分かってない(梓視点7)
とりあえずこれで梓視点は終わりです。長くなってしまい申し訳ありません。
「なぁ、柳川」
「ん?何?どうかしたの?」
今日も佐巻君と雑談タイムを過ごしていると突然佐巻君が訳の分からないことを言ってきた。
「お前は品川がお前のことを好きだって言ってきたらどうする?」
何それ。意味わかんない。
「んー…」
私はわざとらしく声を出して考える。
「今更何言ってんだって言っちゃうかな」
本当はそれだけでは済まないような気もする。憤慨して口汚く罵ってしまうかもしれない。それほどまでにもう裕也のことは好きでも何でもなかった。
「そうか」
佐巻君はそう返してきた。
「なんでいきなりそんなこと聞いてきたの?」
それは当然の疑問だった。
「いや、気にしないでくれ。ただ聞いただけだ」
「ふーん?」
佐巻君はそう言ったがきっとただ聞いただけ、なんてことは無いはずだ。佐巻君はそんな無駄なことをしないはず。
私は不思議がっている演技をした。
「早くしないと俺も付き合いきれなくなるぞ」
それは困る。
「ダメだってー、最後まで付き合って貰うからね」
「そんなわけにもいかないだろ?俺とずっと一緒に行動してたら勘違いされるのはお前なんだぞ?柳川には彼氏がいる、なんて認知されたらお前と付き合ってくれる男子は居なくなるかもしれないんだからな」
それは好都合だ。私と佐巻君が付き合う為に他の男の人が離れて行ってくれることほどありがたいことは無い。
「別にそれでもいいよー」
私はなんでもない事のようにそう言う。
「あのなぁ…」
佐巻君は呆れたような顔になる。ふふっ、可愛い。
「その時は佐巻君が私を彼女にしてくれるんでしょ?」
前、手応えがあった時のような言葉をかける。
「…お前もしかして俺に気でもあるのか?」
だが佐巻君は冗談っぽくそう言ってきた。…もうダメなのか。どうして佐巻君はこんなにも鈍感なのだろう。
「べ、別にそんなんじゃないし!じょ、冗談に決まってるでしょ!」
これもダメでしょ?
「分かってるよ。いいから早く見つけてくれ」
やっぱりね。佐巻君は私のアピールに全く気づいて居ない。
「…」
どうして上手くいかないの!私は軽く佐巻君を睨みつける。
「なんだ?」
「…なんでもない」
ここで言ってしまえばきっと佐巻君は私の告白を断る。
「なんで佐巻君はそうなのかなー」
なんで気づいてくれないのかなー。
「どういう意味だ?」
佐巻君は本気で分かっていないような様子だった。…これは骨が折れそう。
「そんな睨まないでよー。いやね?…なんでもない」
じれったいでしょ?気になるでしょ?
「意味わからん」
…気にしてよ。
「全く、佐巻君は…分かってない」
全く、佐巻君は…
女心が分かってない。
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