじゃないだろ…もう今日5回目だぞ?」


そう、あの日、柳川に責任をとれと言われた日から俺は常に柳川と行動を共にしている。そのせいでクラスでは俺と柳川が付き合ってるんじゃないかと噂されている。なんて迷惑な…確かに俺も彼女は欲しい。だが自分のことが好きじゃないと分かりきっている異性と付き合っているなんて噂されたらたまったものじゃない。


「まだまだ足りないくらいだよ。ちゃんと責任とってくれるんでしょ?」

「…はぁ、なんで俺はそんなことを言ったんだ」


自分の安直な行動を後悔する。


「さ、行くよ」

「…わかったよ」


なんで俺はこんなやつと絡んでいるんだ?こんな主要人物になり得るようなやつと。俺はただの脇役だ。脇役と主要人物が一緒に居る物語なんて無い。…たまに脇役だったやつが主要人物に成り上がるような物語もあるかもしれないがそれは絶対に俺じゃない。俺なんかがなれるはずがないんだ。


俺は柳川に無理やり連れてこられてカフェに入っていた。


「それで?気になる人くらいは出来たのか?」

「んー、どうだろ」


なんでお前が疑問形なんだよ…先が不安で仕方ない。俺はこの先どれほどこいつに付き合わされるんだ。


「あのなぁ…ちゃんとしてくれよ。俺だってお前に協力してるんだから」

「ちゃんとしてるよー。ただそんな相手がいないだけ」

「それを探すのがお前の目的だろ?」

「簡単に言ってくれるなー、佐巻君は」


だって俺には関係の無いことだから。結局全てはそこに行き着く。どこまで行っても俺と柳川は赤の他人で上辺だけの関係だ。


「…さ、佐巻君はそんな人居ないの?」


不意に柳川がそんなことを聞いてきた。


「そんな人?」


俺は何のことか分からず聞き返した。


「その…気になる人とか…」


何故か柳川がモジモジしながら聞いてくる。


「そうだな…居ないな」

「…ほんとに?」


柳川が疑うような目を向けてくる。


「ほんとにだ」

「そっかー…」


柳川がどこか残念そうな顔をした。なんだその顔は。俺のことを哀れんでいるのか?誰も好きになれない哀れな男と蔑んでいるのか?表出ろ。


「俺の話なんてどうでもいい。早く作戦会議するぞ」


作戦会議と言ってもさっきみたいなどうでもいいよな会話ばかりしている。なんなんだこれは。ハッキリ言って時間の無駄だ。まぁ俺には他にやることもないんだけどな。


「んー、結局いい人ってどんな人なんだろうね」

「俺に聞くな。それはお前にしか分からないだろ。お前がこの人ならいいって思う人を見つけろ。それは俺には分からない」

「そうだよねー」


なんで俺なんだ。俺じゃなくてもお前の話を聞いてくれるやつは沢山いるだろう。そいつらに頼めばいいものを…


「私、佐巻君ならいいよ」


不意に柳川がそう言った。


「…冗談も程々にしておけよ」

「冗談じゃないんだけどなー」


柳川がそんな軽口を叩く。


「もう帰るぞ」

「そうだね。そろそろ帰ろうか」


俺たちはカフェを出て別々の帰路についた。


『私、佐巻君ならいいよ』


そんなことを脇役の俺に言うなよ。

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