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迷わない(梓視点2)

次の日は地獄だった。裕也の席に集まってきている美女3人と楽しそうに話している裕也。それを見せつけられている。胸が苦しくならないわけが無い。しんどい。


どうにかそれを4限が終わるまで耐えた。一刻も早く教室から出ていきたい。…喉が渇いた。そう思った私はこの学校で唯一の自販機に向かった。


すると人影が見えた。誰かが何か買ってる。ん?あれは…


何やら見覚えのあるシルエットだった。私はその人物に近づいた。


「私これが飲みたい」


私は冗談でその人物、佐巻君にそう言った。私が指さしているのは炭酸飲料だった。


すると佐巻君は少しびっくりしたような顔で振り返ってきた。


「柳川…」


そして私の名前を呼ぶ。私はとびきり可愛く上目遣いをする。なんか自分で可愛いとか言うの気持ち悪いな…


「ダメ?」


私は断られると分かっていながらもそう聞く。


「いいぞ」

「え?!」


まさかの返答に驚いて声を上げてしまう。


「冗談だったんだけど…ラッキー」


本当に冗談で言った言葉だった。でも結果的にいい方向に転がった。言葉に出して言ってみるものだな…


「ありがとね」

「あぁ」


私と佐巻君はお互い短く言葉を交わした。


「…」

「…」


そして話すことが無くなると気まずい沈黙が流れ出す。やっぱりあんなこと言わなければ良かったかもしれないと今更後悔している。なんで私はあんな恥ずかしいことを赤裸々に語ってしまったんだろう。でも心が軽くなったのは確かだ。


「…やっぱり辛いね」


あんなことを言うのは恥ずかしい。でもなぜだか佐巻君に話すと心地がいい。


「…そうか」


佐巻君は相変わらず短い相槌をうつ。


「私頑張ったんだよ?でも…ダメだった。なのにまだ好きなんだ。おかしいよね」


あんなに無様に振られたのに。惨めな気持ちになったのに。胸が締め付けられたのに。泣きじゃくったのに。まだ裕也のことを好きでいる。こんなのおかしい。でも好きな気持ちを抑えることが出来ない。苦しい。どうしたらいいんだろう。


「…別におかしくなんてないんじゃないか?」


佐巻君はそう言った。


「…そうかな」


私には分からない。


「あぁ、そんな簡単に好きじゃなくなるならそれまでのものだったんだろ」


私の裕也が好きだという気持ちに嘘は無い。あんな振られ方したのにまだ好き。それは私の気持ちの表れ?量?質?なんでもいい。でもやっぱり私は裕也が好き。


「そう、だよね。私、まだ諦めたくない。うん。そうだよ。諦めたくないんだ」


そう、諦めたくない。それが私の心にある気持ち。


「ありがとう佐巻君。君のおかげで諦めないで済んだよ」


それに気づかせてくれた佐巻君に礼を言う。


「…まぁ、頑張れよ」


佐巻君は短くそう言ってくれた。口下手なのかな?


「うん!頑張る!」


でも今の私にはそれだけの言葉でも十分勇気を貰えた。









私はもう迷わない。

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