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プロローグ 「エリート」が「ニート」をバカにしたら

初めてのローファンタジーものです。

「あ、悠斗はるとじゃんか」


名前を呼ばれて振り返ると、真治がいた。


真治は高校の時の同級で、3カ月前の同級会で久しぶりに再会した。

お互い29歳で「高校の頃とは全然違ってしまったな」と笑いあった。


「なんだ。スーツなんか着て。ちゃんとしたとこに就職でもしたのか?」


こいつは、俺と違って上場企業で働いている。

会社の同期の中で出世頭だと自慢していたから『エリート』なのだろう。


「いや。仕事はしていないな」


そう。俺は仕事をしていない。


世間的には『ニート』って言われる奴だ。


「あ、分かった! 就職活動だろう。やっと真面目に働く気になったのか。それはいいことだな」


こいつは頭が悪い奴ではないが、物事を決めつける悪い癖がある。


ニートがスーツを着ていても、就職活動とは決まっていないだろうに。


「いや。全く働く気にはなれないな」


同級会の時の俺は、フリーターをしていて、アルバイトで働いてはいた。

今は、それすら辞めてしまった。


「おいおい、そんなんじゃ、モテないだろう。まだ恋人はいないのか?」


真治はクラスのアイドルだった女性と大学の時にできちゃった結婚をしている。

そんな噂を同級会に参加した時に聞いていた。


「あー。恋人はいない」


そういえば恋人はいないな……恋人は。

昔も、今も。

恋人いない歴29年を 更新中だ。


「寂しいだろう。恋人がいないとな。がんばって探したらどうだ?」

「あー。今は忙しいから。今日も野暮用があるし」


あと少しで待ち合わせの時間だ。

時間にやたらと正確なひとだから、そろそろだろう。


「うわ、見てみろよ。すっごい車だぞ。ランボルギーニじゃないのか。それも真っ赤」


その車は「ランボルギーニ・アヴェンタドール」。値段は五千万円とちょっと、だったな。


やはり時間通りに来たようだ。


「それに、運転しているのが女だぞ。おや。止まったぞ。おおーっ、すげー良い女が降りてきたぞ」


彼女の名前は美波。身長170センチ。スリーサイズはB87(E)W58H86。ガッキー似の27歳女性だ。


「えっ、なんで、こっちに来るのだ?」


真治は混乱しているな。

やつの恋人は、クラスで1番だったかもしれないが、美波ならば、学校で1番クラスだろう。


「悠斗さん。お迎えに来たわ」

「おう。いくか」


美女が親しげに俺に声をかけてきたことに、真治は呆然としている。


「な、なんでお前にこんな美女が?」


そんな様子の真治を置き去りにして、俺は美波の運転するランボルギーニの助手席に収まった。


「今日はどちらへいきましょうか?」

「ペニンシュラホテルのヘリポート。そこからヘリで飛んで羽田。チャーター便のビジネスジェットに乗り換えて宮古島だ」

「宮古島まで飛んでいる3時間は、悠斗さんは私だけのものね」


別に彼女は俺の恋人という訳ではない。

美波は、俺の愛人だ。


3時間の密室では、相当な状況が生まれてくるだろう。

ふたりで会うのは、1週間ぶりだからな。


しかし、まぁ。

真治と会って3カ月前の感覚に戻ってしまったな。


今、置かれている俺の状況は、3カ月前と全く違う。


何事にも本気にならない草食系だった俺。


そんな俺の転換点は、2カ月半前。

財布を拾ったことだ。


そこから物事がガンガンと高速で起きるようになったのだ。


その財布の話から、語るとしようか。



 ☆   ☆   ☆



「やっぱり、『なろう映画』は最高だな」


俺は久しぶりに出た渋谷の街に来ていた。

ずっと待っていて、やっと公開になったアニメ『異世界転生IV』。


シリーズ第4作となる「なろう小説」が原作の劇場版アニメだ。


俺がずっと渋谷の映画館で見ているシリーズだ。



正直言えば、映画に1800円使うのは俺にとって贅沢だ。


しかし、こいつだけは映画館で観ないと気がすまない。


異世界転生シリーズの始まりはほとんど一緒だ。


その映画の主人公が、どでかいトラックに轢かれて死亡するシーン。


今回はちょっと違ってデコ満載のトラック野郎だった。


テンプレ満載、ストレスフリー。


何事もご都合主義とチートで対応。

とにかくスカッとするシーンの連続。


この異世界転生シリーズが人気が出るのも当たり前だな。


俺が1800円支払って映画館で観るのは、『なろう映画』だけだ。

他のアニメはDVDレンタルで済ましている。



「俺にも、異世界転生が起きてくれないか」


そんなことを妄想することもある。


しかし、実際には異世界転生なんてアニメみたいなことは起きるはずもない。


俺は少ない収入で気楽に生きている今の状況は、それほど嫌いでもないしな。



そんなことを思いながら、渋谷の街を歩いていた。

あまりに人通りが多いから、裏通りを歩くことにした。


ガクっと人が減って、歩きやすくなったぞ。

しばらく裏通りを歩いていると俺は声をあげてしまった。


「おおっー」


もしかしたら、俺のLUCK値が激増したのか?


あそこにあるのは、どう見ても財布だ。

財布が道に落ちている。


特徴があまりなくて古くて黒い長財布。


「周りに人は……誰もいないな。よし!」


俺はその財布を拾って、自分の物にしてしまおうと決めた。


それが異世界に転生せずに、令和になったばかりの東京で、全く違う別世界に足を踏み入れた瞬間だった。


もしかしたら面白いかもって感じたら、↓の☆☆☆☆☆のどれかをクリックしてみてね。

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