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作者: RANNTE

気が付くと私は宙に浮いていた


そして目の前には横断歩道の真ん中で


血まみれになって倒れている私がいた。


倒れている私の周りにはフロントガラスが割れた自動車と


その自動車の持ち主と思われる中年代の男の人、


そして最後は泣いている男の子がいた。



しばらくすると誰かが呼んだのか救急車と警察車が駆けつけてきた

警官と思われる人が中年の男に事情を聞いたりしている

私はというと、すぐさま救急隊員に救急車に運ばれ病院へと連れて行かれた

ここまでなればわかるだろう。


そう・・・、私は死んだのだ・・・・。



その後は病院で私の体は手術室に運ばれ

テレビでしか見たことのない光景が行われた。

私の為に必死に頑張っている姿はとても嬉しい、

だけど結果はもうわかっている・・・。


私の魂はここにあるからだ。



手術は終わり別室に私は運ばれた

しばらくして私の両親が到着。

もう2度と動くことのない私の体の前で

母親は私の体にしがみつき泣いた、

あんなに風に泣く母を見るのは初めてだ

あの強い父親でさえ泣いていた。

そんな二人を見ていられず私はその場を離れる事にした



私が死んだ日から数日が経ち

私の体は火葬さえる事となった

いわゆる葬式というやつだ


その場にいたみんなは悲しんでくれた

でも私は消えてゆく自分の体を見ても

悲しいという感情は何故なぜかわかなかった

自分の体から魂が抜け落ちた時点で


あれはもう・・・。


他人という別の物なのだろうと私は思えた



それから数日が経ったというのに

私という存在は消える様子がなかった。

どこにも行くあてもないのに、

ただ彷徨さまようだけなのに

どうして私は消えないのだろう・・・?

もしかしたら・・・。

まだ私は、この世に未練というものを残したのだろうか・・・?

その時はどんなに考えても答えが出ることはなかった


気が付くと記憶にある場所に出ていた

そう、私が死んだ場所の近くなのだ。

私の肉体が火葬された今、

生きていた頃の最後の印

事故現場である横断歩道の真ん中の辺りの私の血のあとが残っていた

もし私が生きてそこを通ったなら

ここで事故があったのか、そんな程度の物だ

別に残ってても別にあんまり意味がないのだけども

死んで幽霊になった私からすれば貴重なものである。

そんなことを考えながら別に疲れてもいないのに

事故現場からさほど離れていないバス停にあるベンチに座る


その行為に意味があるのか?


と、聞かれたら『なんとなく』っときっと私は答える

生前の癖・・・とでも言うべきか

とりあえずそれは死んだ者にしかわからぬ事だろうから

別に気にしなくてもいい


あたりはすっかり明るくなり仕事先へ行く人、学校へ行く人

色々な人が行き来する時間帯になった

私のいるバス停の周りやベンチも人でいっぱいだ

当然私のいる席にも人が座ってくるが

触ったり触れ合ったりできない幽霊であるから

別に問題はない。


問題はないのだがおかしなことが起こった

ちょうどベンチが少し空いて

そこに小学生くらいの子供2人がくる

その内の1人が座るともう一人の子供の方も

座るかに見えた、

だけど途中で座るのをやめてベンチの前で立ったままの状態になった

座った子供の方が『座らないの?』とか聞いたりしてるのだけど

もう一人の子供は座ろうとしない

結局その子供達が乗るバスが来るまで座ろうとはしなかった



それから別にやることもないのでしばらく同じ場所にいると

次の日も、そのまた次の日も座れたとしても座ろうとはしなかった

どうしてだろうと考えてる時、その子供と目が合う

気のせいだろうと目をそらし、またそちらを見ると

まだ視線をこちらに向けている

試しにその子供の目の前で手を叩いてみた

すると、子供は目をつぶった

どうやら私の姿が見えているらしく

こうしてその次の日からはその子に席を譲ることにした



それから数日、


席を譲ったり譲られたりと

生きてる頃と同じような感覚を得られるようになり

どことなく嬉しかった、のかもしれない

もちろんその子以外は私の姿は見えないのは変わらない

子供が私に譲ってくれた席を他の人が座ったりすることもある

そんな時は私も立ってその子の隣でバスが来るまでのほんのわずかな時間を過ごす


本当に生きてる頃と変わらないようだった



そんなことが続いたある日


子供は突然こなくなった

なにかあったのだろうか,と心配して待っていると

その4日後、その子供はいつものようにやってきた

聞くと風邪をひいていただけだったらしいので

またいつものように過ごせるのが嬉しかった


しかし、そんな毎日もすぐに終わってしまった

また子供が体調を崩してしまい

直ってはまた体調が悪くなるという日々が続いた

以前はそんなことはなかったはずなのに・・・


と考えていると、私はあることを忘れていた。


私は死んだ人間であって

あの子は生きている人間なのだ

私があの子に接してる限りあの子の体は悪くなる一方

だから私は決意した

もうあの子には会わないと・・・。


バス停にあの子がやってきた

キョロキョロと辺りを見ている

きっと私を探しているのだろう


残念そうな顔をしていた。

その次の日も、そのまた次の日も

毎日あの子は私を探した

だけど私は出ていかなかった

出て行きたい気持ちにかられたが

あの子のためを思えばなんとか耐えれた


元はといえばあそこに座り

あの子と接した自分の責任

会わないのは当然のことだったのだ

それからまた数日経つと子供は

私のことを探さなくなった


これでいいのだ・・・。



あの日以来

私もあのバス停から離れ、あてもなくフラついていた

あの子供と会わなくなってから

春、夏、秋、冬、

と季節が変わるのが早く感じた

もう結構、月日が流れたのにも関わらず

いっこうに成仏できない

やっぱりこの世に未練でもあるのだろうか


まさか・・・あの子供が私の未練?


でもすぐにその考えを捨てた

なぜならあの子と会う前、事故の日に消えているはずだ

そんなことを死んであの子とあう少し前のことを考えていると

見慣れたところに来てしまった。


・・・あの子と会っていたバス停だ


無意識に来てしまった自分の行動に苦笑いしつつも

少しくらいはいいか、と心の中で思いベンチに座る

座っているとついあの時のことを思いだす


今思い出すと本当に幽霊らしくない

口元も緩みっ放しだ

そう何度か思い出していると

横断歩道の向こう側、

人ごみの中ふとある人物に目が行く


・・・あの子だ。


最後に会ったときと比べ背も随分ずいぶん高くなり顔も大人びている

あの時とちがってあの子も今ではもう高校生

なぜわかるかというと、

私が生きていた頃入っていた学校の指定の制服を着ているからだ

そんな彼を見ていると、どことなく嬉しい

っとこんな事を考えてる場合ではなかった

あの子がこちらに気付く前にここから去らなければならない。

その場から離れると横断歩道を渡りきったところ

なんとかギリギリセーフ。

そして信号が黄色から赤へと切り替わる

切り替わったのにも関わらず向こうから小学生くらいの子供がこっちに走って来て

横断歩道の中盤の位置に達した時だった。


横から自動車が凄い速さで小学生に向かっているのが見える

子供は何なのかわからない様子で自動車の方をみて立ち止まる

その子供がかれたと思ったその時


『あの子』が小学生を突き飛ばした


だが今度はその突き飛ばした高校生はかれそうになる

ブレーキ音が辺りに響きわたる中

自動車が横断歩道を横切る

けれど誰もかれる事はなかった


小学生をかばった高校生もなぜか突き飛ばされたような格好になっている

すぐさま運転手が飛び出て彼らに声をかけた

それに高校生は運転手に返事を返すと

誰もいない方向を向いて何かを言うと子供をつれて横断歩道を渡っていく

彼は泣いていた、まるで誰かに別れを告げるみたいに・・・。



絶対轢かれたと思った状況から彼を救ったのは私なのだ

あの時は無我夢中むがむちゅうで彼を突き飛ばし

本来なら触れられずに突き抜けるはずだったのだけど


何故か触れられた。


それに今日この日まで、どこかで彼を見た覚えがある

そんな気がしていた理由がやっとわかった

私はただ自動車にかれたんじゃない

あの時子供を助けて轢かれたのだと


そして私が助けた子供はあの時バス停であった子供なのだということが


うっすらと足の方が消えてきた

きっと私のこの世の未練がなくなったせいなのだと思った

次の瞬間にはもう腰の辺りまで消えている


もう本当の意味で彼とは2度と会えない


だけど黙って消えるしかなかった

今日会うまで無視し続けた自分に

喋る権利などない、ないはずだったのに。

彼はこっちを向いてこう言ったのだ


『また助けてくれてありがとう」


と、彼は私のことを覚えてくれていたのだ

私は生きていたなら泣いていただろう

だけど幽霊わたしは涙が流せない

だからその分精一杯、笑顔を作り

幽霊の私の相手をしてくれたこと

覚えていてくれたこと、

私の分まで生きて欲しいという

感謝と願いをこめて

最後に私は彼にこう言った


『ありがとう』・・・と、


ここまで読んでくれてありがとうございます

短編は今回が初めてでストーリも初めてでおかしいところがありまくりかも知れませんが今後ともよろしくお願いします。

追記;投稿してから数カ月が経ち、読み直して見るとものすごい違和感がありますね(苦笑)

これを書いたのは悩みに悩んでいた時に友人が

「長編で悩むなら短編で書いてみたら?」

っと言われたので思いつくままに書いたのがこれです

夜中の1時から夜明けあたりまでかかったような記憶があります

自分は小説を読むのが大好きです。

文章力がないですが自分なりに頑張って書いてみました

世界観が伝わればいいなぁと思います

それではまた会う日まで




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― 新着の感想 ―
[一言] 士はサムライと申します。拝読させていただきましたので感想と評価を生意気ながら書かせていただきます。 出だしがすごくいい、と感じました。「私」の視点にすんなり入ることができ、魂の状態であること…
感想一覧
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