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私は広い世界を見てみたい!  作者: 猫缶@睦月
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3.不幸なお知らせ?


 お昼には普通にご飯がでた。お茶碗一杯のご飯に、お味噌汁。少々の野菜物を中心としたおかずといった感じ。食事は朝昼晩の三食で、朝が量は大目。年齢・体格・仕事内容などによって予め基本の量は決められているんだって。そのおかげか、西の領ではメタボな人は少ないらしい。

 そして、午後になって四嬢さんが教えてくれた残念なお知らせ。神指の街の学校・六人組は、「なりそこない」は面倒を見切れないとのこと。もちろん直接的に書いてあるわけでは無いけれどね。西の領では、基本的に「働かざるもの食うべからず」が徹底されている。小学生(と呼ばれているが、生前の世界とは別物)ですら、安全を確保されているとはいえ、小物の魔物が湧く林での魔物を討伐し、魔石を採取する事が義務らしい。たくましいな、小学生。

 もちろん、怪我や病気などで働けないことは大人も子供もあるけれど、それをカバーするのが六人組や里・隣組などの存在らしい。嘘はばれると悪質な場合は、六人組や里・隣組からの排斥・転地などの罰則もあるし、嘘をついてると解るスキルを持つ人は割と多いらしい。だからこそ、厄介者になりそうな要因は引き受けたがらないよね。

 年齢のせいだけじゃないだろうけど、自分ではどうしようもない事が続くのは、前世と同じだね。そう思い考え込んでいると、よほど不安そうな顔をしていたのだろうか?四嬢さんにせっかく整えた髪の毛をわしゃわしゃにされた。

 むぅとばかりに見上げると、


「そないに心配せーへんでもいけるやで。あんたから奪うた品物返しとうなければなんとかするやろうしね」


と言って笑っていた。私の荷物だけでも、大きな行李だったのだから、両親の荷物はもっと多かったのだろう、数年分の学費が充当されるくらいなのだから。


 夕方になると、四条さんは格子の外へ出ていき、格子の間の闇も元通りとなり何も見えない。目を離すわけはないだろうから、だれか外に入るんだろうけど、きっと誰も話しかけてはこないのだろう。枕元に羽織袴を脱いできちんと畳むと、さっさと布団に入ることにした。


*****


「では、特に危険な兆候はないと?」


 神指街の嬢士隊詰め所である。詰め所といっても、街の警備を勤める嬢士達の宿舎や訓練場なども備える為、それなりに広くみすぼらしくも無い。特に豪華というわけではない隊長室で、遙は副長に一日のやり取りを報告を行うと、そう訪ねられた。


「そうやで~。記憶喪失ちゅうには疑問があるけど、今のとこ力が強うなってるやら、そないなのはあらへんようです。そういえば、隊長はおらへんねんか?」


 そう、遙はただ世話をするだけで麩菓子を渡したり、手ぬぐいを絞らせていたわけではない。目覚めたばかりで力の加減などわからない状態では、麩菓子など簡単に崩れて食べることはできないし、濡らした手ぬぐいを引きちぎるくらいはしたであろう。旅の事を聞いたのも、子供とはいえ間者スパイにようなものの疑いがないわけでもないのだから。

 さくらの答えや様子からは、年齢相応の体力とやや表情に乏しい点はあるが、年齢以上の知識と落ち着きを感じさせていた。


「ああ。あの子の両親の荷物の目録を持って出て行った。どうせどこかで悪巧みをするのだろう。それで、疑問というのはどんな点なんだ?」


「いや、下着やらの着替えがぜんぜんできてへんかったのと、変にこだわりあるみたいやさかい。羽織袴は一人で着れるのに、違和感はあるんよね~」


 と、さくらの下着の着付けを思い出して苦笑する。女性でも下着を着けるのは当たり前ではあるが、さくらのいうズロースは肌触りを良くするために使用されている布が高級なのと、ゴム素材が割高となる為一般的ではなく、当然子供用のサイズはない。さくら用の行李にも入ってはいなかったのだから、普段から使用しているわけではないだろうに、妙に拘っていた点も疑問の一つではある。


「そうか。では、明日一日様子を見ることにしよう。午後は神指通りまでの町を案内して様子をみてくれ」


 報告書を見ながらも、無表情に副長は遙に言う。言葉のイントネーションも少ない為、冷たく聞こえるがどこか楽しんでいるようにも、遙には感じられた。


「ええんですの?明日一日は拘留する予定では?」


「本来の拘留期間の10日は経っているからな。黒川に連れて行くにしても、もうすこし情報がほしい。」


 そう言いながら、子供用のフード付きの薄手の防寒着と小銭の入った巾着袋を遙に渡してくる。


「ちゅう事は、明日は半休やで。やった~」


「貸しだぞ?あと、帯刀は四嬢もあの子もさせないように。事故が起きては困るからな。」


「え~、いけずやな~。なんか起きたときは、勤務扱いにしてや~。それを直接渡したったら、あの子も怖がらへん思いまっせ?」


「それと……。」


 顔を寄せて、四嬢になにか伝える副長


「…ええ人言うたのは訂正します…」


 遙はしぶしぶ最後の命令を拝命した。

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