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第13話 俺は初めて限界を感じた

ブクマ2,715件になりました。急増中。ブクマしてくれた方、ありがとう~。

ひとしきり、俺と雑談をした後。

ビシッとスーツを着たデキル不動産屋は言った。



「それでは条件を教えてください」

「まず、住むのは俺ひとりだ」


横の美波さんを見ながら言う。

この人は住まないんだよって、感じを伝えたつもりだ。



「おひとりで住むなら、それほど広くなくていいですね」

「いや、広さは特に指定はしない」

「そうなんですね。分かりました」


それからいろいろと聞かれたが、

実はまだ深く考えていなかった俺は、まともに答えられなかった。


「それはどっちでもいい」


そんな答えが一番多かった。


横の美波さんを見ると、楽しそうに俺とデキル不動産屋のやりとりを見ている。

楽しいふりには見えないな…本当にこういうのが好きなのか。


「では、どういうところが希望なのでしょうか?」

「贅沢なのがいいな。都心で」


どんなに贅沢でも板橋あたりはパスだな。

もっと都心だ。


「予算はいくらくらいをお考えでしょうか」

「一応12億円は用意してある」

「「12億円!?」」


美波さんもデキル不動産屋はハモった。


どうも、いままでの彼の対応を見ていると、冷やかし客だと思われた節を感じる。

まぁ、あんまりも希望があいまいだから、そう思われてもしかたないな。


「えっと。都心のマンションで12億円ですか?」

「ああ。あとひとつ条件があって」

「なんでしょう」

「すぐに引き渡しができる物件がいい」

「すぐ、ですか?」

「明日は無理かな」

「ちょっと、それは…」


どうしても、権利書を書き換えるのにはある程度かかるらしい。

もっとも、権利書はあとでもいいと条件を出した。


「しかし、銀行とのやりとりも、そのくらい高額になると」

「いや、現金でお願いしたいんだが」

「・・・」


いかん。

だんだんデキル不動産屋が険しい顔になってきたぞ。


ふざけ半分で来ていると思われたか。

そうじゃないことを示さないとな。


「とりあえず、手付金だけ持ってきている」

「まさか、それに入っているって訳じゃないですよね」

「あたりだ」


俺はどでかいスーツケースをドスンとテーブルに置いた。

そしてスーツケースの番号を合わせて、開いてみせた。


スーツケースの中はゴムバンドでまとめられた1万円札でぎっしり。

先に反応をしたのは、美波さんだ。



「うわーー。すごーーーい、いったい、いくらあるの?」

「2億4千万円だ。これしか入らなかったからな」



いきなり、デキル不動産屋の顔が変わった。

冷やかしでも、冗談でもないことが伝わったみたいだ。


億単位の現金パワーはすごいな。



「とりあえず、これは手付金だ。預かってくれ」

「ま、待ってくださいよ。物件もまだ決めていないんですから」

「だけどさ重いんだよ、これ。スーツケースも入れると30キロ近くある。俺が持ち帰るのは厭だぞ」


これは本音だ。

時給12億円の俺からすると時給の5分の1にすぎないのだからな。


「わ、わかりました。すぐに候補を用意します」


できる不動産屋は一度席を外してしまった。


「ねぇ」

「なんだい?」


美波さんの目が妙に色っぽく感じるのは気のせいか。


「お仕事、何をしているのか、聞いてもいい?」

「別にいいぞ」

「じゃあ、お仕事なに?」

「今はフリーターだ」

「嘘っ!」


信じてもらえないな、これは。

しかし、嘘は着く気がないしな。


「じゃあ、どうしてそんなお金持っているのよ」

「ここだけの話にしてくれよ」

「もちろん、絶対誰にも言えないわ。言っても信じてもらえないわね」


よし、それなら言っても大丈夫か。


「俺は異世界の人間でな。お金を出す魔法を使えるのさ」

「嘘でしょ!」


あ、嘘をついてしまった。ついつい。


まぁ、異世界の話は嘘だけど、財布は魔法の財布だから半分は本当だ。


「まぁ、いろいろとあってな」

「そうでしょうけど」

「詳しく説明しないとまずいか?」

「そんなことはないけど…私が知りたいだけ」


そう言いながらも俺の方に手をおいている。

美女に触れられるのは、気持ちいいな。


そんなことを考えていたら、デキル不動産屋が戻ってきた。

手には印刷された紙をたくさん持っている。


「えっと、12億ですと一軒家になりますね」

「そうなのか? マンションはないのか?」

「マンションは1室ですよね。マンション1棟買いではなく」

「1棟なんていらんぞ。俺だけが住むだけなんだから」

「そうですよね。それだと今すぐに買えるマンションの一室で一番高いもので6億8千万円です」


10億円を超える物件をいろいろと見せてもらったが、一軒家という選択はないぞ。

候補の物件のすべてが広すぎる。

なんで1人で住むのに寝室が6つもある物件になるのか意味不明だ。


「すごーい。この広尾の家、いいわね。庭も広くて大きい犬も飼えるわ」

「別に犬を飼う予定はないが」


美波さんは夢見る少女と名付けたくなるような表情をしている。


「私の夢なのよ。大きい犬を飼って砂浜を一緒に走るの」

「たぶん広尾には砂浜ないと思うが?」


どうも、美波さん壊れてしまったらしい。

美咲さんによると、優秀なコンパニオンだと言うのだが、億単位の現金を見て壊れたらしい。


「それでは、マンションに絞りましょう。億ションです。快適ですよ」

「そうだ。そういうのがいいな」


またデキル不動産屋は一度ひっこみ、たくさんの印刷したものをもっていた。


テーブルに並んだ物件の資料は都心にある大きなマンションばかりだ。


「しかし、寝室が多いな。だいたいなんで寝室ごとに風呂がついているんだ?」

「このあたりは外人の方か海外生活経験者用でして」

「なんか、使いづらいな」


今は風呂がついてないから銭湯に通っている。

もしくは、お湯をポットで沸かしてタオルでふくくらいだ。


いくつも寝室があって、それぞれバス・トイレ付き。

そんなにいらないって。



困ったいいのがないぞ。


「あら、これはどうかしら。1LDKだって」

「おっ、それはいいな」


その物件は、麻布にあるタワーマンションの最上階だ。


「あ、これはぴったりです。5億8千万円です」

「予算内だな。手付金はこれで足りるか?」

「それはもう」


なんで1LDKの物件がそんなに高いのか。

よく見てみると、そのLDKが凶悪だ。


全体で165平米だが、LDKだけで100平米もある。


「これはLDKというかパーティルームというか」

「そういうことだな。パーティをするのにちょうどいいみたいだな」


麻布の47階建てのマンションの最上階でLDKは南側の一面窓になっていて曲線を描いている。


写真をみるとその展望室みたいなところに、20人は座れるソファーがありリビングと書いてある。


「まぁ、普通の一軒家の建て面積と同じくらいの広さがあるLDKですからね。使い方は応用が利くかと」

「決めた! これにしよう」

「本当ですか?」

「素敵。これ、今、見れるのかしら」


見学は管理人に電話で確認してもらうとオッケーらしい。

見学の前に契約の話がでた。


しかし、その契約に問題があった。


「この収入証明ってなんだ?」


売買契約を結ぶために、必要な書類の中に収入証明というものがあった。

買い付けるお金がどういう収入で生まれてきたものか。

書類で出さないといけないらしい。


本来はローンを組むときに必要な書類ということだが、高額物件においてはすべての取引に添付するようにと決められているらしい。


「これがないとどうなるんだ」

「物件は売れません」

「なんか方法があるんじゃないか」

「高額な不動産を買うためには収入証明がないと……」


どうも、麻薬取引とか危ないお金でないことを証明する必要があるらしい。

うわ、参ったな。詰んだな。

財布から出てきたという話を書いても通りはしないよな。


どうすればいいのか。



お金があれば家は買える。

そう信じていたが。違っているらしい。


ありゃ、お金があってもダメらしい。チート財布はお金の出所が分からないという欠点があったのか~


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