砕けた心(梓視点3)
それから1週間が経った。あの日から私は裕也に積極的に話しかけるようになった。今まではあの3人がいた時には気まずくて話しかけにくかったけど頑張って話しかけた。
そして今日、裕也を校舎裏に呼び出した。
私の心臓は早く拍動し、以下に自分が緊張しているのかということを思い知らされる。後ろから誰かが歩いてくる音が聞こえて私は振り返る。
「…裕也」
「こんなところに呼び出して何の用だよ」
裕也は少し気だるげにそう言った。それに怯んでしまいそうになるが私は自分を奮い立たせて声を張る。
「ゆ、裕也!やっぱり私は裕也のことが好き!私と付き合って!」
言った。言ってしまった。もう後には引き返せない。私は1度告白して振られている。それなのに再度また告白した。こんなのもう冗談で済むようなことじゃない。きっとこの気持ちは裕也に真剣に伝わった。
「…」
「…」
私たちの間に気まずい沈黙が流れる。でもそれはきっと裕也が真剣に考えてくれているからだと思う。私はそう思っていた。思っていたのに。
「はぁ。なぁ梓。俺前言わなかったか?お前みたいなやつと付き合うわけ無いって」
裕也はため息をついて面倒くさそうにそう言った。その仕草に私は心臓を鷲掴みにされたような感覚に陥る。
「で、でも私はまだ裕也が好きで…」
でも私は引かない。引けない。
「知らねぇよそんなこと」
私の感情なんてお構い無しに裕也がそう言う。
「もう迷惑だからそういうのやめてくれよ」
「…」
そう言った裕也の表情は本当に迷惑そうな顔だった。それを見た私は心が砕かれた。
「そんな言い方ないんじゃないか?」
「佐巻君…」
突然、私たちの目の前に佐巻君が姿を見せた。なんでこんなところに?まぁなんでもいっか。
「君には関係の無いことだろう?余計な口出ししないで貰きたいな」
裕也が人前で見せる姿だ。私の前で居る時より少し丁寧な口調になる。私はそれを裕也の素だと思っていた。いや、間違いなくあれは素なんだろう。でもそれはきっと私と話すのがめんどくさかったんだろう。
「確かに俺には全く関係ない」
そうだよね。佐巻君には全く関係ない話だよね。
「だろ?だから…」
「でもな」
でも君は
「それは人を傷つけていい理由にはならないぞ」
そういう人だよね。
「…チッ、めんどくさいな」
裕也がいつも私と接する時のような態度になる。ほんとにめんどくさいと思った人にしか見せないんだ。ほんとに私ってめんどくさかったんだ。
「…そうだね。梓、さっきはあんなこと言ってごめん。それじゃ俺はもう帰るね」
裕也は口ではそう言ったが全く反省したような態度ではなかった。
裕也はそう言った後歩き出した。そしてすれ違いざまに
「もう俺に関わるんじゃねぇぞ」
そう言い残して言った。砕けた私の心を更に粉々にした。もう無理。
「…」
「…」
裕也が居なくなった後の空気は気まずい以外のなんでもなかった。でも私から話すような気力は無い。
「…あー、ジュースでも買うか?」
佐巻君がそう言ってきた。私はそれに頷くも首を横に振ることもしないでただ佐巻君について行った。
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