隠したい子
私は週末暗い部屋でラジオを聴くのを楽しみにしています。
ジジッジジジ
ときどき思い出すことがあるんです。
あれは一人暮らしを始めて半年たった頃のこと。
「はじまった」
「こんばんは〜!」
「もーいーよww」
「朝はご飯派です!」
「パン派」
「公園」
「ご飯、味噌汁、鮭」
「見つけて??」
いつものようにSNSで実況していると、内容が私だけ違うことに気づきました。
ジジッジジジ
ノイズが酷くなった左のイヤホンを外すと耳に息がかかりました。
「コロサレタ」
子どもの声でした。
咄嗟に電気をつけあたりを見まわしても部屋には私以外誰もいません。
眠れず、よが明けました。
スズメが鳴きはじめたころ、気になっていえの向かいの公園へ出かけると、公園の中のお地蔵様に花を供える男がいました。
40代くらいでハンチング帽をかぶった優しそうな風貌です。
駆け寄って話を聞きます。
男はこの近所に住んでいるそうで、穏やかな口調でこれまでのいきさつをすらすらと話してくれました。
「あの日から見つからないんだ」
4年前ここでかくれんぼをしていた子どもがひとり、神隠しにあったそうです。
「あのアパートに住んでた子だよ」
男の指差す先に自分のアパートの部屋が見えゾッとしました。同時に奇怪な現象が腑に落ちます。
「その子きっと殺されっ」
私は反射的に手で口を覆いました。
ニタァと笑う男の肩に、子どもの手が見えたのです。
「ミツケタ」
男の声か子どもの声か分かりませんでした。
体中の毛が逆立ち、叫びそうになるのを必死にこらえ、言葉を訂正し、平静を装いながらコンビニへ逃げ込みました。
「ぶはあ、はあ、はあ、はあ」
今日は駅前のホテルに泊まろう。
このまま家に帰らず引っ越そう。
一生見つからないように。
今でもラジオを聴いているとあの日のことを思い出します。特にノイズがひどい今日のような日は。
貴重な時間を割いて読んでいただいてありがとうございました。
どうぞ皆様素敵な夏を過ごされますように。
皆様のご健康とご多幸を切にお祈りしております。