第5話 俺はキャバクラ豪遊できるのか?
連載開始5時間しか経っていなけど、もう、ブクマ52までなりました。
ありがとうございます。
嬉しいから、もう1話投稿しましょう。
「いらっしゃいませ」
いつもの黒服さんが俺を迎えてくれる。
この店は俺が住んでいるアパートの最寄り駅の駅前にある店だ。
それも、3店ほどあるキャバクラのうち、一番安いところ。
昼飯を喰って、その後4時間くらいネットカフェで漫画を読んで時間つぶしをした。
そして、今は午後6時。
このキャバクラの開店時間だ。
午後6時からオープンするこの店のゴールデンタイムと言える。
なぜなら、このキャバクラ。
開店から19:00直前まで、セット料金が2900円なのだ。
その後、1000円づつ上がって、最後は5900円になる。
一番安い時間に比べてなんと倍以上。
どうして、そんな時間にお客が来るのかが謎でしかない。
開店直後のゴールデンタイムに入らないのは、絶対に損なのにな。
という訳で、俺は開店を待ってキャバクラに入った。
この店は、俺が唯一繰り返し来たことがあるキャバクラ。
もちろん、繰り返しと言っても常連になっている訳ではない。
フリーターの俺としては、週に何回もキャバクラに通えるほど金がある訳ではない。
どうがんばっても、月に2回ほどが限界だ。
そのペースで繰り返し来ているキャバクラがここだ。
「今日は指名どうします?」
「フリーで」
黒服さんは俺の顔を覚えている。
だから、俺がフリー専門なのは知っている。
指名をすると指名料が1000円かかる。
だから、俺はフリー専門だ。
それでも、この黒服さんはマニュアル通りに指名の有無をちゃんと聞く。
なかなか、真面目な黒服さんなのだ。
「こちら、ミキちゃんです」
「いらっしゃーい」
彼女はミキちゃん。
この店の一番の古株かな。
真面目な娘で、一番早く店に来るのだろう。
開店と同時に店に来ると、ほとんど彼女が着く。
彼女は、もう3年くらい、この店にいると前に言っていた。
年齢は自称27歳。
たぶん、嘘ではないと思う。
俺が29歳だから、ふたつ下ということだ。
同世代だな。
「今日はどうしたの?」
「えっ」
「いつもは月末よね」
アルバイトの給料が出るのが25日。
だから、店に来るのは月末が多い。
今日みたいに月中に来るのは珍しいのだ。
「ああ。ちょっといいことがあってな」
本当は、ちょっとではないけどな。
「へぇー、じゃあ祝杯ってことね」
「そうだな」
「じゃ、お酒つくんなきゃね。水割りでいい?」
この店では、俺はウイスキーの水割りしか飲まない。
銘柄が不明のウイスキーを水道水で割ったもの。
それが俺がいつも飲んでいる酒。
ハウスボトルの水割りと呼ばれている。
飲み放題だから、セット料金に入っている。
追加料金を必要としない酒だ。
「それじゃ、乾杯」
「乾杯」
彼女は水を飲んでいる。
お店の女の子は、ハウスボトルの酒は飲めない。
そういうルールだ。
「ね。いいことって何?」
「ああ。それは言えないな。とにかくいいことだ」
チート財布を手に入れた。
そんな話をできるはずもなく。
といって、うまく別の話もできるではなく。
「いいこと」で誤魔化すことにした。
「いいことね。気になるけど、聞かないわ」
「うん。それがいい」
「でも、いいことがあったのよね。私もお酒で乾杯したいな」
「いいぞ」
「えっ!」
ミキちゃん、驚いている。
なんども、ミキちゃんが着いたことがあるが、
俺がお酒を飲んでもいいと許可したのは初めてだ。
ミキちゃんに限らずに、この店で初めてのドリンクオッケーだ。
女の子のドリンクは一杯1000円もするのだ。
ひとこと「いいよ」と言うだけで、お会計に1000円プラスされる仕組みだ。
フリーで来て、指名もせず、ドリンクもおごらず、延長もせず。
60分ジャストで帰るのが、俺スタイル、
たけど、それはもうおしまいだ。
いつも、オッケーを出さない俺が「いいよ」と言ったのだ。
ミキちゃんが驚くのも無理はない。。
「じゃ、これお願いします」
何やら小さなメモを黒服さんに渡している。
黒服さん、俺を見てにっこり笑ってくれた。
うん。
お金があるっていいことだな。
赤いドリンクを黒服さんがもってきた。
アセロラハイ……それともただのアセロラジュース?
「それじゃ、あらためて、おめでとうございますぅ~。乾杯っ」
「乾杯」
ミキちゃんは、ドリンクをおごっても感じが変わらない。
うん、この娘はそうなんだよな。
何度かフリーで着いたことがあるけど、いつでも感じがいいんだよな。
指名もドリンクも無しなのに、ちゃんと接してくれていた。
ミキちゃんと、楽しく15分くらい話していたら、黒服さんが若い娘を連れてきた。
「こちら、スーちゃんです」
あ、交代の時間ってことだな。
ここは15分くらいで女の子がチェンジになる。
指名をすると、ずっとついていてくれる。
「あ、ミキちゃん、指名でお願いします」
「うわっ、嬉しいっ」
この店では、初めての指名。
なんでも初めて尽くしだな。
「えっと、スーちゃんは今週入った新人さんなのよ」
「そうか」
普通は指名を入れると、交代は起きないから新しく来た娘は待機ソファーに帰っていく。
だけど、スーちゃんは俺の前に座った。
まだ時間が早く、お客は俺しかいないから、だな。
「よろしくお願いします」
「スーちゃんもかわいがってあげてね」
スーちゃんは新人でキャバクラに慣れていない。
キャバクラ自体、この店が初めてだろう。
年齢は10代かな。
でもお酒を飲むとこだから20歳になっていないとまずいか。
「あ。なんか飲む?」
「いいんですか?」
あ、喜んだ。かわいいな。
「スーちゃんは、学生なのよ」
「へぇ、どこ?」
「えー、それは内緒」
そりゃ、そうだ。学校に知られたくないからな。
こういうバイトは。
「奨学金で学校に通っているんだって」
「じゃ、がんばってバイトしないとな」
「はい、がんばります」
そんなノリで話していると、また別の女の子を黒服さんが連れてくる。
「もしかして、ランちゃん?」
そんな話をしたら、受けなかった。
俺もそうだけど、平成生まれには通じない冗談だな。
アイドルには詳しい俺はよく知っているネタだが。
「マシロちゃんです」
別にスーちゃんは指名していないけど、交代って感じじゃない。
だけど、ここは太っ腹なとこ見せてしまおう。
「じゃ、スーちゃんとマシロちゃんも指名で」
「「「おおーっ」」」
女の子3人も驚いている。
3人も指名するのはさすがに珍しい。
黒服さんを見ると、90度のお辞儀をしたぞ。
「ありがとうございます」
この黒服さん。
何をさせてもカッコいいな。
「あと、マシロちゃんにも何か好きなものを」
うーん、お金が心配ないというのは、すごいことだな。
みんなのドリンクが揃ったところで。
「「「「乾杯!!」」」」
楽しい時間をすごしていると。
黒服さんがもうひとり連れてくる。
髪の毛をしっかりと盛っている美人さんだ。
「アリサです」
自分で自己紹介すると、当たり前のように俺の左側に座る。
「私も、なにか飲んでいいですか?」
「駄目だ」
「えっ?」
アリサに奢る金はない。
そもそも、そこに座っていいと言った覚えもない。
なんで、アリサだけ扱いが違うのかと言うと……
やっぱり、キャバクラ豪遊、男のロマンだぜっ!
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