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手応え(梓視点6)

その日から私は佐巻君によく話しかけるようになった。傍から見てもよく分かるほどに私たちの距離は近くなっていた。


「佐巻君、一緒にご飯食べよ」


「佐巻君、一緒に帰ろ」


「佐巻君、カフェ行こ」

「おいちょっと待て」


何度も何度も話しかける。すると佐巻君に止められた。


「ん?何?」


私はなぜ止められたのか理解出来ずそう聞いた。


「何?じゃないだろ。何もそこまで俺と行動を共にする必要は無いだろ」

「ダメだよ!ちゃんと作戦会議しなきゃ」


そう、これももちろん建前。


「そんなに頻繁にするようなもんじゃないだろ…もう今日5回目だぞ?」


だって佐巻君と一緒に居たいから。それだけだ。


「まだまだ足りないくらいだよ。ちゃんと責任とってくれるんでしょ?」


そう、佐巻君は必ず責任をとる。困っている人を放っておけない。そんな人間。


「…はぁ、なんで俺はそんなことを言ったんだ」


ほら、そんなふうに口では言っても私に協力しないなんて言わない。優しい人。


「さ、行くよ」

「…わかったよ


少し強引にすればすぐに折れてくれる。ふふっ、本当に優しい人。


私は少し無理やりに佐巻君をカフェへ連れて行った。そして適当な席を見つけ2人で向かい合うように座った。


「それで?気になる人くらいは出来たのか?」


座ると佐巻君が早速そう聞いてきた。


「んー、どうだろ」


口ではそう言っているが、私には既に好きな人がいる。本人はそれに気づいてないけど。まだ焦ることなんてない。だって佐巻君はずっと私に協力してくれるんだから。


「あのなぁ…ちゃんとしてくれよ。俺だってお前に協力してるんだから」

「ちゃんとしてるよー。ただそんな相手がいないだけ」


もちろん嘘。でも佐巻君は私を疑ったりしない。きっと疑うことを知らないんだ。きっと佐巻君は嘘もついたりしない。


「それを探すのがお前の目的だろ?」

「簡単に言ってくれるなー、佐巻君は」


でも私はそんな佐巻君を嘘で騙す。仕方ないよね、目的のためなんだから。


「…さ、佐巻君はそんな人居ないの?」


先程焦る必要は無いと言ったが、時間が無限である訳では無い。もしかしたら佐巻君に彼女が出来てしまうかもしれない。そんなことになれば私はきっと学校に来れなくなってしまうだろう。だから私から仕掛けないと。


「そんな人?」


佐巻君が不思議そうにそう聞いてくる。


「その…気になる人とか…」


私は少しモジモジしながらそう言った。もちろん演技だ。こうすることで自分に気があるんじゃないか?と思わせることが出来るかもしれない。


「そうだな…居ないな」

「…ほんとに?」


私は佐巻君の目を真っ直ぐと見据えてそう言った。これで嘘をついたら目を逸らしたり何かしら変化があるかもしれない。


「ほんとにだ」


でも佐巻君は一切私から目を逸らすことなくそう言いきった。


「そっかー…」


私は若干ガッカリしたように見せる。これも演技。自分に気があると思わせる。


「俺の話なんてどうでもいい。早く作戦会議するぞ」


もっと雑談を楽しみたかったが、あまりに露骨すぎると愛想を尽かされてしまう可能性がある。ここは仕方ない。


「んー、結局いい人ってどんな人なんだろうね」

「俺に聞くな。それはお前にしか分からないだろ。お前がこの人ならいいって思う人を見つけろ。それは俺には分からない」

「そうだよねー」


やっぱり佐巻君は私のことを考えて発言してくれる。こんなに心が温かい気持ちになったのは久しぶりだ。


「私、佐巻君ならいいよ」


ちょっと攻めてみるか。


「…冗談も程々にしておけよ」


明らかに佐巻君の顔色が変わった。これは手応えがある。この手は使えるかもしれない。


「冗談じゃないんだけどなー」


私は真剣さが含まれた声色でそう言う。


「もう帰るぞ」


佐巻君がそう言って席を立った。


「そうだね。そろそろ帰ろうか」


まぁ今日は手応えがあったからこれでいいか。ふふっ、絶対に私と付き合ってもらうんだから。ね、佐巻君。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] セリフのカッコ「」がない場所があります。 [一言] いつも楽しく読ませていただいております
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