第二話
※車のなか
オーエン「おいおっさん!! オークションとやらにはまだ着かねえのかよ!」
ジョーカー「ちゃんとシートベルトしろ! 国の正式な組織がシートベルトの未着用で捕まったりしたら社会に顔向けできねえぞ!!」
シンク「はは! オーエンはいつも元気だなあ」
ケイト「笑ってる場合?! オーエンも制服そんなに着崩してないでちゃんとしなって!」
オーエン「そんなに眉間にしわ寄せてっと余計にブスになんぞケイト」
ケイト「なんですって―――????!!!」
シンク「おいおいオーエン、女の子にそんなこと言っちゃだめだろ」
ケイト「よおくみてみなさいよ! こんな可愛い子他に居ないでしょーが!」
オーエン「あ~? ……ああ、お前はどうでもいいけど、いつもつけてるそのペンダントは確かに綺麗だな。何処で買ったんだ?」
ケイト「グッ……ペンダントね……(少し小声で)そうだと思ったわよ……」
オーエン「なあって!」
ケイト「ああもう! これは買ったんじゃなくて弟に貰ったの!」
サイス「ケイト……弟いたんだ……」
シンク「確かに、俺たちはコードネームで呼び合ってるくらいだ。その辺の話はしたことなかったな」
ケイト「機密情報を扱うから素性を明かさないのがルールだものね。でも気にする必要ないわ。私の双子の弟は、数年前に行方不明になってるから……」
シンク「姉にプレゼントを送るなんてきっと素敵な弟なんだろうな。見つかることを俺も願ってるよ」
ケイト「ありがとう、シンク」
オーエン「なんだよ、じゃあどこで手に入るかわかんねえじゃねえか。買ったあと高値で売ろうと思ってたのによ」
ジョーカー「オーエン~?」
オーエン「あ~あ~冗談冗談。チッ、うるせえなあ……あ? あのでけえ建物なんだ?」
シンク「あれがオークション。俺たちが所属しているスポットの上層部だ」
トリック「オークションへようこそ、P-NSの皆さん」
ジョーカー「(タバコを吸って吐く)やあトリック。向こうはもう来てるのか?」
トリック「はい。既に会場にてお待ちです。それよりもジョーカーさん、申し訳ございませんが当館は禁煙でして……」
ジョーカー「ま~ま~そう固い事言わずに」
シンク「随分と久しぶりに会うなあ。あいつら面白いから好きなんだ、俺」
ケイト「まあ個性はあるわよね」
ジョーカー「ったく、談笑しに来たんじゃないんだからな」
オーエン「俺は美味い飯が食えりゃそれでいい」
ジョーカー「おい……俺の話聴いてたか?」
トリック「ふふ、ではご案内しますね」
※大きな扉を開ける
トリック「P-NSの皆様が到着されました」
ジョーカー「すまない、待たせたな」
エイト「全くそのとおりですね。こちらの貴重な時間を無駄にしてしまいました」
デュース「デュースちゃん達が来たのもついさっきでしょぉ? そんな事言っちゃあダメ、だよぉ?」
エイト「君こそ、顔がいい男の前だとそうやってすぐに自身を偽って……恥ずかしい」
デュース「なんだとテメエ」
トレイ「デュース、エイト、や、辞めよう……? 喧嘩はよくないよ……」
デュース「だってよトレイ、こいつはこの俺様を侮辱したんだぞ? 生かしちゃおけねえ! オモテでろおらあ!」
トレイ「せ、折角君は可愛いんだから……それにP-NSの皆の前だよ……?」
デュース「かッ……か、か……きゅ、きゅうにそんな事……なよなよトレイのくせに!!」
トレイ「ええ~~……本当のことなのに……」
シンク「はははは! やっぱりお前ら面白いなあ、安心したぜ!」
ケイト「クセありすぎでしょ……」
サイス「たのしい……」
セブン「P-NSの皆久しぶりね。再会そうそう騒がしくてごめんなさい」
ジョーカー「久しいなセブン。ナインが居ないようだが……」
セブン「彼ならさっきこの部屋から出て……そろそろ帰って来る頃だと」
ナイン「貴様か」
オーエン「うお! びっくりした……お前急に後ろに立つなよ!!」
ジョーカー「おおナイン、忙しいところ悪いな……、?……ナイン?」
ナイン「……」
オーエン「な……なんだよ……」
ナイン「始めよう、貴様らも席につけ」
トリック「では皆様お揃いですので、只今よりP-NS、P-WE合同のミーティングを開始します」
ジョーカー「ではまず俺から。P-NS司令官のジョーカーだ。最近の依頼内容について報告する。ここ数日は特に討伐型が増加傾向にある。そしてそのほとんどの対象が獣だ。オナーに獣を使役する奴がいるんじゃねえかって話だが俺たちがそのオナーのメンバーに接触したことはまだない。獣についてだが……シンク」
シンク「最近で一番厄介だったのは怪鳥だな。体長は約7~8メートル。身体を覆っていた羽毛にダメージを吸収されて、オーエンでも手こずったくらいだ」
セブン「それは珍しいわね……どうやって対処したの?」
ケイト「切り札を使ったわ。あたしとオーエンふたりとも」
デュース「ふぅん~、あのオーエンがねぇ。相当強敵だったんだぁ~」
オーエン「ふん、あんなの大したことねえっつの」
エイト「あまり調子にのると痛い目をみますよ? それに、成績が優秀だからって君がコードネームも与えられない異端児であることに変わりはない」
オーエン「……ッ」
トレイ「え、エイト……! それは良くないよ。オーエンに謝ろう……?」
エイト「本当のことじゃないですか。どうして僕が謝る必要が……」
ナイン「エイト」
エイト「ッ……話を中断してしまいましたね、すみませんでした」
セブン「うちのエイトがごめんなさいね、オーエン」
オーエン「……雑魚がいくら吠えたところで別に気にしちゃいねえよ」
ジョーカー「はぁ……続けさせてもらうぞ。この状況からオナーが何らかの目的で動き出したことに間違いはない。だが、あまりにも奴らに関する情報が少なすぎる。今回の合同ミーティングは双方が確認できている情報の共有と今後の協力について話し合うために設けた。悪いがそちらも報告してもらえるか?」
ナイン「P-WE司令官、ナインより報告する。貴様ら同様、オナー関連の依頼が増加傾向だ。だがこちらは爆弾の処理、爆発による市民の避難補助が主な内容になる」
ケイト「爆発……そう言えば何回かニュースになってたような……あれってオナーだったのね!」
ナイン「こちらはオナーに爆弾を扱う者がいるのではと考えている。貴様らの推測と合わせると少なくとも2名は存在するというわけだ」
ジョーカー「なるほどな……メンバーと接触したやつはいるのか?」
ナイン「おい」
デュース「はぁい! デュースちゃんから説明しちゃうよ! 完全に接触したわけじゃないんだけどぉ、怪しい影をみたことはあるんだあ」
シンク「怪しい影……?」
デュース「そお♡ しかもふたつも! 依頼対応中、こっちをずっと監視してたから多分オナーのメンバーなんじゃないかなぁって思ってるの~」
ジョーカー「そんな大事なことどうして今まで黙ってたんだ……! そのときに共有を……」
ナイン「必要ないと判断した。貴様らとこちらは別だ。こちらの問題はこちらで対処するのが当然だ」
ジョーカー「ぐ……相変わらず冷たい奴だなお前は……」
セブン「でも、今回のミーティングに参加を決めたのはそうも言っていられないと思ったからなの。皆の言うとおりオナーはまだまだ不明確な存在……協力は不可欠だわ。ね、そうよね、ナイン……?」
ナイン「……」
エイト「またナインのフォローですか、セブン。ここで色事しないでくださいよ、不快です」
セブン「私はそんなつもりは……それに彼は……」
エイト「昔は優しかったと言うんでしょう? 聞き飽きましたよ。男女交際など不衛生です、くれぐれも僕の足を引っ張らないでください」
オーエン「おい、そいつ仲間だろーが。悪をはき違えんじゃねえよクソメガネ」
シンク「悪を……」
エイト「なっ……君には関係ないでしょう! これは僕とセブンの問題です!」
デュース「相変わらずエイトは嫉妬か~~可愛いやつぅ! このこの~!」
エイト「ち、違うッ!!!」
ケイト「なあんだ、そうなんだあエイト~?(ニヤニヤしながら)」
エイト「違うといっているだろう!!!」
ジョーカー「えー……と、つまり協力はしてくれるんだよな?」
ナイン「今後はそのつもりだ」
ジョーカー「そうか、よかったよ。偶然だが対応している内容もチームそれぞれに適任だ」
シンク「スピードと攻撃力に長けている俺達が獣、守備と爆発の無効が可能なそちらが爆弾処理ってことか。確かにそのとおりかもな」
セブン「引き続き新たな情報を得た際にはその都度共有するようにするわ。メンバーについても2人だけとは考えにくいものね」
ケイト「ありがとう、セブン! 頼りにしてるわ!! 私はセブンとナインが仲直りするのも応援してるからね!」
セブン「(困ったように笑う)ええ……ありがとう……」
オーエン「なああ、もう終わったかよ? 腹減って死にそうだ」
サイス「お腹すいた……」
ジョーカー「ああ……まあいいか。トリック」
トリック「はい。それではこれにてP-NS、P-WE合同のミーティングを終了します。お料理をお持ちしますね」
オーエン「しゃああ飯ーーーー!!」
サイス「めしー」
ケイト「サイス!! そんな汚い言葉使っちゃだめ! ご飯って言って! ね!」
シンク「ははは! 本当にそればっかりだなーオーエンは!」
エイト「あなた方ちょっとは静かにできないんですか?! 野蛮ですよ!!!」
オーエン「はあ?! ネチネチうるせえお前に言われたかねー!!!」
デュース「あ~もうやってらんねえ……俺様しーらね」
ジョーカー「(タバコを吸って吐く)うるせえ……」
トレイ「あ、はは……」
セブン「ふふ、にぎやかでいいわね。ね、ナイン」
ナイン「オーエン……か」
セブン「え?」
ナイン「…………」
オーエン「は~~食った食った~~」
ケイト「ちょっとオーエン! あんたサイスのデザートも食べたでしょ!!!」
オーエン「ああ~~? 残ってたから要らねえのかと思ったんだよ」
ケイト「そんなわけ無いでしょ!!! サイスはあとからゆっくり食べようとしてたんだから!」
サイス「ケイト……大丈夫……ケイトが半分くれたから……」
オーエン「サイスもこう言ってんじゃねえか!」
ケイト「サイスが優しいだけよ!! あんたってやつは~~!」
ジョーカー「お前ら頼む……いい加減静かにしてくれ……」
シンク「そうだぜ? ジョーカーのことは労ってやんねえと。歳を取ると騒音が辛くなるんだからな」
ジョーカー「シンクまで俺をおっさんみてえに……俺……悲しい……」
シンク「それにしても獣を使役する力と爆弾を扱う力か……一体どんな奴らなんだろうな?」
ケイト「ただ動物の躾をして動かしたり、爆弾を作る事ができるってだけならいいけど……それがあたし達の契約みたいな能力だとしたら普通の人間じゃないってことよね。つまり……」
サイス「契約をさせた人間がいる……」
ジョーカー「ま、そういうことになるな」
オーエン「相手が何人いようがどうでもいいっての。俺はそいつらをぶっ飛ばすだけだ」
シンク「……本当にそうか?」
ジョーカー「……?」
オーエン「あ? どういう意味だよ」
シンク「オーエン、俺たちは一体何のために戦ってると思う?」
オーエン「はあ? 悪いやつをぶっ飛ばすのに理由なんていらねえだろ」
シンク「その悪いやつってのはなんだ? どうして俺たちはその悪と戦ってる? 俺たちは……一体なんだ……?」
ケイト「シンク……?」
オーエン「……はぁ。何いってんだ、散々お前が俺に言ったんだろ。俺たちは現社会の秩序を正しい方向に導くためにいる。悪いやつってのはそれを乱すやつらだ。変なものでも拾い食いしたか? 飼い主さんよ」
シンク「……そうか。(ニカッと笑って)よおく分かってんじゃねえかオーエン! さすがは俺の相棒だぜ!」抱きつく
オーエン「うげえ抱きつくなっての気持わりい!」
ケイト「へ~~珍しいこと聴いちゃった! あたしもサイスにぎゅうしちゃお~~」※抱きつく
サイス「ん~~~~~」※抱きつかれる
ジョーカー「(微笑ましくも呆れたように)全くお前らは……。(シンクの言葉が引っかかる)…………」
※オナー潜伏場所「ラバー」
エース「おかえりなさい、我が子どもたち。彼らの様子はどうだった?」
キング「どうやら手を組んだみたいだよ。ふふ、いよいよって感じだね!」
エース「やはりそうなのね……素晴らしいわ。可愛らしい少女に気配を悟られた件についてはどうかしら」
テン「私達の姿を見られてはいないようでした。以後十分に留意します」
エース「そうね。きっとそのほうが後にいい方向へ導いてくれる……」
キング「さっすが! やっぱり僕らのエースは考えることが違うや」
エース「ふふ、ありがとうキング。可愛い我が息子……。次はあなたの好きにしていいわよ。少し手荒にしても構わないわ」
キング「本当?! やったあ、僕いい加減に手を抜くのはうんざりしてたんだ!」
テン「キング。あなたは人間を殺しすぎよ。それはエースの望みではない」
キング「うるさいなあテンは。こういうのに多少の犠牲はつきものだろ? エースのことを一番に考えてるのは僕なんだ。口をださないでくれるかな」
エース「ふふふ、私のことをそんなに想ってくれているのね……」
キング「もちろんだよ。僕はエースのためなら何だってするよ……(吐息多めに)」
エース「嬉しいわ。でもテンの言うとおり、私の望みは虐殺ではない……私を悲しませることは辞めてちょうだいね……?」
キング「あぁ…分かったよ。エースの嫌がることはしない……絶対約束するよ……(吐息多めに)」
エース「私だけの力では、この望みを叶える事はできない……あなたも手伝ってくれるわね? テン」
テン「はい、全てはエースの御心のままに」
エース「もう少し、もう少しよ……もう少しでスポットを壊滅させる準備が整う……」




