第16話 俺はキャバクラが癖になることを知った
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今日も引き続き3話の投稿予定です。
「へぇ。明日、引っ越しなんだ」
「ああ。急だけどな」
また、いつものキャバクラにやってきた。
今日もオープンと同時の18時にだ。
別に安い時間に来る必要などなくなったが、習慣だな。
空いているのもあり、そもそも俺はニートだ。
時間には十分余裕がある。
今日は給料日後で他の客さんも来るのが早い。
俺の席には、ミキちゃんとみゆちゃんが着いてくれている。
俺の右隣にはみゆちゃん。
正面の席には、ミキちゃん。
ふたりがこの位置に座るのがお約束になっているな。
今日はいつもより女の子も出勤が早い。
アリサも珍しく開店と同時に来ている。
でも、まだ待機スペースに座っている。
「アリサね。あのお客さんとケンカしちゃったみたい」
「もしかして、それって俺のせいか」
「そうとも言えるかも」
ミキちゃんが教えてくれる。
あれは、さすがにやりすぎだったようだ。
そういえばあの後、アリサが元気ないな。
「すこし、やりすぎだったか」
「いいのよ。あれくらい。アリサは、あのくらいおとなしいほうがいいわ」
ミキちゃんが言うんだから、そういうことなのだろう。
「あ、そうそう悠斗さん。引っ越しって、ここ近くなの?」
「いや、もっと、ずっと都心だ」
びっくりした顔のみゆちゃんが話に入ってくる。
「ええっ! じゃあ、悠斗さん。もう来てくれないの~」
「そんなことないぞ。都心と言ってもそんなに遠い訳ではないからな」
板橋と麻布は、タクシーで何分くらいなのか。
今日は、この時間だと車では混むからと、電車できたから分からないな。
「うれしい。悠斗さんが来るのを、みゆは待っているね」
「おう、待っていてくれ。もっとも待つまでもなくしょっちゅう来ると思うがな」
みゆちゃんだって、キャバ嬢だから、話半分に聞いておかないとな。
本気にすると、火傷するからな。
みゆちゃんは、小柄でアイドル顔でアニメ声。
俺の好み、どストライクな女の子なんだけどな。
「じゃあ、もしさ。引っ越しが終わったら俺のマンションに遊びに来てくれるかい?」
「だけど……奥さん、いるんでしょ。みゆが行ったらまずくないかしら」
あー、広いリビングにはキャバクラに行ってほしくなくて泣いている妻が…いやいや、違うぞ。
「そんなことはないな。だいたい、俺は独身だ」
「本当?」
あ、みゆちゃん、ミキちゃんに確認している。
ミキちゃんには、そういう俺の身の上話は、全然していないか。
「どうかしら。あのドンペリの日以前は、私は独身だと思っていたわ」
「ミキちゃんも知らないの? 怪しいわ」
財布を拾う前の俺だと、甲斐性無しオーラが出ていたからな。
結婚しているようには見えないか。
その姿を全く知らないからな、みゆちゃんは。
「今はね、全然わからない。悠斗さんは謎の男なの」
うわっ、なんだよ、それ。
まぁ今は、キャバクラ嬢がクラクラくるコーデネイトby美咲さんファッション。
いきなり変わったから、謎かもしれないな。
「それで、新しい住まいは広いの?」
「俺ひとりだから1LDKだ」
嘘は言ってないな。
「残念ながら、みゆちゃん部屋は用意していないんだ」
「ええー」
よし、冗談になったな。
「もし、みゆちゃんが一緒に住んでくれるなら、もっと広いとこに引っ越すよ」
さっき不動産屋で見た物件のいくつかの間取り。
みゆちゃんと一緒なら、3LDKくらいのを選んでもいいな。
「そうね。まだ悠斗さんのこと良く知らないから、一緒に住むのは早いかも」
みゆちゃんが俺を見つめて迷いながら言う。
やばい、本気にしてしまいそうだ。
みゆちゃんって、この店が初めてって言ってたから、キャバ嬢経験ほとんどないはず。
キャバ嬢の素質が、すごくあるのかもしれないな。
キャバクラ遊びは癖になるってお話です。