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第五話

キング「おっかしいなあ? 僕呼んだのオーエンなんだけど。弱いやつが今更何しに来たの? 特にお前。その腕で何が出来るんだよ」

エイト「実際、君を倒せなくても君から彼女を守る事はできました。それだけで十分です」

セブン「そうね。間に合ってよかった……」

デュース「へえ~~君かぁ、キングちゃんって子は♥ よくもうちの仲間に手ぇ出してくれたな? ぶっ殺してやる!」

トレイ「デュース、口が悪いよ……でも、そういう仲間思いなところとっても素敵だね」

デュース「う、るっせえトレイ! 集中させろ!!」

トレイ「は~い」

サイス「……あ」

ナイン「よく耐えた。サイス、ケイト」

ケイト「……ナイン……司令官……」

サイス「な……いん……」


※フラッシュバック

サイス「うわああああ!!!!あああああ!!! お母さん!!!!お父さん!!!!!!ああああ!!!」※両親が死んで泣き叫ぶ幼いサイス

キング「うるせえなこいつ……さっさと殺して……、ッ?!」※剣を振られて避ける

ナイン「ハアっ!!」※剣を振る

キング「……ぶね……なんだぁ? ……お前」

ナイン「お嬢さん、俺のことを見て?」

サイス「……おかあさ……、おと…………(※ここで感情を無くす)」

ナイン「ああ……くそ……、可哀想に……俺が……もう少し早く来ていれば……ごめん……ごめんね。お母さんとお父さんを助けてあげられなくて……ごめん……」

サイス「…………」

キング「ひゃははは!!! もしかしてそいつおかしくなっちゃったの?! ふふふ! 目の前でだあいすきなパパとママが死んだらそんなになるんだねぇ」

ナイン「……せろ」

キング「ああ? 聴こえねえよ、僕のこの能力で(遮られる)」

ナイン「消え失せろ……!!」※低く落ち着いた殺気

キング「ッ……! なるほどな、お前のその制服……エースが言ってたオークションの人間か……。僕も遊びすぎた、一度ここは引いてあげるよ」※居なくなる


ナイン「ふぅ(軽く安堵のため息)……お嬢さん、俺のこと分かる?」

サイス「…………だれ……?」

ナイン「俺はスポットっていう組織の上層……あ、ええと……ちょっと偉いお兄さんだよ。最近なったばかりなんだけどね、はは」

サイス「スポット……」

ナイン「そう。お嬢さん、俺と一緒に来ないかい? ここには君と大切な人たちとの思い出が沢山あるだろうけど、きっと、君はもう……」

サイス「…………?」

ナイン「君を、君だけでも……助けたいんだ……君のお父さんとお母さんが救った命を……なんとしてでも……」※少し涙目になりながら

サイス「……泣かないで……」

ナイン「(少し笑って)ふ……優しいんだね。あのね、今から行くところは君の新しい家だ。家族のような仲間もできるはずだし、それから、俺もいる」

サイス「か、ぞく……」

ナイン「そう。俺のことは、そうだな……兄のように思ってくれていいよ。俺は少し離れたところにいるけど、近くに優しいお姉さんがいるはずだから、その人を頼ればいい」

サイス「お姉さん……?」

ナイン「俺の大切なひとなんだ。きっと力になってくれるよ」

サイス「……わかった……一緒に行く……」

ナイン「ありがとう。俺はクラブって言われてるから、そう呼んで? 本当の名前じゃないんだけどね」

※フラッシュバック終


サイス「ク、ラブ……?」

ナイン「! (小声で)その名で呼ぶな」

サイス「……!」

キング「あ~あ、白けちゃったなあ。そんなに皆で遊びたいなら僕らの施設ラバーにおいでよ。後でオークションに場所送っとくからさあ。じゃあねぇ」

エイト「待ちなさ……!!!!」

セブン「エイト! 深追いはだめよ……まずはケイトとサイスの手当をしないと!」

エイト「……そうですね」

デュース「もう~~折角デュースちゃんが一発ぶん殴ってやろうと思ったのにぃ!」

ケイト「みんな……どうして……」

トレイ「ジョーカーさんから連絡があったんだよ。君たちがキングと接触してるから助けてくれって。あんなに必死なジョーカーさんの声、初めて聞いたからびっくりしたなあ」

エイト「でもオーエンを呼んだって言ってましたね? 詳しいことを聞かずに来たので理解出来ていないんですが、彼らの目的はオーエンなんですか?」

ケイト「わからない……なにも……なにも……!」※泣きそうになる

セブン「ケイト……」

ケイト「なにも……! 出来なかった……! 弟なのに……! あの子は、私の……! 弟なのに……!!!!!」※泣きながら

ナイン「流石に強いな。……頼もしい限りだ」

セブン「え……?」

ナイン「泣きわめくな、スポットの名が廃れる。奴はオークションに潜伏場所を送ると言っていた。その情報を待て、いいな」

セブン「あ、待ってナイン……! トレイ、デュース! ふたりを送ってあげて!」

トレイ「うんわかった」

デュース「任せてよ~!」

エイト「今はゆっくり休んでください、では」

トレイ「それじゃあ行こうか。立てる?」

ケイト「(鼻を啜って)……ありがとう……」

デュース「サイスちゃんも行こ??」

サイス「…………うん」



※P-NS

オーエン「だから!!! なんで俺たちはここで待機してなきゃならなかったんだよ?!」

シンク「オーエン、落ち着けって……ケイトとサイスが休んでるんだ、もう少し静かに……」

オーエン「落ち着いてられっか!! キングって野郎は俺を呼んだんだろうが!! なんでその俺が待機で、ケイトとサイスがボロボロになって、助けに行ったのがこいつらなんだよ意味わかんねえ!」

トレイ「あはは、荒れてるねえ」

デュース「うるっせえ……ほんと紳士じゃねえなあ」

オーエン「んだと?!」

ジョーカー「やめろオーエン。悪いなふたりとも。P-WEのメンバーには管轄外の依頼にも関わらず快く引き受けてもらって感謝している」

シンク「ああ。その上ケイトとサイスのふたりをここまで送り届けてくれて……俺からもお礼を言わせてくれ」

トレイ「いいんだ、お礼なんて。お互い様だしね」

デュース「そぉそぉ。最初に助けてくれたのはそっちだし?」

ジョーカー「助けた? 俺たちがか?」

トレイ「ジョーカーさんが前にオークションに呼ばれた日、皆がお見舞いに来てくれたじゃないですか。そのときにオーエンが言ってくれたんです。お前らの敵は俺が取るって」

オーエン「……ぐッ」※恥ずかしそうに

デュース「デュースちゃん見直しちゃったぁ、あのエイトもすごく感激しちゃってさ~。こっちのチームの雰囲気も一気に変わったっていうか。正直助かったんだよね」

ジョーカー「(少し微笑んで)そうか」

オーエン「やめろ、別にお前らを助けるために言ったんじゃねえ! 話をそらすな!!」

シンク「いや、そうはいっても今回は命がけだった。誰かが死んでいてもおかしくなかったんだ。そんな中負傷しているエイトまで……本当にありがとう」

デュース「いいのいいの。それに結果的には、行ったのがデュースちゃん達でよかったと思う」

オーエン「はあ?」

トレイ「キングの目的はオーエンだった。あそこにオーエンがいたら奴らの潜伏場所であるラバーの存在を知らずに終わっていた可能性がある。それに、エースという人物や獣を使役するやつの得体が知れない以上、一番戦闘力が高いオーエンの体力を温存させられたのは好都合だった」

シンク「なるほど、それを予想してあえてやつらの目的であるオーエンを待機させたってわけだな? ジョーカー」

ジョーカー「(タバコを吸って吐く)ま、そんなとこだ」

オーエン「またややこしいこと考えてたんだなこのおっさん! 腹ん中のもん全部出して話せよ! わかんねえだろうが!!!!」

ジョーカー「大人は全てを語らないんだよ」

オーエン「カッコつけんな! くそが!!」


※ノックする音

ジョーカー「来たか……開けてくれるか、シンク」

シンク「ああ、わかった」

※扉をあける

トリック「おや、珍しいメンバーですね?」

デュース「どおも~トリックちゃん、待ってたよ~?」

トレイ「きっとそれはP-NSとP-WE共通の依頼、だよね?」

トリック「ふふ、はい。とっておきの依頼ですよ。どうぞ」

トレイ「ありがとう。じゃあ、僕たちはこれを皆に見せるために戻るね。依頼内容を確認した後でどう動くかはジョーカーさんとうちのナイン司令官が話し合って決めると思うから」

ジョーカー「ああ、そうなるだろうな。頼んだ」

デュース「もちろん! じゃ、ケイトとサイスによろしく言っておいて。何をされたのかわからないけど、ふたりとも身体以上に精神的にやられちゃってたみたいだから……」

シンク「ああ、伝えておく」

※ふたりが居なくなる


トリック「では皆さんにも同じものを……あっ」

オーエン「貸せ」

トリック「も~~僕のお仕事を取らないでくださいよ~」

オーエン「いまそれどころじゃねんだよ。……ええと……あ? ここって……」

シンク「教会だな……この街で一番大きな教会の地下だ……そこがラバー……オナーのメンバーが潜伏している施設の場所……」

トリック「現在は爆発の被害によって正面の入り口が閉鎖されているんですが、僕がラバーへの入り口を見つけておきました。そこに記載してますので見ておいてくださいね」

ジョーカー「奴らが潜伏している場所に一人で行ったのか?! よくそれで無事に……まさか」

トリック「まあ、僕ですんで」

ジョーカー「……くそ、……わかった、この後ナインと話して今後の動きについて決定する。明日の朝報告するからそれまでは身体を休めておけ、いいな」

シンク「ケイトとサイスは……どうする」

ジョーカー「あの状態では無理には連れていけない、足手まといになるだけだ……」

シンク「そうだよな……わかった。じゃあ俺、飯つくるよ。消化が良くて優しい味のものにしようかな」

ジョーカー「おおいいな、頼む。オーエン、お前も明日に備えておけよ」

オーエン「……ああ」



※夜 ナインと会話中

ジョーカー「ああ……、そうだな、それで行こう。では明日…………ふぅ、いよいよ、か……」


※通話を切った瞬間にバタバタと走ってきてドアを開ける音

ケイト「ジョーカー!!!!!」

ジョーカー「?! ケイト、サイス?! 急にど(う)……」

サイス「オーエンとシンクがいない……!!!!」

ケイト「この周辺には何処にも居ない!!! それから、依頼の紙も……!」

ジョーカー「なッ……?!」

ケイト「どうしようジョーカー……! 多分……ふたりで……!」

ジョーカー「んの馬鹿ども……!!!!!」



※高い鉄塔のようなところに座っているオーエン

オーエン「…………、俺は帰んねえぞ」

シンク「もう驚かないんだな?」

オーエン「さすがに慣れた。お前はずっと俺を見てたからな」

シンク「そりゃあ俺はお前のマザーだから……」

オーエン「そうじゃねえだろ」

シンク「……」

オーエン「最近まで、お前が俺を見てる目は友情でも信頼でもなかった。言葉のとおり監視だよ。でもたまに疑問や不安、あと……恐怖も感じられた」

シンク「……はは、凄いなお前。そこまで分かってたのか。それでよくこの俺を傍に置いたな?」

オーエン「今はもう感じねえからな。別にそこまでお前に興味もねえし」

シンク「ひでえな、仮にもペアだぜ? ……ま、確かに最初は見せかけの、だったけどな」

オーエン「……」

シンク「何も聞かないんだな、お前は。でも興味がねえって言う割には仲間のために怒ったり、自分のせいで傷つけたって責めたりしてる」

オーエン「うるせえな……誰にだって言えねえことのひとつやふたつあんだろ」

シンク「お前にもあるのか? オーエン」

オーエン「…………」

シンク「いいだろ? 俺も話す。もしかしたらこのあと死ぬかもしんねえんだ。一人にくらい話したってよくねえか?」

オーエン「……話したくても話せねえんだよ俺は。記憶がない」

シンク「え?」

オーエン「スポットに所属することになった日が多分最初の記憶だ。それより前のことはよく思い出せねえ。ジョーカーに悪を潰せって、それだけ言われた気がして今までそうしてきたけど最初はなんのためにここにいるのか分からなかった」

シンク「……」

オーエン「唯一数字のコードネームを与えられなかった異端児って呼ばれて、別に悲しいとか、そういうのは思わなかったけど、監視役まで付けられてる俺って一体なんなんだってずっと思ってたよ」

シンク「そうか、それでお前、俺の切り札を意地でも使わなかったのか」

オーエン「(にやり)この俺がペット扱いされてるなんて癪だったしな」

シンク「……悪かったな」

オーエン「謝るな、言っただろ今はもう感じねえって。それに俺はちゃんと答えを見つけられた」

シンク「答え?」

オーエン「そ、だからお前にも感謝してんだ。俺になにかを隠してるとしても、……お前が俺の仲間であることには変わりねえ」

シンク「……(ふっと笑う)、まったく、敵わないな」

オーエン「最初からそういっただろーが」

シンク「ははは、そうだったな!……(少し考えこむ)俺は、何が正しいのかが分からなくなったんだ。俺の絶対的な正解が、そうじゃないのかもしれないと思った。だからお前のことも、ただの友人として見守ることにしたんだよ。ちょっとした反抗みたいなものだな」

オーエン「上等じゃねえか。俺も全てを語らねえ大人とやらにはうんざりしてんだ。俺たちでぶっ潰してやろうぜ」

シンク「ああ、そうだな」



※オークションにて

トリック「(殴られる)ぐぅッ……!」

スペード「貴様!!!!! 何故俺の許可なしに動いた?!?! あの紙にはラバーの場所が記されて居たんだろう?! 我々が今まで何のために計画を進めて来たと思っている?!?!」

トリック「ごふ、ゴホッゴホ」

ダイヤ「寝転がっていないでなんとか言ったらどうなのトリック? 腕がもげて目玉が取れてもなんともないでしょう? あなたは人間ではないのだから」

トリック「はぁ……ふぅ……ふふ」

スペード「なにがおかしい……? 返答次第では貴様を今すぐに八つ裂きにしてやるぞ……お前の主は誰だ? この俺だ!!! 主に逆らってただで済むと思っているのか?! 」

トリック「うるさいなあ……喋ろうにも喋れないじゃないですか」

スペード「なんだと……?」

ダイヤ「お前……一体どなたにそんな口を利いていると……? この御方はスポット上層部オークションのお一人! 偉大なスペード様よ?!?! お前如きが……なんと無礼な……!!!」

トリック「ええ、存じ上げておりますとも。スペード様、ダイヤ様、今までよくもボロ雑巾のようにこき使ってくださいました」

スペード「……何のつもりだトリック……? ハッ……貴様……まさか……」

トリック「僕の主がお前……? 笑わせないでください。僕が仕えているのは後にも先にもお一人だけだ」

ダイヤ「スペード様……!!! まさかこいつ、あれをラバーに……!! ……!(スペードに怯える)」

スペード「よくも……よくもよくもよくもおおおおお!!!! 許さん……許さんぞトリックウウウウ!!!!!!!!!」

トリック「……期待、してますよ、皆さん」


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