第12話 俺は即金で家を買うことにした
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「美波さん、ですか?」
「はい。美咲ちゃんのご紹介の方、ですね」
俺は美波さんとの待ち合わせの場所にタクシーで行った。
最近は大抵タクシーを使っている。
美波さんは美咲さんよりちょっと背が低いかな。
しかし、プロポーションがいいし、美人だ。
美咲さんは、できるキャリアウーマン的な美しさがあったけど、
美波さんは、かわいい感じがする美人でもある。
ちょっとガッキーに似ているな。
その美波さんをタクシーで拾って目的地まで行ってもらう。
タクシーはどこにでもいるから便利だ。
そもそも、俺には運転免許がない。
いくら金があったとしも、自分で運転することはできない。
だから、タクシーが今の俺の足となっている。
「今日は、住居を探すお手伝いだと聞いています」
「ああ、その通りだ。昨日、美咲さんに服をみつくろってもらったんだ」
「すっごく似合っていますわ」
綺麗かわいい感じの美波さんに言われてるとマジで照れるな。
しかし、それを出さないように冷静な男で対応する。
正直、美女を連れて歩くのは慣れていない。
昨日初めて美咲さんと歩いただけだ。
しかし、そんなことは絶対に見せたくない。
美波さんの仕事はコンパニオン。
コンパニオンというと、イベントコンパニオンや、芸者みたいなコンパニオンをイメージするが美波さんはちょっと違う。
いろいろな場所に男性と同行するのが一番の仕事だ。
夫婦や恋人同士で参加するパーティに、相手がいない男と一緒。
そのケースが多いらしい。
いい女を連れている男は一目置かれる。
それ目的での依頼が一番多いらしい。
かくいう俺も同じ目的で美波さんをオファーした。
「それで、どこに行くのかしら。不動産屋さん?」
「そうだ。家を買いに行く」
「えっ、買うの? 下見ではなくて?」
そう。
俺は今日、家を買うつもりだ。
そのために美咲さんチョイスのスーツ姿で来た。
仕立てではないが、すぐに買えるものの中では高級なスーツだ。
バッグはLLサイズのアタッシュケース。
中国人旅行者がもっているようなでかいやつ。
タクシーのトランクに入れてある。
金はあるが、何事にも経験不足だ。
特に贅沢な場所での経験が絶対的に不足している。
それは、俺の横にいる美波さんにもバレたくない。
「どこの不動産屋かしら」
「六本木だ。高級マンション専門のとこだ」
今の日本で、一番金持ちが集まるのが六本木だという。
もっとも、本当の金持ちはどうだかわからないが。
ネット調べられるレベルの金持ち向け不動産の専門店が六本木にある。
「予約はしているの?」
「いや。不動産屋は予約はいらないだろう」
「えっと。なんて名前のとこ?」
すぐにスマホで調べて電話をしてくれた。
そうか、一本電話を入れておくものなのか。
そういうマナーも美波さんがいれば安心だ。
しばらくタクシーを走らせると不動産屋さんに着く。
その不動産屋は俺の知っている不動産屋とは違っていた。
一流ホテルのロビーような受付で名前を言うと個室に通す。
個室には、ぴしっとスーツを着こなした男がいた。
この男は俺の望みの不動産を用意できるのか。
そもそも、いくらアタッシュケースに詰まった一万円札の束があるとしても、
すぐに高級マンションが買えるものなのか。
いろいろと分からないことは多い。
しかし、俺は考えるのをやめた。
まずは行動。
うまくいかなかったら、反省してやり直せばいい。
金はいくらでも用意できる。
心配することはない。
心配することはない……はずだ。
さて、アタッシュケースにいくら入っているんでしょう。
気になります?