花火大会に行こうとしたら幼馴染のせいで二対二になった件について ~あたしもワンチャン狙ってたけど彼女のが積極的だとは思わなかった~
「ねぇ、みんなこれ行かない?」
そう言って凛はあたしたちに一枚のパンフをみせてきた。
「え、なになに?」
すかさず若干茶髪がかったボブの美来が駆け寄る。
「へーこんなのあったんだ、楽しそうだね」
さっきまであたしと話していた可奈もいつの間にか凛のほうへ移動していた。
「はい、結衣」
「ありがと可奈」
可奈は少し離れたところにいたあたしのためにパンフを渡してくれた。
「来週末かー、私は行けるよー」
あたしが可奈にもらったパンフを熟読していると美来が行けると答えていた。
パンフには来週末七時半から高校の近くで花火大会があると書いてあった。
「私も大丈夫だよ? 結衣は?」
「ん~あたしも今週末はバイト入ってなかったと思う」
予定表を見てみたが案の定シフトは入っていなかった。
「やったーじゃあ結衣もいけるんだね」
あたしがいけるとわかると可奈は自分のことのように喜んでいた。
「じゃあけって〜、高校の近くでやるからいつものカフェの前に集合してそこから行ったんでいいよね?」
「いいんじゃない」
そんなことを話しているとガラッと勢いよくドアを開け、担任が入ってきた。
「おーいっ! 本鈴なったぞ、席付けっ!」
教師の声を合図にあたしたちは各々の席へ戻っていった。
◇
あれからもう十日程度たつ。
いつの間にか花火大会は明日に迫っていた。
あたしが形だけでも机に座り教科書とにらめっこしていた時、突然スマホが鳴り出した。
着信かな?
ラッキー勉強さぼる口実ができた。
「どうしたの可奈こんな夜中に珍しいじゃん」
と言いつつもあたしは内心ウキウキだった。
「いやー、声聞きたいなーって」
スマホ越しに聞く可奈の声は少しだけ緊張しているようだった。
「そんなわけないじゃん、絶対なにか隠してるでしょ?」
明らかに普段通話するときとトーンが違うので、何か隠しているのはバレバレだった。
「あ、やっぱバレた?」
「バレるに決まってるじゃん、今日学校で話したんだし」
可奈嘘隠すの下手すぎ~。
あたしは可奈の嘘が看破できたことでほくそ笑んだ。
「まあそうだよねー…………、実はさ、明日の花火大会途中まで一緒に行かない? って思って……」
可奈はなにか大切なことでも告白するかのように言ってきた。
「カフェまでってこと?」
「そうそう、いいかな?」
なんかもっと重大なこと言うのかと思ったけど、そんなことか。
「いいよー、あたしが可奈の家に行ったんでいい?」
「あ、来てくれる?」
「行くよーだいじょうぶ」
あたしももともと可奈の家に行くつもりだったし。
「じゃあそれでお願い、六時半ごろでいいかな?」
「りょーかい」
「ありがと、おやすみ」
「んーおやすみ」
そう言うとあたしはさっきまでにらめっこしていた教科書を無視して、スマホを弄りはじめた。
◇
翌日あたしはまた教科書とにらめっこしていた。
複素積分とかマジなにに使うんだよ……。
教科書を眺めているだけで頭がショートしていく気がする。
あたしが唸っているとピロンとスマホが鳴った。
「あ、メッセきた。誰からだろ?」
「えーっとなになに……、『ごめん結衣、今日行けるの七時ごろになりそうだから先に行ってて』か……」
メッセがきて慌てて時計を確認すると短針はすでに六時を超えていることを指し示していた。
ん~これから準備しても多分間に合わないよね~……。
「『いいよ、まってるから一緒に遅れて行こう、七時ごろそっちに着いたんでいいかな?』っと」
これであたしも堂々とゆっくりできる。
気を取り直して漫画を読もうとベッドに横になると再度スマホが鳴った。
「あ、返信早い。『ごめん、ありがと』」
やっぱどうせ遅れていくならちょと綺麗なかっこしたほうがいいかな~。
「ねーおかーさん、浴衣着付けて〜」
「そういうのはいつも早く言いなさいって言ってるでしょ……」
「ごめんごめん」
そう言いながらあたしはお母さんのいる一階に下りて行った。
◇
「おまたせ」
あたしが玄関で待っているといつもの黒髪を綺麗に結ってうなじが見えるようにした可奈が出てきた。
黒髪に雪のように白いうなじと水色の浴衣が映えている。
「全然大丈夫だよ、あたしも浴衣着れてよかったし」
そういうあたしは適当に上げた髪に、紫色の浴衣だ……。
「あ、ほんとだ。結衣に似合ってるね」
お世辞だとわかっていても幼馴染からの似合ってるはいつ聞いてもうれしい。
「ありがと、てか可奈もかわいいじゃん」
ほんと、かわいいよ……。
すれ違ったら十人が十人中芸能人か何かと勘違いして振り向きそう。
「ありがと」
あたしの賛美をさらっと流すと会場のほうへ歩き出した。
「可奈まで着てくるとは思ってなかった」
可奈のことだしてっきりなにか抜けられない予定でもできて遅れるのかと。
「ちょっと時間できたからね~」
そう言うと可奈は似合ってるでしょと言わんばかりにあたしの前でぐるぐる回って見せた。
頭からつま先まで、どこを見ても完璧に似合っていた。
「あ、そうそう、凜には遅れるって言っといたから」
あたしは急がなくてもいいことを可奈に伝える。
「ありがと。で、なんだって?」
「あの可奈が遅れるなんて珍しいって」
まああたしもそう思うけど……。
「えーなにそれひどくない、あのって……」
可奈は頬を膨らませて全力で不満を表明してきた。
かわいい……。
「けどあたしも珍しいって思うよ」
実際可奈は優等生だしね。
「そうかな……」
可奈は不思議そうに首を傾げた。
「うんっ! だって可奈今まで遅刻したことほとんどないし、テスト前とかでも三日前には全部終わらせてあたしに貸してくれるじゃん。だから」
あたしはパッと思いつく可奈の優等生っぽいところを上げてみた。
「いや……、それは……。そうしないと結衣絶対赤点取るじゃん……?」
可奈は申し訳なさそうに伝えてきた……。
まあその通りだけど……。
「否定はしないけどさ……」
あまりに残酷な事実に可奈を見ることができない……。
申し訳ないです……。
「だから私は結衣のために頑張って早く終わらせてるの」
目を反らしたあたしの頭をしっかりと押さえて、あたしの目を見ながら言ってきた……。
「そう言われちゃうとなにも言えない……」
弁明のしようがなかった……。
「私だってほんとはみんなと一緒に『提出物終わってないやばい』とか『前日徹夜で勉強した』とか言いたいんだよ」
冗談っぽい口調にわざと大きな身振りを付けて言ってきた。
ああ、あたしがいなくても可奈は可奈なんだな……。
「ごめんなさいお母さん……、毎回ありがとうございます」
冗談ぽい可奈にあえてあたしも冗談で返す。
まあほんとにお母さんぽいんだけどね。
「ちょっ、誰がお母さんだよ」
お母さんがよっぽど面白かったのかいきなり笑い始めた。
おなかを抱えながら笑う人って本当にいるんだ。
「えーだってもうそこまで考えてくれると保護者って感じじゃん?」
「うーん、私的に結衣は妹って感じだから姉がいいな~」
笑いすぎて涙が出てきたのか片手で涙をぬぐいながらあたしの頭を撫でてきた。
「まあ姉でもいいけどさ、おね~ちゃんっ」
そう言ってあたしは可奈に抱きついた。
急に抱きつかれたせいか可奈が何歩か後ずさる。
「あ、ごめ、ちょっとまって」
抱きついていたあたしを剥がすと突然しゃがんでしまった。
「ん? どうしたの?」
「最悪、花緒切れたっぽい……」
暗くて可奈の手元がよく見えないが、下駄を弄っているみたいだ。
「ほんと?」
「暗くて見にくいけどたぶん……」
何度か足を下駄に入れては脱げるのが分かる。
「じゃあ、はいっ」
「ん? 急にしゃがんでどうしたの?」
「おぶってあげる」
あたしは可奈が乗りやすいようにしゃがんだ。
「いいの?」
可奈は申し訳なさそうに尋ねてきた。
「いいって、可奈軽いから楽だし」
それに、あたしが抱きついたせいで切れちゃったのかもしれないしね。
「ありがと」
そう言うと可奈はゆっくりとあたしに体重を預けてきた。
「ただ……、このままだと花火間に合わないかな……」
おぶされながら可奈は心配そうに言ってきた。
「まあ、二人で見ればいいじゃん」
可奈が深刻に考えないようわざと明るく言ってみる。
「そうだねっ!」
可奈の声はさっきよりワントーンほど高かった。
「なんでちょっと嬉しそうなの?」
思わずあたしはツッコむ。
「えっ、そんなことないよ」
そんなことはないと言っても可奈の声は格段に高くなっていた。
「まあいいや、あのさバッグからスマホ取ってくれない」
両手が塞がって取れないので可奈に頼む。
「いいよー」
そう言って可奈はあたしの胸元に手を突っ込んできた。
「え、ちょ、どこさわってるの?」
予想外のところを弄られて戸惑ってしまった。
「あ、違ったごめんごめん」
そう言うと可奈はバッグの中を探し始めた。
「絶対わざとでしょ」
わざと不機嫌そうに言ってみたが、可奈は気にも留めてない風に返事してきた。
「え~そんあことないよ~、はいスマホ」
「ねえ、今あたし画面触れないから凜にかけてくれない? パスワード知ってたよね?」
「りょーかい」
そう言うと手早く操作してあたしの耳に押し当ててきた。
「もしもし、あたしあたし」
意外にも凜はすぐに出てくれた。
「結衣? どうしたの?」
「いやーちょっとさ花火始まる前にそっちに行けそうにないから先に行っててくれない」
「いいけど、別に待つよ?」
「いや大丈夫、時間かかりそうだから」
実際あたしの体力もなくなってきたしこのままだとあたしたちが会場に着く前に花火が終わりそうだ……。
「そう? なら先に行くけど……」
「ごめんね……」
一通り話し終わると凜のほうがうるさくなった。
どうしたんだろ?
「あそうだ、美来が可奈に代わってほしいって」
ああ、それで騒がしかったのか。
てか、美来が可奈に?
「え? 可奈に?」
「そうらしいよ」
めずらしいな、あの二人話すんだ。
「はい、可奈。美来が代わってほしいって」
「もしもし代わったよ、うん、うん、大丈夫だったよ。ありがとう、うん、じゃあね」
予想以上に可奈と美来の会話は手短に終わった。
「もういいの?」
「大丈夫ありがと」
そう言うと可奈はスマホをあたしのバッグに戻した。
「そういえば今日なんで遅れたの?」
さっきの疑問を可奈に聞いてみることにした。
浴衣着るだけなら遅れる必要もなさそうだし。
「ん~なんで? ね~……」
言いづらいのか可奈は押し黙ってしまった。
「いやーさっきも言ったけど可奈が遅れてくるなんて珍しいなーって思って」
「やっぱめずらしい?」
可奈は不思議そうに尋ねてきた。
やっぱ可奈の中で可奈は優等生じゃなのか。
「うん、ちょっとした日常の謎って感じかな」
「なぞって」
可奈は楽しそうに笑う。
「えーちがう?」
可奈は首元に回していた手を少しきつめにしてあたしにしか聞こえないよう耳元でそっとささやいた。
「まあそうかもしれないけどさ。私が遅れた理由はね……、結衣と二人きりになりたかったからだよ」
「えっ?」
聞こえてはいたが、予想外の答えに思わず聞き返してしまった。
「もう一回言うの恥ずかしいんだけど……」
背負っているせいで顔は見えないが耳まで真っ赤になった可奈の顔が簡単に想像できた。
ただやっぱり可奈の本心を確認したくなってしまう。
「本気でそう思ってるの……?」
「こんなことで嘘つくわけないじゃん……」
あたしが聞き返してきたのがお気に召さないのか、可奈は少しだけ足をばたつかせてあたしのことを蹴ってきた。
「ねぇちょっとそこで休まない?」
このままでは埒が明かないとおもい、近くにあった公園で話せないか提案してみる。
あとそろそろあたしの体力がなくなりそうでヤバイ……。
「いいよ……」
不満はありそうだが一応承諾してくれた。
「ほんき?」
あたしは可奈の顔を見ながら改めてさっきのことを確認してみた。
「本気だよ……」
可奈の答えは変わらなかった。
「そっかー……」
どうしようか……。
こんなときどんな顔で可奈のことを見たらいいのかわからない……。
「花火だけじゃなくて、いろいろなところに結衣と一緒に行きたいな……」
恥ずかしさを我慢しながら振り絞るように可奈は言ってきた。
「……あたしも可奈と行きたいかな」
これが適切な返し方だとは思わないけど本心を包み隠さず言ってみた。
お互いとも石のように押し黙ってしまい気まずい沈黙が訪れる……。
すこし経って先に口を開いたのは可奈だった。
意を決したようにあたしの目をしっかりと見つめ、あたしの手を握りながら言ってきた。
「あのさ……、結衣が好きです……、付き合ってください」
えっどしよう……。
あたしが告白されたと認識すると可奈にも聞こえるんじゃないかというぐらい心臓がバクバク言い出した。
あたしの働かない頭で必死に考え抜いて出した答えはこれだった。
「あたしでよければ……」
なんというか、相手のことが本気で好きだと告白されたほうも返事をするのに緊張する……。
「ありがと……」
可奈も顔を真っ赤にして応えてくれた。
二人とも顔を赤くしてまた黙っていると突然夜空がピカッと光り、数秒遅れてドォーンという音が響いてきた。
「あ、花火っ!」
花火の音は沈黙を破るのに充分だった。
「始まっちゃったね」
少しだけ残念そうに可奈は言った。
やっぱ会場で見たかったかな……。
あたしがそんなことを考えながら花火に見惚れていると、急に可奈があたしの首に手を回してきた。
「ごめん……」
と言う言葉と共に唇に柔らかいものが触れる。
あたしはなにも言わず黙ってそれを受け入れた……。
◇
「花火綺麗だったね……」
「そうだね……」
いきなりキスされたせいか花火を見終わった後もあたしたちの間には気まずい雰囲気が漂っていた。
お互いの手を繋ぎながら家に向かって手を繋ぎながら歩いていると突然可奈が言った。
「いきなりキスしてごめん」
「驚いたけど大丈夫だよ……」
あたしからできる気はしないし、してくれて嬉しかった。
「本当に私で良いの?」
可奈は恐る恐ると言う感じで聞いてきた。
「あたしこそ……」
可奈に釣り合う人はもっといるのに、ほんとにあたしでいいのかわからなかった……。
「私は結衣がいいなー」
そう言いながら可奈は少しだけ強く手を握ってきた……。
「そっか~、ならこれからもよろしく」
「結衣と可奈遅いね……」
凛と美来はもう十五分以上約束のカフェで待っていた。
「一応結衣から遅れるって連絡はあったけどね」
と、とつぜん凛のスマホが元気よく着信の存在を知らせてきた。
「おっ、噂をすればかな」
そう言う美来を尻目に凜は少しだけ美来から距離を置いて話し始めた」
すこし離れているが、美来からもなんとなく会話の内容が聞こえる。
「結衣? ど……の?」
「……、……待つよ?」
「そう? なら先に行くけど……」
凜が結衣と話していると美来が何かを思い立ったように凛の近くへ移動した。
「ねぇ凛、結衣と話してるんでしょ? 終わったら加奈と話したいから代わってくれない?」
凜は美来に分かったとジェスチャーで伝えると美来を手で追い払った。
「あそうだ、美来が可奈に代わってほしいって」
「そうらしいよ」
そう言うと凜は美来を呼んでスマホを渡すと元居た席に戻っていった。
「もしもし美来だけど、加奈ちゃん?」
「ちゃんと二人きりになれそう?」
「そうなんだよかった」
「え? 大丈夫だよ、私も凛と二人きりになりたかったし」
「じゃあね、互い頑張ろ」
そう言うと美来は通話を切った。
「ごめん凛、貸してくれてありがとう」
席に戻った美来は凜にお礼を言いながらスマホを返してきた
「結衣と加奈来られないってね」
「らしいね~、どうする? もう時間ないし私たちは私たちで行こうか」
「そうだね」
そう言うと二人は会計を終え、会場に向かって歩き出した。
◇
「結構混んでるね」
会場に着くなり開口一番美来はこう言った。
「四人だと誰か迷子になったかも知れないし、二、二でよかったね」
凛のそんな言葉を聞きながら、美来は凜に手を差し出した。
「ん……」
「ん? どうしたの?」
美来は意味が分かってないらしくキョトンとしていた。
「この人込みだと二人でも迷子になるかもしれないし、手つないで」
美来は照れくさそうにしながら言った。
「あ、ごめんごめん」
凜は美来に言われてからそっと手を握る。
「全部言わせないでよ……、バカ……」
美来はそっとつぶやいた。
「今何か言った?」
幸いにも凛には聞こえなかったらしく首を傾げている。
「なんでもない、行こっ!」
そう言うと美来は凛の手をしっかりと握りなおし、駆け出した。
「ちょっと、走らないでよ、あぶないっ……」
突然走りだされて、凜は転びそうになる。
「いいじゃん、そういう気分なの」
美来は凛の文句を無視しながらどんどんスピードを上げていく。
しかしながら先に体力の限界を迎えたのは走りだした美来だった……。
膝に手を突きながら苦しそうに肩で息をしている。
「ねえ、美来平気?」
凜は心配そうに美来の顔を覗き込んだ。
「だいじょうぶ……、だいじょうぶだから……」
美来の息切れは収まる気配がない。
一応美来自身は大丈夫と言っているがそんなことはないだろう。
「ねえそこのベンチで休まない?」
「けど……、花火が……」
「大丈夫開けてるからたぶんここからでも見えるよ」
そう言うと凜は美来に座るよう促した。
「ごめん……ね」
美来はそう言いながら息を整えた。
「大丈夫?」
そう言うと凜は美来を抱き寄せた。
「うん、もう平気」
美来は凜に全てを委ねるように全体重を預けているように見えた。
「これより、第……花火……会…………いたします」
喧噪のせいでアナウンスが上手く聞こえないが、なんとなく始まったのはわかる。
烏合の衆に等しかった人混みがまるで誰かに支持されたように一定の方向を向き始めたからだ。
ざわめきが静まった後薄明の空にいきなり大花が咲いた、そして数秒遅れてドーンっという力強い花火特有の打ち上げ音が響いてきた。
「始まったね……」
「ね~、綺麗……」
凜も美来も花火に夢中になっているようだ。
「凛と一緒に来れてよかった。大好きだよ」
その時ひときわ大きな音によって美来の声がかき消させる。
「ごめん、今なにか言った?」
「な~んにも、それよりほら花火みよ」