9 山の子は一人でいい
僕 女の子は、一つの作品です。中に11章がはいる予定です。投稿の仕方が割らず3作品のようになっています。並び替えができません。あちこち捜してお読み下さい。
今の朝は早く明るくなる。私は、朝日と同時に起きだして、身支度をすると、パンを一枚持ち学校に行く。ひんやりした空気が身を包む。穢れない空の朝を楽しむように鳥が飛ぶ。少しだけ山の朝と同じ気持ちになりながら歩いた。
牛乳配達の人が通る。私は物陰に隠れて、その人をやり過ごし、また歩き出して森のほうに向う。田畑の道を通る。
「おはよう。暖かい日になるわね。皆は食事済んだの。楽しく遊ぶのよ」と 畑の片側に腰を下ろして、鳥たちに話した。
「あなた、あまり勢いよく伸びると、畑の人が困るよ。気をつけなければだめ」と 草に言う。「ああ、山の中間は元気かなー」 動物たちを気にしては座り込んで、道草をした。
私はいつも一人でそっと裏門を通り、授業に出る。ぎりぎり間に合う時もある。
「祥子はどこを歩いてくるんだね」と 先生に嫌味を言われる時もある。私は顔を赤らめて、「すみません」と 席に着く。皆は、また遅れたの という顔で見ている。
遅刻はたびたび繰り返していたから。進一は心配しているようだ。授業中の連絡メモは、今は渡してこない。読みもしないで破してしまうからだ。話をしようと身を近ずけても、私はソッポを向いて拒んでしまう。
勝彦とも連絡をしているらしい。夜、自分たちの部屋に居るとき、「祥子、話がある」と ドアから声をかけるが、「何も話なんか無い」と 私は言うだけ。
どれくらいの日、家族や友達と話してないだろう。皆の顔が前より違う。私を見て「どうしたの」 と言いたそう。私のやることはまちがいばかりになるのかしら…。半分町の子になった今は、寂しさがわかる。解っても変えることはできない。誰かを傷つける。今も一人で居る。
いつの日なのか、道草をしていたとき、男の子に声を掛けられた。僕、満男 と自己紹介している。
「君、朝早く一人で畑道を歩いていくだろ」と言う。私は黙ってその子を見た。
「僕、窓から幾度も君の姿を見ていたよ」と また言う。私は無視した。
「同じ学校だろう」と カバンのマークを指差す。マークは見たけど、何も言わない。
「一緒に行ってもいいだろう」と また言う。一緒でも一緒でなくとも登校の支度だから二人で歩くよりほかに無い。道は一本しかないのだから…。町の子は親切なのか、お節介なのか、それとも、人の気持ちを理解しないのかまったくわからない。
「何も言ってくれないのなら、僕が話すからね。君は何で皆に打ち解けないの。男の子は友達になりたくてたまらないんだよ。もっと気楽になればいいのに…」と 私を見た。
「一人で居いだけなの」 いらだってきた。
「一人はよくない。僕がデートを申し込む。プールに連れて行くよ。泳げなければ教える。絶対にいくからね」 なんてずうずうしい子なの。わたしの気持ちも考えないで…。学校に近ずいた。多くの生徒が歩いてくる。私は彼から離れた。
「今度の日曜日、十時に迎えに行く」 私の背中に言う。振り向きもしない。返事もしない。無視した。その後は道を変えた。ローカで顔を見ても、横を向いて無視した。ずっと無視した。だが日曜日が来た。
満男君は、時間通りに家に来た。パパさんに許しを得ている。 部屋に居る私を、勝彦が呼びに来た。
「祥子言ったほうがいいよ。ここのところ、どこにも出掛けてないだろ。外へ出なくてはだめだよ。彼が迎えに来てくれたんだ。早く支度して下りておいでよ」 一生懸命に進める。
「勝彦のバカ、大嫌いだ」 私の目から涙が出てきた。誰も私を解ってくれない。
のそのそプール行きの支度をして下におりた。パパさんが満男君の相手をしてくれていた。
「あまり待たせないほうがいいぞ」と 言われ「ごめんなさい。行って来ます」言いながら玄関へ歩いた。無言で歩いた。
「僕、強引に誘ったようだね」と満男君。
「不安なの。ほかの人と泳いだこと無いから」と私。「そうか、ごめん。気付かなかった」と
私の顔を覗いた。
バスに乗りプールに向った。混雑していた。満男君は、すばやく吊り手を確保してくれた。私の後に立ち押されるのを防いでくれる。バスを下りるときも手を繋いでくれた。 プールは明るい。広い場所に沢山の人が泳いでいる。すごい水着を着ている。自分の姿を見た。手と足が少し見えるだけだ。それでも恥ずかしい。急いで水の中に入り泳ぎだした。
「君すごいね。僕、負けそうだよ」と びっくりしている。
満男君が近寄り、私の手をつかみ、片手は横のほうを指しながら、引っ張り歩き出した。私は不思議に思い彼の顔を見た。
「ここは中級だから、向こうの上級へ行こう」 二人は泳ぎだした。いつの間にか隣は、満男君ではなく、山の魚と思いかえられていたようだ。私は気持ちよく泳いだ。
川の流れの静かな水溜りで泳ぐような気分がした。プールの水は静かだ。川の急流でも泳いでいた私、泳ぎは楽しい。
(もしもいつか、進一がプールに誘った時は、皆のようなすごい水着を着よう。でも、びっくりするかな)いない人のことを考えてはいけないのに、私はかわいそうな女の子。
帰り道、かわいらしいお店に入り、道路が見える席に座り、食事をした。すごく恥ずかしい。男の子と一緒は慣れていない。野菜をかむ音、ジュウスを飲む音を気にした。
「もっとリラックスして食べてよ。僕は上品な食べ方はできないからね」と 言いながら私が除けてある野菜の根元をつかんでゆき食べた。
「それは、うーちゃんのに残しておくの」「うーちゃんてだれ」と聞かれて
「ごめんなさい、兎なの。私の山の友達」
「友達のか…。僕もその中間の一人だ」 そんなの可笑しい。なにか得意そうな様子にこらえられなくて笑い出した。 彼の笑っている顔が輝いている。男の子はこんなになるのかと見つめていた。
「祥子さんの笑顔をはすてきだね」 あわてたが、また笑ってしまった。
「もう、そんな事と言わないでよ」
日曜日、学校に行って驚いた。教室に入るなり優子に話しかけられえた。
「祥子、満男君とプールに行ったの。よくやるー。まったくの驚きよ」 何が驚きなのか解らない。「誘われたから一緒したまでよ」と 私。
「でも満男君、すごい子よ」 何かを含んだ言い方だ。
「何がすごいのよ。普通の高校生に見えたけど」
「まあね。ちょっと喧嘩に強いだけだけど…」 変な言い方をしている。その時、彼女の友達が近寄ってきたから逃れた。
教科書を広げ、その上に顔を伏せた。どうせ反対の人を見ても無関心してるに決まってる。
「祥子、大丈夫か」 進一の声が聞こえた。 「うん、平気」 平気ではない。私はどうかしている。自分が無いみたい。 進一は、話しかけはしないが、時々私のほうをじっと見ている時がある。私も自分からは何も言わない。
授業にも身が入らない。イライラしているのに、またイラつかせる人が来た。 昼休み拓哉君が、ここに居るのが当たり前のようにして、床にどっかと座っている。机に腰掛ける時もある。イスを半分取り上げ、狭いのに二人掛けする時もある。今日は怒っているみたい。
「祥子、プールに行ったんだってなー。どうしてだよ。俺とは、どこにも行かないだろ」と 声が大きい。なぜ、誰もが私の行動を気にするの。ほかっといてくれてもいいのに…。
「その代わり、いつも話してるでしょ」と 私。
「話してるのと、行くのでは違う」
「満男君が誘ってくれたから、行ったまでよ。卓也君は誘ってくれたことないでしょ」と わたしは横の人にも聞こえて欲しいと願った。
「誘えば誰とでも行くんだ」 いやな言い方、頭にくる。
「そんなこと無いわ。私はハンサムの人が好きなの」
「俺だって悪くないぞ」 「見方によるわね」と 言い合っていた。もういや、こんなことしたくない。
「あなた、もう来ないでくれる。友達になれないから」
「俺は嫌だね。また来るよ」と 言いながら午後の授業に戻っていった。
次の日の帰り、おじい様の所によった。母さんの部屋で写真を見て泣いた。今は居ない母さんの小さな時の写真、目がよく似ている。髪の毛が同。、母さんのほうが美人などと話しては、涙を流した。
ほんとにかわいそうなおじい様、一人しか居ない大切な娘を、私は奪ってしまった。私にはきっと鬼が居る。悩ませる鬼が居る。皆の生活を乱す鬼が居る。私は、誰も困らせたくない。私は良い子でいたいんです。 (ああ、 神様)