泣いている少女
俺の高校では1人、ヤバいやつが居る。そいつは品川 裕也と言う。
品川はイケメンでスポーツ万能、成績も最上位。オマケに性格もいい。非のうち所がない男だ。そこもヤバいのだが、1番ヤバいのは常に女を周りに侍らせているところだ。
品川ハーレムとでも名付けようか?その品川ハーレムのメンバーも錚々たるメンバーが揃っている。1人は俺と同じ2年生で氷結のマドンナと言われている氷川 静音。1人は小動物のように庇護欲を掻き立てられる1年生の人気者、松村 美鈴。最後は3年生のおっとりしたおしとやかなお嬢様の綾川 京香だ。
3人とも俺の通っている高校で絶大な人気を誇る美女達だ。それらが全て品川を取り囲んで居る。
それはもう異様な光景だ。品川周辺の空気だけキラキラしている。近寄り難く自分たちの世界を形成している。
まぁ俺には到底関係の無い話だ。だって俺はただのモブでしかないのだから。品川が主人公だとするのなら俺は物語にすら出てこないその他大勢の生徒と言ったところか。まぁ別にそれに不満を持っているわけじゃない。それなりに学校生活は楽しんでいる。友達は結構居るしクラスのみんなとも仲が悪いわけじゃない。彼女は居ないが…まぁ充実した生活を送っている。
それに変化が訪れたのはある日の放課後だった。
その日、俺は学校に課題を忘れてた。それに気づいたのは家に帰っている途中だった。
「しまった…学校に課題を忘れてきた。はぁ…めんどくさいけど取りに戻るか…」
そう1人でブツブツ言いながら学校へ引き返した。
学校につき早足で教室に向かう。教室の前につき扉を開ける。
「ひぐ…ぐす…」
うっわー…気まず…
教室の中には鼻をすすりながら泣いている1人の少女が居た。下を向いているため顔は確認できない。恐らく彼女はこちらに気づいていない。その間に課題を取ってしまおう。頼む。気づかないでくれよ…
ガタッ
やってしまった。足を机に引っ掛けてしまった。そのせいで音がなり少女がこちらを向いた。確認したところ彼女はこのクラスの柳川 梓だった。
「佐巻君?ご、ごめんね。こんなところ見せちゃって…」
柳川はぎこちなく笑顔を浮かべてそう言った。
「…何かあったのか?」
ここで何も言わずに去るのはあまりいい印象を与えないだろう。だから俺はそう聞いた。まぁ辛い時は誰かに聞いてもらったほうが楽になることもあるからな。
「…」
「嫌なら別に…」
「私、ね」
俺が言葉を言い終える前に柳川が話し出した。
「裕也の幼馴染なんだ」
裕也というのは恐らく品川のことだろう。
「小さい時からずっと一緒に育って来たの。それでね…好きだったんだ」
でも品川には…
「でもまぁあんなに可愛い子と美人な人達に囲まれてたら…ね。告白したけど何言ってるんだ?って言われちゃった。お前みたいなやつと付き合うわけないだろって…」
俺にとっては柳川も十分可愛い。だが品川のお眼鏡にはかなわなかったようだ。品川は実は性格が悪いのかもしれない。
「そう、か」
俺はそんな柳川に何も言ってやれなかった。どんな声をかけたらいいのか分からなかった。
「…裕也にとって私ってなんだったんだろう」
「…柳川、は…その、十分可愛いと俺は思うぞ?」
それは苦し紛れに出た言葉だった。柳川はこんな言葉望んでいないはずだ。でも俺にはこんなことしか言えない。
「…ぷっ、あははっ。何それ」
今まで暗い顔だった柳川が明るい顔をした。
「は、ははっ。そうだよな。俺に何言われても…」
「嬉しかったよ」
柳川が笑顔で俺にそう言った。柳川の顔が夕陽に照らされてドラマのワンシーンのようになっている。その仕草に不覚にもドキッとしてしまった。
「そ、そうか。それなら良かった」
「うん。じゃあ帰るね。話聞いてくれてありがとう」
「あぁ」
そうして柳川は帰っていった。
品川の奴、あんな可愛い幼馴染が居るのに満足しないのか…
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