5、第七王女の正体
「リタが魔王軍に攫われた」
金髪のイケメン勇者・ジークが眉間に皺を寄せながら言う。
「あの慎重で策士のリタが……信じられないわ」
聖女候補の巫女エリスがぽつりと言う。
「そうよ。リタだって相当に強いわよ? ゾンビ兵だって連れていたんでしょ?」
女騎士のマキが声を上げた。リタは勇者パーティーの中では弱い方だ。それでも、他の冒険者と比べて魔力量は半端ない。そのリタが連れ去られた……。
「犯人は女だそうだ……心当たりはないか?」
「もしかしてラッドの妹じゃない? あいつ可愛い妹がいるじゃない?」
「ファラティナだったか。そうだな。美人の妹がいた。そいつかもしれないな」
「待って。あいつの妹って貴族の娘でしょ。そんな魔力量あるかしら? 恐らく魔王よ。魔王が私たち勇者パーティーを潰そうと考えているのよ」
エリスは言う。エリスは悪寒を感じて、体を震わせた。リタの次はか弱い自分かもしれない。そう思うと怖かった。
王城。豪華絢爛に作られたこの城は未だに改築工事が進んでいる。
第七王女・アリスは紅茶を舌で味わいながら、メイドの報告を聞いていた。かつてラッドの味方であり、魔術師としての能力も高いアリス王女。ラッドはこの王女の美しさに見惚れ、求婚も考えたほどだ。
「クスクス。いい気分。お父様の後継者は私。そして夫は強い強い勇者様。私の身は完全に安全ね」
王女と勇者の結婚は明日行われる。そのために盛大なパレードが行われる。次期国王である王女を皆が褒めたたえるだろう。
「あとは魔王を潰すだけね。しっかし、ラッドも馬鹿な男だったわ~、私のことを信用してぇ、私のことを好きになってぇ……キャハハハハ。頭悪~~~~いッ」
足をバタバタさせながら顔を歪めて喜ぶ王女。清楚な王女は醜悪な本性を晒していた。
翌日、勇者と王女の結婚式が行われた。五百万人の民衆が勇者たちを祝福しようと王都に押しかけた。そして、空は真っ暗になり、亀裂から魔王の軍団が現れた!